競争的研究費は画期的研究成果を増やしたのか?

研究費は、予算申請書を書いてぶんどってくる競争的資金に置き換わってずいぶん長くなる。しかし実態は「書類ばかり書いて研究する暇がない」というパロディー状態になっている。
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shinshinohara @ShinShinohara

「競争的研究費改革に関する検討会データ集」を見た。結論から言えば「研究費を競争的にしたら研究成果が減った」。交付金と競争的資金の合計はH16の13373億円から14143億円に増えてる。しかし成果は上がるどころか減ってる。 google.co.jp/url?sa=t&rct=j…

2017-03-29 18:00:46
shinshinohara @ShinShinohara

高注目度論分数で日本は4位から12位へ。日本よりはるかに人口が少ない国にさえ遅れをとっている。交付金と競争的資金の合計は増えているのに、研究力が伸びていないということは、どういうことか? blog.goo.ne.jp/toyodang/e/bee…

2017-03-29 18:08:11
shinshinohara @ShinShinohara

実は、交付金と競争的資金の合計は増えている。交付金が大きく減り、競争的資金が大きく増えた。H16からH25にかけて交付金は1695億円の減少、競争的資金は2465億円の増加。つまり、競争的資金の伸びによって研究費が増えている格好になっている。ところが成果に結びついていない。

2017-03-29 18:12:35
shinshinohara @ShinShinohara

なぜこんなことになるのか?競争的資金の場合、予算申請書を大量に書き、提出する必要がある。時間がとられるし、何より作文能力が求められる。しかしはっきり言おう、作文能力と研究の面白さは必ずしも一致しない。だから、競争的資金を取るのがうまいからといって面白い研究をしているとは限らない。

2017-03-29 18:15:34
shinshinohara @ShinShinohara

競争的資金を獲得するには、作文能力の他に、大学のネームバリューや、スタッフの厚みも必要。予算申請書を書くのに忙殺されるから、手を動かす学生や博士が必要。その結果、旧帝大がどうしても有利になる。研究費を大量に獲得しやすい。

2017-03-29 18:18:32
shinshinohara @ShinShinohara

だが、オモロイ研究というのは、研究費の厚みで決まるものでもない。作文能力でもない。スタッフの厚みでもない。着眼点なのだ。オモロイ研究は、大概最初はプリミティブ(原始的)。金をかけまくるところからはあまり生まれない。発想を大きく転換した、目のつけどころが違うのだ。

2017-03-29 18:21:11
shinshinohara @ShinShinohara

研究のほめ言葉として受け取られがちな「最先端」。しかし見方を変えると「枝葉末節」なことがある。枝葉を繁らすにはなるほど肥料(研究資金)もたっぷり必要だ。しかしどれだけ大きな樹でも、100m先の空き地を覆うことはできない。空き地を将来覆うには、「種子」が一番だ。

2017-03-29 18:25:02
shinshinohara @ShinShinohara

種子は小さい。最初は肥料(研究費)も要らないし、苗の間も小さいから大して肥料は要らない。しかしその種子は、やがて広大な空き地を覆い隠す大樹に育つ。画期的な研究というのは、全く新しい分野を創設するものを指す。どれだけ枝葉(最先端)が繁ろうとも、樹から離れられない派生分野でしかない。

2017-03-29 18:29:08
shinshinohara @ShinShinohara

高注目度の論文が減っているのは、私の個人的見解では、競争的資金の割合が増えすぎたためだと考えている。というのも、競争的資金は成果を出すのに求められる時間は1ー3年内。そんな短期間で論文を出そうとしたら、データを確実に出せるテーマにしか手を出せない。バクチのような研究はできない。

2017-03-29 18:32:45
shinshinohara @ShinShinohara

樹木は多くの実をつけ、種子を大量にばらまく。適した空き地に種子が落ちる確率は高くない。だから種子を大量につくる必要がある。確率が悪いがそのかわり、適地に落ちた種子は、大樹となってその地を覆う。研究は、まさにこのアナロジーとそっくり。

2017-03-29 18:35:23
shinshinohara @ShinShinohara

最近は、すぐに実用化できるような研究成果を求められることが多い。政治家も、国民に説明するためには、分かりやすい成果が出ていることを示さなければならないのだろう。その苦しい事情も分からないではない。しかし、どうもそのやり方では研究者を萎縮させ、結果として画期的な成果を減らしている。

2017-03-29 18:38:44
shinshinohara @ShinShinohara

ノーベル賞を受賞した大隅さんは、酵母の顕微鏡観察から成果を上げている。この成果は、その後アルツハイマー等の治療にもつながる一大分野を築いた。種子が大樹に育った好例だ。そして面白いことに、最初の研究に大してお金はかかっていないのだ。

2017-03-29 18:41:36
shinshinohara @ShinShinohara

もし目先の成果ばかり求められて、競争的資金の獲得のための労力で疲弊していたら、大隅さんのような成果は出ていない。いくら画期的な研究には大してお金は要らないとはいえ、顕微鏡を買ったり電気代だったりの最低限は必要。大したお金は要らないが、ある程度思いきった研究ができるお金は必要。

2017-03-29 18:44:21
shinshinohara @ShinShinohara

種子だって、砂漠に落ちたら発芽しようもない。発芽しても全く肥料がないのでは苗は育たない。画期的な研究も、適度なお金が必要なのだ。 画期的な研究成果をあげるためには、私は交付金を増やした方がよいように思う。年100万の研究費があったら、思いきった研究が可能になる。

2017-03-29 18:47:04
shinshinohara @ShinShinohara

画期的な研究は「着眼点」だ。もう少し砕いて言うなら「思いつき」だ。コーヒーを飲んでいて思いついた、散歩して草花を見ているうちに思いついた、風呂に入っていて思い付いた。そんな思いつきがあったらすぐに必要な試薬を揃え、試してみる。ほとんどが失敗だが、数打ちゃ当たる。

2017-03-29 18:49:29
shinshinohara @ShinShinohara

私は比較的、画期的とされる研究をしてきたが、ものすごい数の失敗を重ねている。思いついたらすぐにやってみる、ということを繰り返していくうち、ピタッとはまる研究がある。「これはいける!」あとは怒濤のように研究を進めればよい。

2017-03-29 18:51:35
shinshinohara @ShinShinohara

ところが競争的資金で研究をすると、「今後3年間はこんな研究をします。こんな研究成果を出します」と、申請書で約束してしまっている。3年後に迎える評価に向けて、成果を出しておかなければならない。思いつきの研究をしている暇はない。

2017-03-29 18:53:40
shinshinohara @ShinShinohara

3年後に評価される時に論文などの成果が出ているようにするには、「結果が見えている」研究をするのが無難。つまり、結果が予想できる研究。はっきり言おう、結果が予想できる研究は改良研究でしかなく、新分野を創設するようなバクチ的研究は実施困難なのだ。

2017-03-29 18:56:40
shinshinohara @ShinShinohara

多くはないがある程度自由になる、何の研究テーマに使うのかも定められていない研究費(ただしもちろん研究にしか使わない)があれば、思いつきの研究ができる。しかし競争的資金は、「こんな成果を出します」と約束してしまうから、それができない。日本の研究力が落ちたのはそのためだろう。

2017-03-29 18:58:58
shinshinohara @ShinShinohara

私は、競争的資金の割合を減らし、交付金(何の研究テーマにも縛られていない研究費)を増やした方が画期的な研究は増えると思う。当たるかどうか分からないが研究費を出す、その度量がないと、画期的研究は生まれない。失敗を許さない研究なんて、矛盾した表現なのだから。研究は失敗してナンボ。

2017-03-29 19:01:54