西洋と非西洋のはざまで

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uroak_miku @Uroak_Miku

1988年、バブル日本の時代、アカデミー賞で弾みがついたリューイチ・サカモトのNYライヴがビデオ化されている。アジア諸国には先進国、欧米列強には伝統文化国の顔を見せながら綱渡りを続けてきた近代以降の日本がそのままステージと音楽に反映されているかのようで興味深い。

2017-04-21 04:08:59
uroak_miku @Uroak_Miku

2)まずオキナワの弦楽器が暗闇の場内に響いていく。「てぃんさぐの花」。那覇の民謡。しかしNYの観衆にはフジヤマゲイシャのフォークソングと認識される。

2017-04-21 04:12:30
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2017-04-21 04:14:55
uroak_miku @Uroak_Miku

4)さっと曲が変わる。ステージに明かりが注ぎ、サカモト楽団が勢ぞろいするなか「NeoGeo」が合唱される。歌うはゲイシャガールズの三人。沖縄のプロ歌手ですがNYの観衆にはゲイシャガールズと映る。この歌はサカモトの作曲ですが民謡をロックンロール風に歌っているように聞こえる。

2017-04-21 04:18:06
uroak_miku @Uroak_Miku

5)この当時、坂本は沖縄の音楽に傾倒していました。いちおう日本なんだけど文化圏としては日本ではなく、海を介していろんな民族との交易があった南の王国。徳川幕府の臣下のような清王朝の臣下のような、よくわからない緩衝エリア。

2017-04-21 04:21:03
uroak_miku @Uroak_Miku

6)日本人として生まれ、育った人間が西洋の音楽をアカデミックに学び、ロックというやはり西洋のポップカルチャーに染まるというアイデンティティの捻じれ。

2017-04-21 04:22:41
uroak_miku @Uroak_Miku

7)明治時代、日本は音楽まで西洋から輸入し子どもを洗脳した。スコットランド民謡を使って、それまで日本に存在しなかった音「ファ」と「シ」を植え込みにかかった。「R」と「L」を聞き分け&話し分けできないと野蛮人扱いされるという理屈の音楽版です。

2017-04-21 04:24:54
uroak_miku @Uroak_Miku

8)開国で英語の海に放り出された日本。船内にどんどん海水が入ってくる。これまでの手漕ぎポンプでは間に合わない。そこで「話しことば」の世界からデキる人材を抜擢して「書きことば」の世界に入閣させ、海水処理に当たらせた。

2017-04-21 04:27:08
uroak_miku @Uroak_Miku

9)今の私たちが「国語」と呼んでいるものは、明治期に海水処理用に編み出された明治WINDOWSの末裔です。つまり英語との混血児です。ここ、どういうわけか国語学者も英語学者も正面から論じないようなので私が代わりに強調します。

2017-04-21 04:28:55
uroak_miku @Uroak_Miku

10)音楽でも同じことがありました。明治期に西洋の音楽が国の意思で導入され、さまざまな暗中模索の末に「日本の伝統音楽」が作られた。宮城道雄がその代表ミュージシャンですね。元旦によく街に流れる、あの曲の作者。

2017-04-21 04:31:55
uroak_miku @Uroak_Miku

11)サカモトが沖縄音楽に着目したのは、宮城的な「作られた日本のトラディショナルミュージック」に距離を置きつつ、そのヘリテージはしっかり継承するための戦略としてだったと想像します。ヘリテージ?そう。西洋人が思い抱くジャパンのステロタイプにいったん乗ってあげる戦略です。

2017-04-21 04:34:55
uroak_miku @Uroak_Miku

12)映画の話題になりますが『ブラックレイン』(1989年)で狂気のジャパニーズ・マフィアを演じたユーサク・マツダの劇中での動作を観察すると、ブルース・リーの動きを意識しているのがよくわかる。西洋人が抱く、めっぽう強い東洋人男性のステロタイプ。それを踏襲しながらもそれ以上を狙う。

2017-04-21 04:37:20
uroak_miku @Uroak_Miku

13)リーは悪役ではなかった。しかしユーサク演ずるジャパニーズ・マフィアは、大衆食堂で平然とひとを惨殺するレプリカント男。マイケル・ダグラス刑事との格闘で、リーの動きでアクション開始するけれどすぐに切り替わる。「こいつブルース・リーとは違う?!」と西洋の観客に印象付ける。

2017-04-21 04:40:19
uroak_miku @Uroak_Miku

14)リューイチのNYライヴにも同じ戦略を感じる。ただ彼はリズムセンスが弱いこともあって、沖縄風音楽(NYの観衆にとってはジャパニーズ・フォークソングなのだけど)にロックンロールのリズムをのせる工夫があまりうまくいっていない。観衆の体が反応しない。

2017-04-21 04:43:10
uroak_miku @Uroak_Miku

15)「NeoGeo」をコンセプトにしたライヴです。アフリカだろうがオキナワだろうが、自分にとってはすべて地続きのお隣さんであり、ご近所の皆さんといっしょにドンチャカ奏でて歌いましょう、それに何がいけないんだスピリッツ。

2017-04-21 05:04:20
uroak_miku @Uroak_Miku

16)それって植民地から面白いものを吸い上げて万博で展覧するのとどう違うの?という疑問もわきますが、坂本はたぶんこう理論武装した。搾取ではないフィールドワークだ、アカデミックな視点からの研究と実践である。

2017-04-21 05:06:00
uroak_miku @Uroak_Miku

17)「NeoGeo」について当時、シンガポールの人気ミュージシャンであるディック・リーが「狙いはわかるがアカデミックすぎる」と論評していた。

2017-04-21 05:07:24
uroak_miku @Uroak_Miku

18)これもNeoGeoごっこなのかな。 pic.twitter.com/v8RRPwtUsA

2017-04-21 05:12:46
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uroak_miku @Uroak_Miku

19)シンガポールは日本より格下です。差別しているつもりはありません少なくとも経済力においてはずっと下です、今なお。その国の出身で、やはりグローバル・マーケットを狙っていたミュージシャンが、自分の国よりは格上である日本国の音楽家がアジアを奏でる姿をどう眺めた(聞き取った)のか。

2017-04-21 05:20:57
uroak_miku @Uroak_Miku

20)NYでのライヴだからアメリカ人つまり世界で一番格が高い国の人間の目線にかなった演出がされている一方で、日本より格が下のアジアの国々の人間の視点も意識されている。

2017-04-21 05:23:16
uroak_miku @Uroak_Miku

21)「米アカデミー賞やグラミー賞やゴールデングローブ賞をみんなもらっちゃったけど、ぼくアジア人だってこと忘れてませんよ」とほかの格下アジア人たちにエクスキューズするための装置としてオキナワが使われた、と解読したら怒るかな当時のサカモトは。

2017-04-21 05:25:42
uroak_miku @Uroak_Miku

22)リーは「素晴らしいけれどアカデミックすぎる」と論評した。そう、サカモトはフィールドワークという印籠を使って「NeoGeo」を成り立たせた。高度にアカデミックなためほかのミュージシャンは追従ができない。事実、欧米マーケット狙いで同種の後続者は生まれなかった。上々颱風今いずこ。

2017-04-21 05:35:03