ラン・スルー・フィールド・ウィズ・ザ・ストライダー #1

ニンジャスレイヤー×ストライダー飛竜のクロスSS。エイプリルフールネタ。#1
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おゆはり @SSoyuhari

「ドーモ、ストライダーヒリュウ=サン。ニンジャスレイヤーです」

2017-04-01 09:35:50
おゆはり @SSoyuhari

……男は顔を上げた。無論、分厚い雲に覆われた夜空を見るためではない。幾日も重金属を含んだ雨に曝され、老木めいて無残に錆び付いた照明灯。その上に立つ正体不明のニンジャに、否応なく男の目は釘づけとなった。 1

2017-04-01 09:38:50
おゆはり @SSoyuhari

男は睨み上げながら、目の前のニンジャを冷静に観察した。顔には、返り血を想起させる真っ赤なメンポ(訳注:面頬。鼻から下を覆う覆面)。袖の無い、紫がかった青い装束の胸元には、同じくそれの如く赤い『飛』の文字。細身の体に不釣り合いな金属製の太いベルトには、何を仕込んでいるか知れぬ。 2

2017-04-01 09:40:30
おゆはり @SSoyuhari

何より異様なのは、ニンジャの手にある巨大な得物だ。抜き身で携えたそのカタナは汚れのただ一つも無く、照明灯よりも不気味に輝いている。先刻、この場所で確かに起きたサンシタニンジャの悲鳴。そして爆発四散。男が到着する直前、あのカタナが持ち主の命ずるままに仕事をしたのは明らかだ。 3

2017-04-01 09:42:53
おゆはり @SSoyuhari

自身が始末し損ねたサンシタに引導を渡したのは、間違いなくあのニンジャだ。男は、その類まれな状況判断力により瞬時にそれを理解し、アイサツの姿勢を取った。ニンジャに対峙する男もまた、ニンジャなのである。 4

2017-04-01 09:44:36
おゆはり @SSoyuhari

「ラン・スルー・フィールド・ウィズ・ザ・ストライダー」 5

2017-04-01 09:45:22
おゆはり @SSoyuhari

今宵もネオサイタマの空は、汚染物質を大量に孕んだ黒雲で覆い隠されていた。毒性の風雨に長く曝され、痛んだアスファルトの上を、一台の車が走り抜ける。それを追う四つの影は、鳥か獣か、はたまたヨーカイオバケの類か。ほどなくして、車は突如炎上し、沿道の廃ビルに激突した。 7

2017-04-01 09:48:26
おゆはり @SSoyuhari

「アイエエエ!」運転手を置き去りにして車から出てきたのは、身なりの良い小男だ。そのスーツの襟元には、雷神を象った三つ巴の社章。重工業分野を独占するメガコーポ、オムラ・インダストリのものである。半狂乱に陥ったその小男は、脇目も振らず廃ビル裏の路地へとひた走った。 8

2017-04-01 09:52:00
おゆはり @SSoyuhari

ガドゥーム!「アイエエエ!?アイエエエ!」逃げ惑う小男の目の前で、真っ赤な火柱がキャンプファイアめいて燃え上がった。振り返ると、そこに立っていたのは灰色の装束を身にまとう四人の男。同じ顔立ち、同じ背格好、同じ装束を着込むその様は、まるで四つ子である。 9

2017-04-01 09:53:15
おゆはり @SSoyuhari

「「「「ドーモ、スザキ=サン。ファイアイーターです」」」」寸分違わぬ動作で、四人の男は同時に小男にアイサツした。この極東のハイ・テック国家には、「義」「礼」と呼ばれる価値観が連綿と生きている。たとえそれが、命を狩る側と狩られる側の間であっても、礼節は大事なのだ。 10

2017-04-01 09:54:47
おゆはり @SSoyuhari

「アイエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」スザキと呼ばれたその小男は、アイサツなど意に介さず絶叫、しめやかに失禁!そう、スザキの前に現れたのは伝説上の存在であるニンジャ。それも四人である。モータル(訳注:非ニンジャの意)が絶望と混乱によりショックを受けるには十分だ。 11

2017-04-01 09:57:23
おゆはり @SSoyuhari

「スザキ=サン」「あなたは我々を裏切った」「残念ですが」「死んでケジメしてもらう」四人のニンジャ達は示し合わせていたかのように、規則正しく順に言葉を発した。「ナンデ!?私がどれだけ貢献したと思っている?もうたくさんだ!」スザキは財布を取り出し、ありったけの紙幣をばら撒いた。 12

2017-04-01 09:59:18
おゆはり @SSoyuhari

ファイアイーター達は顔を見合わせ、肩をすくめて笑った。「カネで買収?」「我々を?」「残念ですが」「死なねば分からぬようだ」「た、頼む、私にも妻子がいるんだ!プロジェクトは誰にも言わないから!」地に頭をこすりつけ必死に懇願するスザキを、ファイアイーター達はなおも嘲笑う。 13

2017-04-01 10:00:29
おゆはり @SSoyuhari

「妻子に内緒でオイラン、マイコ」「そんなあなたも妻子が大事と?」「残念ですが、秘密にするしないは問題ではない」「漏洩の可能性が生じた時点でエラー」ファイアイーター達は、一斉に構えを取った。逃れるすべは無い。「アイエエエ!お慈悲を、アイエエエー!」 14

2017-04-01 10:01:53
おゆはり @SSoyuhari

「Wasshoi!」突如、通りに停止したまま炎上する車の屋根が、異様な掛け声に併せて吹き飛んだ。思わず車の方を振り向く五人。車は何事も無かったかのように燃え続けている。上だ!廃ビルよりもはるか高空から一縷の人影が、次第に大きくなって迫り来る。 15

2017-04-01 10:03:43
おゆはり @SSoyuhari

体操選手めいて鮮やかな回転着地を決めたのは、スザキを乗せた車の運転手だ。「アイエッ!?な、何をしているんだ君は!」「あなたの命を狙う連中に用があった。だからあなたを監視させてもらったのだ」スザキには一瞥もくれず、運転手の男は四人のニンジャ達をジッと見据えている。 16

2017-04-01 10:04:42
おゆはり @SSoyuhari

「ヨロシサンのクローンか。まさかニンジャまでとは。オムラと何を企んでいる」ヨロシサン製薬は、オムラ・インダストリと並ぶメガコーポである。各種栄養剤や薬等を市民に提供する傍ら、裏ではクローンヤクザの提供元として名高い。ブッダも恐れぬ非人道的研究を繰り返す危険な組織だ。 17

2017-04-01 10:06:03
おゆはり @SSoyuhari

鋭い眼光を向ける男に、ファイアイーター達は不快感を露わにした。「邪魔をするな」「これは我々の問題だ」「残念ですが」「消えてもらう。イヤーッ!」ファイアイーターの一人が両手を勢いよく前に突き出すと、何と火が!グオォッ!発射された巨大な火球は運転手に直撃し炎上!ナムアミダブツ! 18

2017-04-01 10:07:37
おゆはり @SSoyuhari

その名が暗示するがごとく、ファイアイーターが得意とするのはカトン・ジツの一種。優に自身の身長ほどもある巨大な火球を両手から発射し、相手を燃やし殺すのだ。……が、やがて炎が弱まり、姿を現したのはスーツの燃えカスのみ。運転手はどこへ?次の瞬間、一つの影がスザキの前に舞い降りた。 19

2017-04-01 10:10:00
おゆはり @SSoyuhari

それを目にしたファイアイーター達は驚愕した。ニンジャだったからだ。それも、赤黒のニンジャだったからである。赤黒の。悪夢の具現めいた恐るべきそのメンポには、禍々しい書体の「忍」「殺」の二文字!「ドーモ、ファイアイーター=サン。ニンジャスレイヤーです」 20

2017-04-01 10:12:10
おゆはり @SSoyuhari

「ニンジャスレイヤーだと!?」「ヤツが?」「何と」「実在していたとは」ファイアイーター達は目を見開く。そしてオジギを返した。「「「「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ファイアイーターです」」」」アイサツは決しておろそかに出来ないニンジャの礼儀だ。古事記にもある。 21

2017-04-01 10:13:39
おゆはり @SSoyuhari

「アイエッ!?アイエエエエ!」一方、新たなニンジャの登場に、スザキは重篤なニンジャリアリティショックを発症。失禁したばかりのそこからさらに失禁し、風体も気にせず走り去った。武田信玄がプリントされた紙幣が地表を駆けずり、寂寥的アトモスフィアを漂わせる。 22

2017-04-01 10:14:34
おゆはり @SSoyuhari

「逃したか」「俺が行く」「待てまずは」「コイツからだ」ファイアイーター達は、このニンジャを無視するわけにはいかなかった。かつてネオサイタマを牛耳っていたソウカイヤと事を構え、その首魁を殺害。全てのニンジャにとっての災厄、都市伝説めいた死神的存在が、目の前にいるのだ。 23

2017-04-01 10:18:30
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