フォビドゥンフォレスト４話「大規模作戦・発動！」 #6 「幸川拓斗」

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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト４話「大規模作戦・発動！」 #5 「望の帰還」」 togetter.com/li/1095637

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フォビドゥンフォレスト４話「大規模作戦・発動！」 #6 「幸川拓斗」

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（前回のあらすじ：英国での２ヶ月間の修業を終えて帰還した少年、鳩寺望。佐祐里は学校を早退し桐葉と共に彼を空港へ出迎えに行ったが、望は当初予定よりも期間が遅れたことを謝罪すべくおもむろに土下座をし衆目を集めてしまう。引率役の少女の機転で３人は何とかその場を逃れた）

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佐祐里達は半ば逃げるようにして空港の駐車場へと急いだ。幸い、職員に通報された様子は無かった。仮に望が土下座していたのが、どう見ても成人の桐葉のほうであれば、もっと色々まずかった気はするが、年の近い佐祐里相手だったのが幸いだったのかも知れない。 1

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幸川拓斗は車の中で目を閉じて椅子に寄りかかっていたが、慌ただしく近付いてきた気配に目を開く。バックミラーを覗くと、無事に帰ってきた望を連れた佐祐里達が妙に急いで走ってくるところだった。扉を開けて出迎える。 「おう、望くんお帰り…どうしたんだ？そんなに急いで？」 2

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借り物の車のトランクと後部座席を開けてやりながら、幸川は尋ねた。 「すみません…ちょっと色々…」 「ごめんなさい…お世話をお掛けします…」 右のドアから佐祐里が入り、望がこれに続こうとする。荷物を持ったままで。 「望くん、それはトランクに入れましょう？」 「大丈夫です！」 3

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望はキャリーケースを横に持って椅子に座ろうと四苦八苦している。幅広で高さもあるケースは４人乗りの車内に載せるには些か以上に大きい。 「望くん、その気の使い方はどうかと思うぞ。佐祐里ちゃんまで狭い思いをするぞ」 「あっ…」 望が固まった隙にケースをひょい、と預かる。 4

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幸川は預かったケースをトランクへと運んだ。ケースと車の直線部を綺麗に平行に合わせてしまう。その横へ、桐葉が乱雑気味にポールを放り込む。 「桐葉ちゃん、借り物の車なんだから丁寧にやってよ」 「布も敷いてあるし、この程度で痛まないだろ？」 「そうだけどさぁ…？あれ？」 5

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「どうした？」 「ブルースカイカフェのホットドッグ買ってきてくれなかったの？」 幸川が不思議そうに尋ねる。彼が頼んでいた空港限定の商品だ。３人共持っている様子がない。。桐葉一人ならいざ知らず、佐祐里がついていながら頼んだものを忘れるとは何かあったのだろうか。 6

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「それどころじゃ無かったんだよ…」 「え？」 「幸川さん、出してください！」 佐祐里が催促する。 「あ、ああ！」 幸川は車を発進させた。 「…敵か」 「敵っちゃ敵だな」 「ん？」 曖昧な表現に眉を顰める。 「世間の目という敵ですね」 その言葉で何となく何があったかを察した。 7

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二言目には謝罪の言葉が出てしまう望が何かしでかしてしまったのだろう。 「まさか、『帰るのが遅くなってすみません！』って土下座でもして注目を集めちゃったとか…」 車内が沈黙する。勿論、肯定を意味する沈黙だった。 「…まあ、次気を付けなよ」 「…すみません」 8

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車が駐車場を出る。 「ところで桐葉さん」 「何だ。まだ何か忘れ物か？」 桐葉は少し皮肉交じりに聞き返す。ポールの恨みだ。 「さっき、後頭部にめっちゃ美少女からの投げキッスを受けた気がするんですけど気のせいですかね…浮気になっちゃいますよ…」 「気のせいだろ…」 9

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フォビドゥンフォレスト４話「大規模作戦・発動！」 #6 「幸川拓斗」 (続き)

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車は高速道路に入る。 「なあ、３０分くらいしたらサービスエリア寄っていいかい？」 運転席の幸川が後ろに聞く。 「ガソリンまだあんじゃねぇか」 助手席の桐葉がメーターを見て言う。二人が望を迎えに行っている間に空港付近で満タンにしたばかりだ。 10

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「車はさっき食べたばっかだけど、俺はまだなの…！」 「ご、ごめんなさい！！」 望がまた謝る。自分のせいで幸川が食いっぱぐれたからだ。 「幸川さん！」 佐祐里が咎めるのに構わず、幸川は続けた。 「望くんはお腹空かないか？」 「すみません！大丈夫です」 11

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幸川の後ろの望は頭を思い切り深く下げた。 「うおぅ」 結果、運転手にシート越しに頭突きを食らわせてしまった。ハンドルが少しずれ、車体が軽く揺れる。 「気をつけて運転しろよヨッシー…」 「え～。今のは俺のせいじゃ…」 「す！すみま…せん…」 12

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危うく二撃目を放ちかけた望はすんでの所で動作を止めた。 「もう！幸川さん！あんまり責めないであげて下さい！」 佐祐里が身を乗り出し気味に再度抗議する。 「いや…それは無いだろモンペＪＫ…」 自分も幸川の運転のせいにしたのを差し置いて、桐葉は佐祐里の過保護を容赦なく揶揄した。 13

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「モンペＪＫ！？」 ここでいうモンペとは昔の袴の一種のことではなく、モンスターペアレント…つまり過保護な親のことを意味する。あまりにも情け容赦ない酷評に佐祐里は比喩でなく肩を落とす。 「あ、あの…さゆ…いえ、大丈夫…ですか」 望は手を肩へ延ばしかけて止める。 「ふ…ふふ…」 14

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「…はーちゃんも俺のせいにしてたよね…？」 「いや、ヨッシーがしっかりしてたら揺れなかっただろ。あとその呼び方止めろって」 「ヨッシーも止めて欲しいんだけどなぁ…俺の舌は伸びないんだぞ…」 幸川はぼやきながら聞きなれないラジオを色々選局する。 15

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「で…ああそうだ。食事の話だった。望くん、イギリス便は確か機内食２回出るんだっけ？２回目は何時だった？」 「２時間くらい前です…」 「風科に着くの７時頃だし、食べないにしても何か買っといたほうがいいぞ？」 「いえ…僕は大丈夫です…」 「俺は大丈夫じゃなさそうなんだよな…」 16

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「すみません…」 「…！」 佐祐里は項垂れながらもまたも叫びかけたが、桐葉が立てた人差し指を見て止めた。 「いっそ本格的に食べても良いけど食べられる？」 「いえ、大丈夫です」 「それはどっちの？」 幸川は苦笑した。この場での「大丈夫」は肯定とも否定とも取れるからだ。 17

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「あ！…食べなくて大丈夫…です。すみません」 望は軽く頭を下げる。 「そもそも、まだ食うには早いだろ？」 「まあ、そうだね。かと言って遅い時間に食べてると道が混んじゃうし、やっぱ買って車の中で軽く食べようか？」 桐葉の言葉を受けて、幸川は後ろへ聞いた。 18

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「み、皆さんがそれで良ければ…」 「じゃあ何にしますか！」 ようやく立ち直った佐祐里はサービスエリアのガイドブックを開いて、隣の望に見せる。今から３０分後前後ということで東京と埼玉の県境付近のＰＡやＳＡを示す。 「ここは肉まんや唐揚げ、こっちはパンがお勧めみたいですね！」 19