【憑依:艦娘】[艦これ二次創作]『深海disこれくしょん』-4廻。

初めての二次創作という名の盛大な破壊劇。その、四話とでも呼ぶべき紙片。 何もかもがどうしようも無くなりゆくさまを楽しめる方向け。
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九重七志@憑依特化 @yorishirosama

時間としては昼下がり、穏やかな波に揺られながら、青葉は自らの状況について思案する。 『しかし、艦娘に対しても"移乗"を行う事が出来るとはな……』 『深海棲艦の核となる怨霊となった→故に別の深海棲艦に移乗できる……という説は些か的外れ。という事になってしまうな』 『……しかし』

2017-03-26 02:07:30
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

青葉は、左手の指に光る銀環を、太陽にさらす。 『アイツがケッコンとはな』 "彼"は、何かと交流のあった近隣鎮守府の提督を思い出す。 『暢気で、臆病で、貧乏揺すりが酷くて、下戸で、博打のツキも無く、いつも本ばかり読んでいた。そんな奴だったが――』 部下には、信頼されていた。

2017-03-26 02:21:19
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

青葉は、気づくと自分の顔が、どこか緩んだ表情になっているのに気づいた。 『……ああ、そうか』 『然り、それもそうだ』 『この青葉は、アイツの事が大好きなのだな』 心臓の鼓動が高まる。 『……ああ、駄目だ。耐えられない』 『こんな甘酸いものに漬かっていては、復讐など成せまい』

2017-03-26 02:28:32
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

目的のためには、もっと奴らに近い躯が要る。 その為には、早く強力な躯を見つけなければ……。 しかし、問題はそれだけではない。 イ級からネ級へ、ネ級から青葉へ。 "彼"は"移乗"を繰り返したが、その際どちらのケースでも、元の躯は破壊されている。 それが、何を意味しているか。

2017-03-26 02:35:50
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『この青葉を轟沈させなければ、次の躯には移れないのではないか?』 という、懸念。 "彼"とて、元は一人の提督だ。 艦娘を水底に沈めて、平気にしている提督など、それはもはや提督ではない。 『なるべくなら、そうしたくはない』 『……それでは、奴等と変わらないではないか――!』

2017-03-26 02:43:34
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『だが、方法はある筈だ』 『乗った船を、一々沈めて回る船乗りが何処にいる』 『移乗、乗り換えるのであれば、例えば……』 ――接舷。 ――小型挺。 ――艦載機。 『これらを、艦娘や深海棲艦に置き換えるのならば……』 通信の着信音。 慌てて受信機をつける。 『あーおーばー!』

2017-03-26 02:59:44
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『もう、青葉ったら! じっとしててって言ったよね? 何処にいっちゃったの?』 "彼"は、青葉の記憶を探る。 この声は、遼艦である重巡 古鷹の声だ。 この鎮守府における主力級の重巡で、提督が青葉の次に信頼している艦娘らしい。 そして、暴走しがちな青葉を抑える役目でもあるようだ。

2017-03-26 03:12:05
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『いやー、ごめんなさい古鷹さん! ちょっと向こうに敵影が見えたような気がしまして』 『え、そうなの? 本当に?』 『勿論です! 索敵も青葉におまかせ! ですよ!』 『……しょうがないなぁ、もう。いいから、早く合流しよう? ね?』 青葉の"記憶"を使って、適当に話を会わせる。

2017-03-26 03:17:54
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『(しかし、いつもこんな適当なことを言っているのか、この青葉は)』 『――? 青葉、何か言った?』 『……ああ、いえ、何でもありませんよぉ。それより早く、合流しましょう』 『そう? それなら、良いけど……今度は、しっかりね』 今度は通信を切らずに、合流地点へのナビゲートを得る。

2017-03-26 03:24:58
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

他艦娘との合流。 それ自体は、望ましいことではない。 人の目がある以上、行動は制限されることとなる。 あるいはどこかで襤褸を出し、不信を抱かれては堪らない。 [仲間が深海棲艦に乗っ取られた]とでも解釈されてしまえば、もはや打つ手もない。 だが今は、試してみたいことがある。

2017-03-26 03:29:51
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

それを試すに当たって、絶好のチャンスが向こうからやって来るのだ。 逃がす手は、あるまい。 海原を進み、合流地点が近づく。 そこには。 ハネ気味の濃い茶髪、丈の短いセーラー服、不釣り合いな程武骨な腕部艤装。 眼には、柔らかく暖かな光を湛えた、少女。 重巡、古鷹が立っていた。

2017-03-26 03:38:57
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『青葉~!』 古鷹がこちらに向かってくる。言葉には、安堵と少量の怒気を含んでいるようだ。 さて、どのように対応したものか……。

2017-04-02 02:25:22
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『古鷹さん! 無事で何よりです!』 『それはこっちのセリフだってば! もう、独断専行はほどほどにしてってアレほど……』 『まあまあ古鷹さん、お陰でいい情報が手に入りましたよ?』 『え、本当? どうやってそんな事……』 『企業秘密です♪』 『……もうっ』

2017-04-02 02:25:54
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『内容は……そうですね、ちょーっとお耳を拝借して』 『え、耳? う、うん……』 古鷹は耳をこちらに向け、"彼"は青葉の口をそこへ近づけた。 情報を知っている、それは嘘ではない。 内容は、海域主力深海棲艦の所在についてだ。

2017-04-02 02:26:24
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

"彼"はネ級であった時、受けた無電の内容から、既にその所在地を割り出している。 だが"彼"は、それを古鷹に伝える前に、試しておきたいことがあった。

2017-04-02 02:27:00
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

"彼"は青葉の口を開く。 古鷹の耳元へ向けて言葉を発する。 『それがですね、実は――』 耳元への言葉。やや低い音。 落としたトーン、幾許かの深刻さを孕む。 だが―― ――発されたのは、言葉だけではない。 『!?』 古鷹は、狼狽する。

2017-04-02 02:28:35
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

青葉の口から、黒い霧のようなものが溢れる。 "それ"は、古鷹の耳を目掛けてシュルリシュルリと入り込んでいく。 『あお……あおば!? 青葉ッッ!?』 青葉の目の光は落ち、虚ろで焦点の合わない瞳へと移り変わっていく。

2017-04-02 02:29:04
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

古鷹の身体は動かない。疲れきった夜の様に、起き上がれぬ朝の様に。 身体が、"動きを拒否して"いる。 『何、これ……青、葉……?』 『――じっとしてて下さいねぇ、すぐ終わると思いますよぉ』 虚ろな目をした青葉が、いつもの明るい声で言う。 古鷹には、それがかえって不気味に映った。

2017-04-02 02:31:42
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『あっ……あっ……ああっ』 徐々に口数が少なくなり、発する音はうめき声ばかりになる。 「そろそろだな……」 "彼"は、青葉と古鷹の[船体が繋がった]ことを直感で理解する。 「――"移乗"する」

2017-04-02 02:31:58
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

そして―― "彼"の乗艦は、準同型の姉妹艦へと移ることとなる。

2017-04-02 02:32:22
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

最初に感じたのは、視界。 右側に見える、目を閉じたままの青葉の姿。 耳元に当たる吐息の感触が、少しばかりこそばゆい。 毛先が肩に当たる。 柔らかな質感が、幾許かのくすぐったさを産む。 左目にはどこか違和感がある。 熱を帯びているようで、少しばかり見えづらい。

2017-04-02 02:33:08
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

腕の艤装を動かしてみると、特に重みを感じることもなく容易く動かせた。そういうものなのだろうか。 臍や太腿の辺りに風が当たり、少しばかりゾクゾクとする。 年頃の娘にこんな服装を支給するとは、大本営も良い趣味をしているものだ。 『……成功、のようだな』

2017-04-02 02:33:25