編集部イチオシ

「シン・ゴジラ」にてリアル色を極めた東宝ゴジラがハリウッド版ゴジラに継がれた怪獣プロレス路線を取り戻すかどうかについて

44
生命情報保存研究所 @rodan670

先週末から日本での公開が始まった、レジェンダリー・ピクチャーズ製作の怪獣映画「キングコング: 髑髏島の巨神」では、主役となるキングコングが、主敵である巨大トカゲ「スカル・クローラー」や、やはり巨大化したタコ、あるいはイカのような生物である「リバー・デビル」等、複数の「怪獣」と

2017-04-02 16:01:54
生命情報保存研究所 @rodan670

全編に渡って戦い続ける、往年の東宝による怪獣プロレス映画のような構成となっている。実際のところレジェンダリー・ピクチャーズは2014年にゴジラのハリウッド版リメイク作品である「GODZILLA」を作成しており、

2017-04-02 16:07:40
生命情報保存研究所 @rodan670

さらに2020年には本作のキングコングとゴジラとを対戦させる映画の公開も予定しているため、その類似性は決して偶然ではない。巨大イカタコ怪獣「リバー・デビル」も、東宝が50年以上先駆けて作成した同二体の対戦映画「キングコング対ゴジラ」に登場し、

2017-04-02 16:12:02
生命情報保存研究所 @rodan670

そこでもはやりコングと戦った「大ダコ」がモデルとなっている。さらにレジェンダリー社は2020年の「godzilla vs king kong」(仮称)に先んじて、2019年にモスラ、ラドン、キングギドラ等、やはり東宝の「スター怪獣」達を一挙に銀幕に登場させ

2017-04-02 16:20:03
生命情報保存研究所 @rodan670

「三大怪獣 地球最大の決戦」(1964)のハリウッド版リメイク作を公開する計画も有している。こうなると日本の伝統芸とも言うべき怪獣プロレス(怪獣VS怪獣)映画は、2013年の「パシフィック・リム」に端を発し、完全にレジェンダリー社、ハリウッドに引き継がれたように見える。

2017-04-02 16:27:37
生命情報保存研究所 @rodan670

一方、レジェンダリー社がそのような作品群を計画、作成している傍ら、2004年から12年の休眠期間を破って昨年公開された、東宝による本家ゴジラシリーズ最新作「シン・ゴジラ」では、このような怪獣VS怪獣の構造はとられず、限りなくリアルに近い日本での、ゴジラと人間との抗争が描かれた。

2017-04-02 16:34:11
生命情報保存研究所 @rodan670

「シン・ゴジラ」がこのようなストーリーとなった要因の一つには、言うまでもなく東日本大震災と、それに付随する福島第一原子力発電所事故の存在がある。人間によるあらゆるアプローチを寄せ付けず、放射能を撒き散らしながら国全体を危機に陥れた事故後の福島原発はゴジラそのものであり

2017-04-02 16:37:49
生命情報保存研究所 @rodan670

1954の第一作からほぼ一貫してゴジラを核がもたらす脅威のメタファーとして描き続けてきた東宝ゴジラとしては、このタイミングで安直なファンタジー系怪獣プロレス映画を世に送り出せるはずもなく、ゆえに311後に初めて公開される東宝ゴジラ最新作の大まかな骨格は

2017-04-02 16:45:44
生命情報保存研究所 @rodan670

311発生時点である程度決定付けられていたともいえる。戦後日本人が核の脅威を最もダイレクトに感じている現在は核の申し子であるゴジラがもっともゴジラらしくいられる瞬間でもあり、その意味でもやはり敵怪獣の存在は必要なかった。

2017-04-02 16:48:36
生命情報保存研究所 @rodan670

原発事故を背景とした世相と、徹底したリアリティ描写が受け、「シン・ゴジラ」は平成以降の東宝ゴジラシリーズとしては最高の観客動員数を記録した。「モスラ」や「メカゴジラ」等、往年の人気怪獣との対戦をテーマとした数々の作品よりも数字の上では人気となり、今作で初めてゴジラと接したという

2017-04-02 17:00:01
生命情報保存研究所 @rodan670

新規のファンも多く生まれた。こうなると、この流れを受け、あるいは被爆国としてアメリカよりもゴジラの本質(核脅威のメタファー)を理解できているという自負から(レジェンダリー版ゴジラでは水爆実験はゴジラを駆除するために行われていたとする、核兵器の存在を正当化する設定が批判を呼んだ)

2017-04-02 17:05:21
生命情報保存研究所 @rodan670

差別化の意味でも怪獣プロレスものはアメリカに預け、東宝は「シン・ゴジラ」の路線(リアリティーの追求、敵怪獣不在)を貫くべきとの声も増えてきている。しかしこれは必ずしも正しいものとは言い切れない。

2017-04-02 17:08:07
生命情報保存研究所 @rodan670

理由の一つには、怪獣映画をリアル重視のシュミレーション映画にする難しさがある。リアルであるならば怪獣相手に使用できるのは通常兵器だけ。しかし怪獣が怪獣であるためには(特にゴジラともなると)通常兵器などで倒されてはならないという前提があるので、

2017-04-02 17:13:35
生命情報保存研究所 @rodan670

ストーリーの着地地点である怪獣の排除=日常への回帰のためには、そこだけ知恵を凝らせた何らかの魔法を必要とする。「シン・ゴジラ」でも、あくまで徹底したリアル路線はとられつつも、最終的にゴジラを封じ込めたのは「謎の天才科学者」が遺したヒントをもとに製造された、

2017-04-02 17:20:35
生命情報保存研究所 @rodan670

そこだけリアルとフィクションの狭間にあるかのような都合のよい薬剤であった。その他、過去の東宝ゴジラシリーズにおいて、人間が超兵器を使わずにゴジラを封じ込めた手立てとしては、幸運にも超音波に惹かれる性質を持っていたゴジラを超音波で誘導して活火山の火口に追い落とす、あるいは、

2017-04-02 17:26:17
生命情報保存研究所 @rodan670

幸運にも北極や南極にいたゴジラを目標に、火薬を使って人工の雪崩を引き起こし、氷河の中に生き埋めにする、などのものがあり、いずれもゴジラ本人、あるいはゴジラの周辺に存在する弱点となりうる要素を利用し、人間側が気転と知恵を尽くして勝利するという似通った展開となっている。

2017-04-02 17:30:40
生命情報保存研究所 @rodan670

この展開は、怪獣VS怪獣の合間で時折挿入される限りは新鮮であるものの、連続して描かれれば即マンネリにつながる。東宝ゴジラシリーズの過去の歴史を紐解いても、作中敵怪獣が現れることなく、人間とゴジラとの戦いに終始し、最終的にゴジラが人間に封じ込まれるという構造をとった映画は

2017-04-02 17:35:30
生命情報保存研究所 @rodan670

「シン・ゴジラ」を含め3作しかなく、またこの3作はすべてシリーズのターニングポイントに位置しており(第一作となった「ゴジラ(54)」、昭和シリーズをリセットし、平成シリーズへ繋げる契機となった「ゴジラ(84)」、及び12年ぶりの新作となったシン・ゴジラ)連続して作成された事はない

2017-04-02 17:46:23
生命情報保存研究所 @rodan670

ゴジラシリーズの歴史のほとんどの割合は怪獣VS怪獣が占めており、リアリティを重視したゴジラ対人間の構図を主題とした作品は、むしろこの怪獣VS怪獣のシリーズが人気低迷、休眠した際に仕切りなおしの意味合いで作られてきている(「ゴジラ(84)」「シン・ゴジラ」)

2017-04-02 17:49:17
生命情報保存研究所 @rodan670

リアル路線の追求にも限度がある。「シン・ゴジラ」は過去最もリアリティの度合いが強く(同じリアル路線の「ゴジラ(84)」にも辛うじてスーパーXという超兵器が登場したが、「シン・ゴジラ」にはそれすらなく、兵器はあくまで現実世界のもののみ)」

2017-04-02 17:54:41
生命情報保存研究所 @rodan670

高い評価につながると同時に最大の特徴ともなったが、ここまでリアリティを極めてしまうと、それを旨みにさらなるリアルを求めていこうにも、削るべきフィクション要素がほぼ見当たらない、という事になってしまう。

2017-04-02 18:01:58
生命情報保存研究所 @rodan670

(残されるのは、シン・ゴジラで唯一虚構的と言われた、人間側の効果的な反撃すらなく、現実の福島原発で見られるようなちぐはぐな対応に終始するというような展開等)

2017-04-02 18:06:33
生命情報保存研究所 @rodan670

「シン・ゴジラ」の世界をそのまま引き継いだ続編を作るにしても、リアリティを追求することは難しい。「シン・ゴジラ」は怪獣など一度も出現したことのない、現実と瓜二つの世界にゴジラが現れた場合どうなるかというテーマを元に作られたからこそ限りないリアリティ描写が可能であったが

2017-04-02 18:10:26
生命情報保存研究所 @rodan670

その直接的な続編を作成した場合、すでにゴジラの存在が前提となってしまっているため、開始時点から現実と大きく乖離した世界観となることは避けられず、必然的にこれまでの数多くのゴジラ映画で見られた、ファンタジー色強めの作品に収まることが予想される。

2017-04-02 18:14:47
生命情報保存研究所 @rodan670

「シン・ゴジラ」がゴジラ映画史において突出した傑作であることは疑いの余地がないが、シリーズ内における立ち位置としては異端であり、また異端であるからこその名作とも考えられる。その意味では、ゴジラをシリーズとして続けていこうと考えた場合、

2017-04-02 18:20:06