掌小説語り~自作つぃのべる集~38

自作つぃのべるのまとめです。 2016年6月分
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リュカ @ryuka511

滅びた魔法文明の遺跡で竜は眠る。竜の存在を知り人間が何人も訪れたが全て追い返した。竜の胸元で首飾りが揺れる。昔、幼い王女が竜に贈ったものだ。特に何の魔力も無いそれを、竜は大切に身につけている。文明の復活を願った事もあった。だが今は、想い出を胸に静かに眠り続ける。 #twnovel

2016-06-01 00:13:24
リュカ @ryuka511

勇者が魔王を討つ、たとえ君が泣いたとしても、この結末が正しいんだ。でなければ、僕が勇者として生まれた意味が無くなってしまう。どうして泣くの? 君は僕の存在意義を否定するの? #twnovel 僕が倒れる事が君にとって正しいのなら、僕は全力で魔王を討ってやろう。それから君もね。

2016-06-01 23:35:55
リュカ @ryuka511

窓とカーテンを閉める。荷物は小さなバッグに収めて、入りきらない物は置いてきた。さよならはメモスタンドに託して、扉を閉める。合鍵をドアポストに放り込んだ。閉ざした扉は、最初から私の事など知らないように、冷たい色で佇んでいる。終わったのだ。やっとそう思えた。 #twnovel

2016-06-03 00:53:05
リュカ @ryuka511

生まれつき片方しか翼が無い僕らは、一族から「出来損ない」と蔑まれた。僕らはきっと2人で1人なんだ。だから片翼でも2人なら飛べると信じてた。「一緒に飛んでみようよ」そう誘った時の君の顔と握られていた剣が、僕の見た最期の光景。僕の片翼を奪って、君は姿を消したという。 #twnovel

2016-06-04 00:11:43
リュカ @ryuka511

禍々しき力を持つ鬼火を、霊力を込めた日本刀で斬り伏せる。式神との連携で戦いは我々が優勢だった。それが油断に繋がる。結界が綻び鬼火の力が甦る。力を取り戻した鬼火が目前に迫る。何かが爆ぜる衝撃の後、鬼火は全て消え去った。慢心した私を救ってくれた式神の破片に、詫びる。 #twnovel

2016-06-05 00:43:23
リュカ @ryuka511

「あなたを盗みにきました」結婚し退職が決まった最後の出勤日、園長に挨拶を済ませると小さな影が駆け寄ってきた。画用紙の仮面は子供達が好きなアニメの怪盗によく似ている。彼は小さな手を伸ばす。「せんせ……じゃなかった、あなたを、盗みに、きました」震える声に涙が滲んだ。 #twnovel

2016-06-05 23:02:22
リュカ @ryuka511

庭園の牡丹に鋏を入れ整えながら、貴方への「アイラブユー」をそっと呟く。言えるはずのない愛の言葉も、異国の言葉に変えてしまえば容易く口に出来る。覚えたばかりの異国の言葉だ、誰かに聞きとがめられても大丈夫。誰にも意味など解りはしない。そう、誰にも。貴方にも。 #twnovel

2016-06-06 23:57:21
リュカ @ryuka511

戻れない所まで来てしまった。逃れようともがくほどに、絡みつく。長い間、あの人の罪に手を貸してきた。「お前が必要なんだ」悲しげに言われて抗えなかった。これはもう愛ではなく執着なのかもしれない。それでもいい、果てるなら共に。逃れられないのは貴方も同じなのだから。 #twnovel

2016-06-08 01:37:13
リュカ @ryuka511

魔法使いの彼女は生まれつき目が見えないという。とてもそんな風には見えなかった。彼女は朗らかに笑う。「見えなくたって魔法は使えるんだよ」「どうやって戦うんだ?」「感じるの。敵意や悪意を」そう言われた瞬間、身動きが出来なくなった。「だから、私を騙そうとしても無駄よ」 #twnovel

2016-06-08 23:48:32
リュカ @ryuka511

魔王軍に敗れ負傷した勇者一行は、街に戻り神殿で治癒術を受けていた。うなだれる勇者達に老神官は語る。「負けることは恥ではない」と。顔を上げた一同の眼差しに満足げに頷いた。「真に恥ずべきは、言い訳し諦める事だ」かつての私のように。自嘲を抑え一同の眼差しを受け止める。 #twnovel

2016-06-09 23:54:16
リュカ @ryuka511

セピア色に褪せた譜面を懐かしく見つめる。私の最初で最後の作品である前奏曲は、多くの奏者に演奏され喝采を浴びているという。私にはその演奏も喝采も聴く事は出来ない。音楽家として私は死んだと思っていた。だが、この曲を好いてくれる人々が、私に生きてくれと言った気がした。 #twnovel

2016-06-11 00:51:51
リュカ @ryuka511

魔王を討つと予言された子供を真っ暗闇の国に隠す。まさか自分達の支配下にいるとは思わないだろう。秘かに力を付けさせて、旅立ちの時を待つ、はずだった。「連れてって」魔王軍将軍に子供は自ら正体を明かす。どういうつもりだと問われ笑った。「奪われた時間を取り戻すんだよ」 #twnovel

2016-06-11 23:29:24
リュカ @ryuka511

魔王討伐の旅先で意気投合し、共に旅をするようになった。報奨金目当てだなんて笑う君だけど、一つ一つ知る君の顔に本当はそうじゃないと悟る。魔族への憎悪、他力本願な人々への嫌悪。抱え込んだ罪悪感。君の過去を今は聞かないでおこう。その背を預けてもらえるようになるまでは。 #twnovel

2016-06-13 00:56:55
リュカ @ryuka511

悪魔を断罪する天使はくすくすと笑う。「あなたと同じくらい私も真っ黒なのよ本当は」命乞いする悪魔に天使は尚も笑う。「天使が黒くては何故いけないのかしら。狂う事すら許されないのは拷問だと思わない?」天使の刃が煌めき悪魔の断末魔が響く。「だから私はあなた方が憎いのよ」 #twnovel

2016-06-14 00:08:41
リュカ @ryuka511

師匠は秘伝書を2つに分け「それは半分では役に立たない」とだけ言い遺し逝ってしまった。もう半分の秘伝書を兄弟子と奪い合い戦う。これは師匠からの最後の試練なのだと思っていた #twnvday 兄弟子を手にかけ、それは大きな間違いだったと悟る。師匠は「力を合わせろ」と言いたかったのだ。

2016-06-15 00:12:54
リュカ @ryuka511

護衛を撒き王子は悠々と街を歩く。共犯にされた従者は気が気ではない。王子は見るもの全て珍しく、あちこちの店を覗き子供や動物に話しかけ笑う。楽しそうな王子に心揺れながら、従者は渋面を作る。「王子、そろそろ魔界へお帰りください」「地上はいいな。我が手に欲しくなったぞ」 #twnovel

2016-06-15 22:25:17
リュカ @ryuka511

魔王を倒せば本当に世界は平和になると皆は、僕は信じているのだろうか。僕らの名は世界中に知れ渡り、魔王軍の猛攻を受け、街に着けば歓待を受けた。街では僕らの名を騙る輩がいると聞く。小さな村では僕らが来ると魔王軍も来るから出て行けと言われた。魔王を倒せば本当に世界はー #twnovel

2016-06-17 00:12:21
リュカ @ryuka511

貴方の愛したその女は、貴方を、王国を破滅に導く。そう告げられたなら良かっただろうか。だがそれは水晶玉に見えた未来ではない。王は私の占いに絶大な信頼を寄せて下さる。それで充分ではないか。身分違いの恋に苦悩する王を、祝福する事も諌める事も出来ず、曖昧な未来を告げた。 #twnovel

2016-06-18 00:04:46
リュカ @ryuka511

長い戦いの旅で愛剣は使い物にならなくなった。傷を癒す力も尽きて、ぼろぼろの身体でただ足を進める。敵は強大過ぎた。もう充分だろう。志半ばで倒れても誰も責めないよね?だけどもう少し歩こう。君と暮らしたあの場所へ。君を失ったあの日に、朽ちるなら此処でと決めていたんだ。 #twnovel

2016-06-18 22:48:13
リュカ @ryuka511

あなたは私を高嶺の花だと言う。何を妄想してるのか知らないけど、私がどんな女かも知らないで、幻想を抱くのはやめた方がいい。本当の姿を知ったら幻滅し勝手に裏切られたなどと言うのでしょう。私は私の為にしか生きられないから、高嶺の花だと言うのなら、そのまま近付かないで。 #twnovel

2016-06-19 22:58:20
リュカ @ryuka511

それはわたしが生んだ遊び相手。わたしの空想した生き物で、可愛くて強い大事なお友達。誰にも内緒だったけどある日ママに見つかってしまった。ママはこの子を化け物って言うから、わたしは腹が立った。そしたらこの子がママをやっつけてくれた。この子はわたしのお友達で命の恩人。 #twnovel

2016-06-20 23:42:58
リュカ @ryuka511

君の足跡に花は咲き、君の残り香には蝶が集った。それらを頼りに君を追う。触れられそうで触れられない君が、幻影じゃないと確かめたくて。僕が追い付くのを待っているのだと思いたくて。つかまえられたら、今度こそ放さないから。君の行く先にあるものを、もう恐れたりはしない。 #twnovel

2016-06-21 23:22:38
リュカ @ryuka511

その踊り子は常に赤い衣装で舞う。ある者は炎のようだと讃えある者は太陽のようだと称賛した。だが彼女は自嘲する。私はそんな賛辞を受けるに値しない。私が赤を着る理由は、この身に浴びた血と罪を忘れないため。暗殺者が必要とされなくなった世で、生き残ってしまった私の贖罪。 #twnovel

2016-06-22 23:14:34
リュカ @ryuka511

魔王討伐の旅の過酷な旅の中で勇者に恋をした。それは極限状態での錯覚かもしれないけど、今は確かめようがない。夜営の日、戯れに地図の裏へ勇者の横顔を描いてみる。月明かりの勇者の耳に煌めく耳飾りは、大切な人の形見らしい。無事に魔王討伐を果たしても、この想いは果たせない #twnovel

2016-06-23 23:29:56
リュカ @ryuka511

魔王が狙う姫の城は雲の上。いかに魔王といえど、光に満ちた雲の上まで手は出せまいと、誰もが思っていた。「我に不可能は無い」魔王はやって来た。満身創痍のくせに余裕そうな笑みを浮かべて。「来て下さったのですね」まるで愛しい王子と会えたかのような、姫の声。姫、どうして。 #twnovel

2016-06-24 23:45:28