〈再放送〉トーメント・イーブン・アフター・デス #2

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤー:エイジ・オブ・マッポーカリプス 第一話【トーメント・イーブン・アフター・デス】再放送 #2

2017-04-20 21:29:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一歩一歩瓦礫を踏みしめ接近するほどに、墜落衝撃で吹き飛んでいた短期記憶が鮮明に戻って来た。瀕死のニンジャの名はコーストウインド。敵だ。アイサツし、交戦し、カラテを叩き込んだ。敵の右腕は付け根から失われ、鎖骨と肩甲骨が破壊されている。致命傷だ。カイシャクし、とどめを刺すべし! 0

2017-04-20 21:31:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

このニンジャがヤクザクラン「デビルズカインド・キョダイ」の所属である事は間違いないが、目当ての相手ではない。(((殺せ)))「殺す」彼は精神の奥底に湧き出したアブストラクトな殺意に頷き返した。ニンジャを殺していった先にあのサツガイがいる。それが本能でわかる。(((然り))) 1

2017-04-20 21:34:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

瀕死のコーストウインドは赤黒のニンジャを、そのメンポ(面頬)にレリーフされた「忍」「殺」のカンジを見上げ、恐怖した。「狂人……!」這って逃れようとする。その背をニンジャスレイヤーは踏みしめる。「念のため訊いておく」彼はジゴクめいて言った。「サツガイという男を知っているか」 2

2017-04-20 21:37:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「知らぬ」コーストウインドは血を咳き込んだ。「知っていたとしても教えぬ。その者がお前の目指すものか?ならば望み果たせぬまま野垂れ死ね。狂人に似合いの末路よ」「貴様に用はない」ニンジャスレイヤーは踵を捻じり込んだ。「目的はデビルズカインド・キョダイのオヤブン、ストリングベンドだ」3

2017-04-20 21:40:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オヤブンの名を……貴様……ゲホッ!」コーストウインドは絶望した。情報の取引材料がどのみち何もない事がはっきりした。「オヤブンが必ず貴様を殺す!絶対にだ。許さ……」コーストウインドは目を見開いた。敵の眼差しに込められた尋常ならざる憎悪が、彼の怒りを押し流した。彼はただ恐怖した。4

2017-04-20 21:42:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」カイシャク!ニンジャスレイヤーの踵が頭部を踏み砕いた。「サヨナラ!」コーストウインドは爆発四散した。吹き込む潮風が爆発四散痕の灰をさらい、吹き流す。死ねばニンジャは肉体すら残さない。半神めいたニンジャの生態を詠んだ「死して屍拾う者無し」のコトワザが示す通りである。5

2017-04-20 21:46:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

頭上、砕けた天窓の上では、旋回するバイオカモメが影を為し、ゲーゲーという泣き声が重金属酸性雨と共に降り注ぐ。雨に触れるニンジャスレイヤーの身体が蒸気を発する。燃える血が身体の傷を癒し、装束を再生してゆく。超自然の憎悪が体内を循環し、戦う力を、殺す力を呼び戻す。 6

2017-04-20 21:49:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ストリングベンド……どこだ……!」ニンジャスレイヤーは頭に手を当て、呻いた。ニンジャの痕跡を……その息遣いを感じ取るべく。既に近い筈だ。敵のはらわたに近づいている。デビルズカインド・キョダイは小規模のクランだ。ニンジャは今のコーストウインドとオヤブンのストリングベンドのみ! 7

2017-04-20 21:52:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャの魂の音を微かに聞けば、敵のおおまかな居場所がわかる。ここは人口ゼロ地帯……ニンジャがいれば、目立つ……「どこだ……!」『ヤッタ!オイ、アンタ!聞こえるんだな!』ザリザリ。ノイズ交じりの声がニューロンに木霊した。外からの音だ。「誰だ……貴様は」『タキと呼んでくれ!』8

2017-04-20 21:55:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは呻いた。先程、外から流れ込んだ声。「デジタル・オーディンとかいう……」『それだ!それ、オレ!』「なにがオーディンだ、ふざけるな。名前……タキ=サン」『ああそう、その調子!』「何者だ」『アンタこそ何者だ。是非教えてもらいたいもんだ。だけどそれは後回しでいい!』9

2017-04-20 21:58:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは訝しむ。タキはまくしたてた。『急ぎの取引がしたい!』「取引だと?」『シーッ!お前が今居る場所は廃モールだ。店舗「夢のピンクチャン」に入れ。急げ!』ニンジャスレイヤーは瞬時に状況判断し、タキの指示に従った。「イヤーッ!」テナントへ滑り込み、棚を背に息を殺す。10

2017-04-20 22:02:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギャション!ギャションキュイイーン。ギャションキュイイーン!巨大質量が立てる鈍い歩行音と共に、全長10メートルの四脚型大型ロボニンジャがモールの表ゲートから入って来た。複数の走査光を投げながら、両腕のレールガンを構え、ノシノシと瓦礫の上を進んでくる。『あれ、モーターマサシな』11

2017-04-20 22:06:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「モーターマサシ?」『ホラ見ろ、やっぱり知らねえ。アンタ、フラフラとスットロく動いてるから……いや、こっちの話。あれは持ち主不明のまま、ここら一帯で不毛な狩りを続けるAIだ。たとえアンタがニンジャであろうとブッ殺されるぜ。これでオレが信用に足るとわかったろ。アンタ浮浪者?』12

2017-04-20 22:09:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おれがニンジャ?」『まさか図星?まさかだよな』タキは笑い飛ばした。『話進めていいか』「用件を言え」『取引ってのはな……他でもない、オレを救出してほしいワケよ。残念ながら今のオレはニッチもサッチも行かん状況でさ。デッキも無い。椅子に縛られて、処刑時刻を待ってるッてわけで……』13

2017-04-20 22:13:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「取引と言ったな」『その通り!対価がある!一攫千金したいだろう?どうせ汚染地帯で寿命を気にしながらガラクタ漁りする人生なんだろ?脱け出せるぜ。オレなら助けてやれる。あのな、』「誰に捕まった」『重要じゃないさ』「誰だ」『大したヤクザじゃない!』「デビルズカインド・キョダイか」14

2017-04-20 22:15:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『ンー、ンー……』タキが口籠る。だが彼は知る由もない。それこそニンジャスレイヤーにとって値千金の情報なのだ。「いいだろう。案内しろ」そして付け加えた。「ただし相応の代価をもらう」『勿論だ!だが急いでくれ。そこは危険だ。マサシが来る。店の奥の扉の先に進め。地下へ降りられる』 15

2017-04-20 22:20:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

棚と棚の間を進む。ギャションキュイイーン……モーターマサシの足音が遠ざかり、ニンジャ聴力の可聴範囲からも離れた。ニンジャスレイヤーは「関係者専用」とかろうじて読み取れる古い金属扉を開けた。部屋の中央、破壊されたソファの付近の床に円形の闇がある。開け放たれたマンホールの竪穴だ。16

2017-04-20 22:23:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『穴を下りろ。オレはその先にいる。助けてくれ。そしたらアジトにあるものは何でも好きにしていい。金庫の万札、クスリ、権利書、全部好きに!オレがアンタに正しいルートを教えて導く。で、アンタがオレを救出。シンプル』何がシンプルなものか。「そこにニンジャは居るか?」『……一人、居る』17

2017-04-20 22:26:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは沈黙した。タキは違った意味の沈黙に捉えただろう。ニンジャは死と危険の象徴だ。『オイ、リスクを冒せ!じゃなきゃ未来はねえぞ?』彼はまくし立てた。『アンタ実際のニンジャと会った事あるか?噂だけだろ?大丈夫だ!必要以上に恐れるな。だがナメるのもダメ、的確に……』18

2017-04-20 22:30:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

梯子を降り切る。「ガイドしろ。タキ=サン」『勿論。そう遠くない。頼むぜ。もうすぐアンタはカート・コベイン似のハンサム・ハーフ・ガイジン・ガイが椅子に縛られてる場所に辿り着く。それがオレ』「ニンジャは近いか」『近いが、一人は出ていった』「"一人は出ていった"?つまり、計二人?」19

2017-04-20 22:32:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『ア、初めからそのつもり…ごまかしたワケじゃない。カート知ってる?昔の……』タキは話を逸らしにかかる。二人。要はコーストウインドとストリングベンド。前者は既に殺した。「知らない。T字通路だぞ」『左』ひび割れたコンクリート壁。ソウルの音に耳を澄ます。確かにニンジャ存在を感じる。20

2017-04-20 22:37:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そのまま幾度か分岐路を進むに従い、照明はますます乏しく、ニンジャ視力の無いものであれば相当に難儀するであろう状況になった。こんな所にタキは、そこらの浮浪者を無計画に助けに来させようとしていたのか?切羽詰まっておかしくなっているか、薬物が残っておかしくなっているか、どちらかだ。21

2017-04-20 22:40:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『待て!そこで止まれ。右の壁に触れ』ニンジャスレイヤーは従った。手がスリ抜けた。『そうだ。遮光ノレンになってる!』IRC電子音声に実声が重なり、闇の中から聴こえた。遮光ノレンをくぐると、ニンジャスレイヤーは薄明りに照らされた狭い部屋に足を踏み入れていた。男が居た。 22

2017-04-20 22:42:12