複合適応形質の起源について:ダーウィンとマイヴァートの議論からの進展

まとめておきました
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TKS @HomareZuki

このtogetterは以下の論文を解説したものです。 On the Origin of Complex Adaptive Traits: Progress Since the Darwin Versus Mivart Debate onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/je…

2017-04-16 00:25:15
TKS @HomareZuki

複合適応形質の起源について:ダーウィンとマイヴァートの議論からの進展 onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/je… ●キリンの長い首、ヒラメの片側に寄った眼、歯クジラと髭クジラ、枯葉にそっくりな蝶の進化は徐々に進化してきた ●何が、複雑な構造物の漸進進化を可能にしているのか?

2017-04-12 09:40:13
TKS @HomareZuki

承前)種の起源は1859年に出版されて以来1872年まで版を重ねますが、最終版で初めて新章が追記されました。主たる目的は前年に出版されたマイヴァート著「種の創生」に反論するためです。特に、「有用な構造物の初期進化は自然選択では説明できない」と題した第二章の反響は大きなものでした。

2017-04-12 09:56:41
TKS @HomareZuki

承前)この章で、キリンの長い首、ヒラメの片側に寄った眼、歯クジラと髭クジラ、枯葉擬態の蝶、動物の眼等、十数の動植物の具体例が挙げられています。マイヴァートは、これらの構造物が徐々に進化したはずはない、なぜなら進化の初期での中途半端な構造では機能的に働かないからだと主張しました。

2017-04-12 10:06:39
TKS @HomareZuki

承前)果たして、これらの動物の形質は徐々に進化してきたのか(漸進進化)?あるいは、急激に進化してきたのか(跳躍進化)?本論文では先行研究を調べ、キリンの長い首、ヒラメの片側に寄った眼、歯クジラと髭クジラ、枯葉擬態の蝶が徐々に進化してきたことが既に証明されていることをまとめました。

2017-04-12 10:09:40
TKS @HomareZuki

承前)本論文では、マイヴァートの指摘には2つの内容が混在していることを指摘しました。(1)進化の初期段階での構造物が果たしている機能、と、(2)複雑な構造物が進化してくる道筋、です。これらは、関連があるものの、内容によっては個別にアプローチすることが可能であることを指摘しました。

2017-04-12 10:18:41
TKS @HomareZuki

進化の初期段階での構造物が果たしている機能: functional beginnings 構造物の複雑性: structural complexity

2017-04-15 23:27:16
TKS @HomareZuki

承前)続いて、本論文では、「複雑な構造物が進化してくる道筋」は現代的には十分に解くことが可能であることを指摘し、その背景となる概念整備(どんな性質が複雑な構造物の進化を可能にしているのか?)、具体的な方法論の提示、実際に解いた例(コノハチョウの漸進進化)を概説しました。

2017-04-12 10:23:43
TKS @HomareZuki

承前)どんな性質が複雑構造の進化を可能にしているのか?本論文では2つの性質「還元性reducibility」と「組立性composability」を提案しました。複雑構造は要素の集合として認識でき、要素群はある程度自在に組み合わせて新規の構造を作れることを具体例を挙げ示しました。

2017-04-12 10:32:06
TKS @HomareZuki

承前)「還元性」は複雑な構造物というシステムの要素への可分解性を指します。「組立性」は要素の組み合わせによる構造システムの合成を指します。両性質をもつ系として、reducible-composable MultiComponent (rcMC) systemsと名付けました。

2017-04-12 20:59:42
TKS @HomareZuki

rcMC系のcomponentは、従来のモジュールとほぼ同値と考えてよいと思います。異なるのは研究の方向性です。前者は要素の獲得・改変・相互作用化・消失の進化を追うことを目的とし、後者はモジュール構造の獲得とそれを生み出している内部の構造を調べることを目的とする(ことが多い)。

2017-04-15 21:20:50
TKS @HomareZuki

従来のモジュール研究: モジュール構造の獲得の総説 annualreviews.org/doi/abs/10.114… モジュール構造を生み出している内部の構造の総説 nature.com/nrg/journal/v1… rcMC系が目指す方向性(図6-8)とずいぶん趣の異なることがわかると思います。

2017-04-15 21:38:45
TKS @HomareZuki

@suz_dg ちなみに、NOTE: rcMC Systems and Hierarchy節において、モジュールとcomponentの違いを議論しています。また機会あるときに、議論にのってもらえれば。

2017-04-12 13:45:06
TKS @HomareZuki

また、モジュール議論では要素への可分解性(=還元性)はよく議論になるものの、その要素を組み合わせ方(=組立性)はほとんど議論されていません。rcMC系は複雑な構造を生み出す進化を射程に収めており、分解と合成の両方を考えることが重要です。この点も従来のモジュール議論と異なる点です。

2017-04-15 21:52:32
TKS @HomareZuki

承前)過去には、複雑な構造物は「還元できない複雑性irreducible complexity」をもつという主張もみられました。しかし、少なくとも今回まとめた形質については、この主張を退け、「還元できる複雑性reducible complexity」が成立しているのだとしました。

2017-04-12 21:01:42
TKS @HomareZuki

承前)簡単にまとめれば、複雑な構造物とて要素の集合体としてできている。したがって、どの要素をどの順番に組み込んでいったのかを調べることができれば、複雑な構造物が徐々に進化してきたのか、突然に進化したのかについて解くことができるというわけです。

2017-04-12 21:24:42
TKS @HomareZuki

承前)その結果、仮に徐々に進化してきたという結果が得られたのならば、複雑な構造物になる前の"中途半端"な構造物もなんらかの機能をもっていたのだと推察できる(祖先の機能をどのように調べるのかは難儀ですが)構造の進化を先に解明し、次に祖先の機能はどうだったかを議論しようという戦略です

2017-04-12 21:30:44
TKS @HomareZuki

承前)これまでの議論では「複雑な構造」と「祖先の機能」が同時に議論されていたため、ともすると循環論法の様を呈していました。複雑な構造が徐々に進化したはずはない、なぜなら進化の初期での中途な構造は機能しないというように。この論法は、機能で問題提起し、構造にその責を負わせています。

2017-04-12 21:36:15
TKS @HomareZuki

承前)それではどのような方法で複雑な構造の進化を解くのか?既に、葉っぱにそっくりな蝶の翅模様の進化を解明した研究で示しました。 bmcevolbiol.biomedcentral.com/articles/10.11… news.nationalgeographic.com/news/2014/12/1… pub.maruzen.co.jp/book_magazine/…

2017-04-12 21:42:15
TKS @HomareZuki

承前)簡単に説明しますと:(1)複雑な構造を要素へと分解する(2)要素の特徴をコーディングする(3)近縁の種も含めて系統樹上にマップする(4)ベイズ統計を使って要素の特徴の祖先状態を推定する(5)特徴変化の順序を推定する。ということになります。

2017-04-12 21:47:19
TKS @HomareZuki

rcMC系の要素としての大きな特徴は、構造単位(とその状態)を要素と扱うだけでなく、構造単位間の相互作用も1要素として扱っている点です(図8B)。マクロ進化が主たるターゲットになるため、相互作用のアリ・ナシ、その状態を記述しコーディングすれば、解析の遡上に乗りうるという立場です。

2017-04-15 22:01:02
らむ @mutselbalance

@HomareZuki これ確かESEBで、tksさんが僕にコメントお願い云々の話をしたモノですよね。今か今かと待っていたのに!笑 で、本筋のほうですが、構成論的に、形質の次元をどう定義するか、という問題に最近トラップされているのですが、ヒントがありそう。ともかく、読まねば!

2017-04-12 13:23:05
TKS @HomareZuki

@lambtani____ 形質の次元については「基底をどのように定めるか」に帰着されると思います。本論文では、CHARACTER CODINGの節でMcSheaの議論を援用して要素の特徴分解の方法を議論しています。ただし、要素そのものをどのように定義するのかは議論していません。次以降の論文に先送りました。

2017-04-12 13:29:13
TKS @HomareZuki

複雑な構造を要素へと分解したのち、どのような特徴をコーディングすればよいのかの指針については、McSheaによる規準を導入しました(CHARACTER CODING節)。 McShea (1996) Evolution jstor.org/stable/2410824…

2017-04-15 22:07:50

論文中で紹介されているコノハチョウの擬態進化に関するTKSさんの過去のつぶやきはこちら