フォビドゥンフォレスト4話「大規模作戦・発動!」#7 「西条憐治」

実況・感想タグ: #禁森感想 全話+まとめのまとめ http://togetter.com/li/1059871 1話「英雄たちの遺産」まとめ 続きを読む
0
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト4話「大規模作戦・発動!」 #6 「幸川拓斗」」 togetter.com/li/1096645

2017-04-02 21:51:38
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

(森に潜む妖怪と彼らを討伐する組織・僚勇会が古くから戦い続ける町、風科。高校生の少年・片桐春夏は幼馴染や大人達と共に会の一員として戦っている) (未だ雪深い1月のある週。月曜に新種妖怪に依ると思われる大量誘拐、水曜に人里への妖怪の出没という異常事態が続いた)

2017-04-05 00:09:03
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

(金曜日。片桐達、若手精鋭部隊の隊長である西条佐祐里は、大人二人に伴われ、羽田空港へ赴いていた。イギリスに修行に行っていた中学生・鳩寺望の帰国を迎える為である。制御に問題はあるが強力な力を持つ彼の帰国で、佐祐里が立案した作戦が動き出すこととなる…)

2017-04-05 00:17:40
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

西条家の門戸の手前で桐葉達と別れた佐祐里と望は、戸を開けて中に入る。駆け寄ってきた飼い犬の相手をしてやってから、擦りガラスの玄関の引き戸を開ける。 「ただいま帰りました!」 「お邪魔…します…」 普段より元気な声で帰宅を告げる佐祐里に続いて、望が恐る恐る中に入る。 1

2017-04-05 00:37:23
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「望くん、ほら違うでしょう?」 佐祐里が望の顔の前で人差し指を立てる。 「う…た、ただいま帰りまし…た」 望は、隣町で見出されてから留学までの2か月近くの間、西条家で身柄を預かっていた。帰国してからも継続して住むことになっている。つまりここが今の彼の家である。 2

2017-04-05 00:47:47
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

望はゆっくりとキャリーバッグを押して進む。床のタイルを傷つけまいとするような慎重さだった。実際の所、床もバッグの車輪もその程度で傷つくような安物ではない。傷をつけず、騒音も出さない、というだけでなく少しでも床へ上がるのを遅らせようとしている…様に佐祐里には感じられた。 3

2017-04-05 00:52:56
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「帰ったか」 居間から少年が顔を出した。西条憐治。佐祐里の弟だ。短めの髪は茶に染めているが、見る角度によっては黒髪にも見える程度の薄さである。 「ほら、早く上がれ」 「あっ」 望のバッグと紙袋を奪うようにして掴んで持ち上げる。有無を言わせぬ早さだった。 4

2017-04-05 01:14:56
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

木張りの床に予め敷いておいた新聞紙の上に荷物を置くと、憐治は戸を更に開けながら居間へ戻っていく。 「腹はどうだ」 佐祐里達を振り向く。佐祐里はなおも逡巡する望の手を引こうとしていた。 「もう、良い感じにぺこぺこです!望くんはどうです?」 「えっと…その…」 5

2017-04-05 01:19:15
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

望は佐祐里の手を借りずにゆっくりと家に上がりながらも、なおも言い淀む。 「丁度、お茶を入れた所だ。飲んで待っていろ。蕎麦を茹でてくる」 耳を澄ませば、憐治と居間の更に向こうの台所から換気扇の音に紛れて沸騰音が聞こえる。憐治は足を進めかけ、途中で引き返した。 6

2017-04-05 01:27:47
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「鳩寺」 「は、はい!」 望に呼びかける憐治の表情は、不機嫌であるように望には見えた。思わず縮こまる。 「俺のお茶を冷ます気か。佐祐里に連絡を受けて今がちょうど適温になるようにしたんだぞ…」 「…は!はい!すみません!」 慌てて佐祐里を追い抜き、居間へと急ぐ。 7

2017-04-05 01:30:44
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

居間に入るとうろ覚えの室内を見回し、すぐにお茶の置かれた炬燵を見つける。自分に与えられた定位置を思い出すと、望は早歩きで近付き…。 「鳩寺!」 憐治が軽く怒鳴る。 「はい!すみませ…」 「その前に、うがいと手洗い!」 「…はい」 「…それと仏壇と神棚にも手を合わせろ」 8

2017-04-05 01:34:32
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「待たせたな」 憐治が居間に二人を呼びに来た。居間の炬燵や卓袱台の上でも食事が出来なくはないが、西条家では基本的に台所のテーブルで食事を取る。テーブルの上には温蕎麦と重箱が並んでいる。箱の中身は黒豆や伊達巻、蒲鉾、なます、昆布巻きなど…つまり御節料理だった。 9

2017-04-06 00:27:04
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「え…?」 望は不思議そうに卓上を見渡す。6つの重箱の中には、伊勢海老や鯛の焼き物まである。素人目にも特に上等な御節だと分かる。 「お正月に帰って来られませんでしたからね、特別に用意して貰ったんですよ。お蕎麦は年越しの代わりです…まぁこちらは普通のお蕎麦なんですけれどね」 10

2017-04-06 00:37:35
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「憐治も望くんに腕を披露できなくて寂しがってたんですよ」 佐祐里は憐治の頬を突付こうとする。 「そんなことはない」 彼女より僅かに背の低い憐治はそれを躱すと、フリルの付いたエプロンを脱いで畳み卓に着いた。 「ほら、鳩寺も佐祐里も座れ」 「はーい」 「…はい」 11

2017-04-06 00:41:37
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

尊大な物言いをする憐治だが、彼は中学一年生である。三年生の望から見れば当然年下だ。彼は、困ったことに中高生くらいには大体この様な態度を取る。姉である佐祐里さえも呼び捨てにする始末である。それでいて見知った者からは左程不快感を持たれないのは彼の長所ではあるのだが。 12

2017-04-06 00:45:54
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「「頂きます」」 「…頂かせて頂きます」 食事が始まった。全員まずは伸びる前に蕎麦を食べ始める。普通なら御節と蕎麦を合わせて食べることは少ないだろうが、今回はその稀な例だ。御節は塩分の濃いものが多いので汁は普段より薄味にしてある。太めでコシのある十割蕎麦を音を立てて啜る。 13

2017-04-06 00:56:24
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「あったまりますねぇ」 先ほど前で乗っていた車も、勿論この家も傍観と暖気はしっかりしている。加えてお茶も飲んだばかりではある。それでも、やはり温かいものを食べたほうが温まるというものだ。今日は冷え込む。佐祐里は普段より唐辛子を多めに入れて食べた。 14

2017-04-06 01:00:11
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

望は、箸で蕎麦を一定量づつ掴んでは口に運んで食べている。パスタでも食べるかの如き静かさだ。その所作は行儀が良い…というより、必要以上に良過ぎる。他の二人の様子を伺いながら恐る恐る食事をする様は、まるで少しでも汁を零すなりすれば、怒号が飛んで来るのかのようだった。 15

2017-04-06 01:06:16
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「美味いか」 憐治は、八割型食べ終えた所に蕎麦湯を注ぎながら尋ねた。 「は!はい!」 望は箸を静かに箸置きに置き、姿勢を正す。 「なら、美味そうに食え」 「…お、美味しい!美味しい!」 望は引き攣った笑顔を浮かべた。 「お前…イギリスでもそんなだったのか?」 16

2017-04-06 01:17:29
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「い、いえ…」 目を逸らす。 「そうか…」 憐治は暫し考えながら、残りの蕎麦を食べ終え、器を置いた。 「御前も蕎麦湯、要るか?」 「…頂きます」 漆塗りの急須に似た蕎麦湯入れを望に渡してやると、憐治は今度は佐祐里の方を向く。 「静かだな…?」 佐祐里が軽く目を逸らす。 17

2017-04-06 01:25:54
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「…え、なんのことですか」 「とぼけるな。いつも…と言っても2か月前か…ともかく、俺が鳩寺に『ほんの』僅かでもキツく言うとモンスターペアレントの如く噛み付いてくるだろう」 『ほんの』に強制を置いて憐治が言った。 「うぐっ」 「…なるほど、車の中でやらかし済みか」 18

2017-04-06 21:01:19
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

佐祐里が既に車中で同じことをやらかし、同じ指摘を受けた事実を憐治は的確に言い当てた。 「良いじゃないですか別に…望くんは甘やかし過ぎるくらい甘やかして丁度良いくらいですよ」 「それは分かるが限度を考えろ。かえってコイツの迷惑だ」 「ぐへぇ」 「食事中に妙な声を出すな」 19

2017-04-06 21:11:23