【wlw二次創作SS】願望問答【ランプとハシバミ】

アシェンプテルのお悩み相談室bot
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童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

さて、またお話タイムだ。今回はジーンとの出逢い編だな。 ジーンと私には、ある物語上の共通点がある。そう、「願いを叶える道具」だ。彼はそれを最大限に活用し、私は必要最低限しか使わなかった。 これは私と彼の…言うなれば「願望問答」とでも言おうかな?それでは長くなるが始まり始まり…。

2017-04-20 23:26:04
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(例のごとく長いので、嫌ならミュートしてくれ。そして千夜一夜物語だが、残念ながら一夜限りのお話だ。)

2017-04-20 23:27:01
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そいつと出会ったのはワンダーランドではなく、私のシンデレラの世界。私の家にそいつは訪ねてきた。空飛ぶ絨毯に乗って。 「よぉ?アシェンプテルってのはここにいるか?…って何だ。使用人か。メイドさん、ここにお嬢様住んでねえか?」 「ふざけるな!私は使用人じゃない!私がここの主人だ!」

2017-04-20 23:30:10
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「何だ。じゃあアンタがアシェンか。いつでもお姫様のカッコしてるんじゃねえんだな?」 質素な服の私と違い、その男は中々身なりのいい装束を身につけていた。異国のものだが高価なものだということは一目で分かる。 「何だお前。新しいキャストか…?その格好はアラビアンナイト…?」

2017-04-20 23:32:05
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「お、ご明察。俺はジーン。アラジンっていった方が分かりやすいか?アンタの想像通り、マメールって女に誘われて来た新たなキャストだ」 「ほう?アラジンと魔法のランプだな!しかし雪ちゃん以外にまた来るのか。マメールも頑張るな。でも申し訳ない。私は…ゴホッ、体調不良なのだ…」

2017-04-20 23:35:09
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私は都合が悪い事を伝える。だがジーンの方は都合が良さそうに笑う。そして何かを取り出した。 「お?なら丁度いい。これをやるよ!」 「リンゴ…?わあ止めろ!顔に押し付けるな!あ、いい香り…」 よく熟れたリンゴはとても良い香りがした。だがそれと嗅ぐと同時に私の体に異変が起きる。

2017-04-20 23:40:33
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「ん?体の気怠さがなくなった…?」 「このリンゴの香りを嗅げばどんな病も治るんだ。すごいだろ?」 「ま、まさか!千夜一夜物語のアイテムか!?」 「他にも色々あるぞ。伝説のロック鳥が落とした羽根、ヘビ妖精の髪の毛、空飛ぶ木馬、その他諸々!お近付きの印として全部献上したい」

2017-04-20 23:41:58
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「す、すごい…!こんなレア物を貰っていいのか!?」 「これでも本職は商人なんでね。それなりのコネもあるんだよ」 アラジンはスルタンにお近付きになる為、豪華な贈り物を何度も何度も贈ったと言われる。これがその物流作戦。大事な愛娘をやったスルタンの気持ちが今なら分かる…。

2017-04-20 23:46:15
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「へへっ、そんなに喜んでくれたら俺もシンドバッドに頼んだ甲斐があった」 「いやあコーヒーでよければ飲んでいくといい!まあまああがってくれ!」 「おっ、ありがてぇ!(チョロいな…マメール姉さんの言う通りだ…)」 部屋に案内されたジーンはキョロキョロと見回している。

2017-04-20 23:51:13
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「意外に質素なんだな…」 「今となっては一人暮らし…1人と2羽暮らしだからな」 いただいた品はそこらに置いておき、私はコーヒーを入れてくる。 「しかしまた、何でよりによって私になんか会いに来たのだ?皆に挨拶回りでもしてるのか?」 「…一度、アンタとは会ってみたかったんだ」

2017-04-20 23:55:40
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「私に…?」 サンドリヨンは有名だからか初めて来たテイルマスター達に珍しがられる事もあると言っていたが、よりによってマイナーなグリム版の私に…? 「そうだ。ここに来る時、キャストの情報は貰っていたが、アンタの事が特に気になっていた」 気付くとジーンはじっと私の方を見ていた。

2017-04-20 23:57:46
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「アンタ、願いは無いのか?」 「ね、願い…?」 随分と漠然とした質問だ。 「そりゃ色々あるが…。この戦争を終わらせたいとか、好きな人と結ばれたいとか、西村書店のペロー昔話・寓話集が欲しいとか…」 「何で叶えないんだ?アンタが持ってるあのハシバミの木なら、何でも出てくるんだろ?」

2017-04-20 23:59:24
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ハシバミの木。童話「アシェンプテル」に出てくる重要アイテムだ。私の母様は亡くなる直前、墓に木を植えるように言った。言われた通りにハシバミの木を植えると、何でも欲しいものが落ちてくる木になったのだ。 シンデレラにおける名付け親の魔法使いであり、私のドレスや靴もこの木から出している。

2017-04-21 00:03:16
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「何でも願いを叶える道具なら俺も持ってる。俺はこれを活用して巨万の富を得た」 「それが魔法のランプだな」 「あの世界でそんなのは俺だけだった。だが俺は他所の世界にも同じように願いを叶える道具があると知った。三枚のお札、火打ち箱、海の底の石臼、そしてアンタのハシバミの木…」

2017-04-21 00:09:33
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「だがアンタは何かを願うでもない。質素な暮らしをしている。願いに上限や制約があるわけでもないだろう」 「まあな、恐らくお前のランプと同じ事はあの木にも出来ると思う」 「一体何故なんだ?それが純粋に気になって、まあこうして来てみたんだ」 成程、そういう経緯か。

2017-04-21 00:12:13
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「そうだな…。私が願い事を乱用しない理由。それはあの木が母様のものだからだ」 母様は亡くなる前に「困った事があったら」と私に言った。母様はきっとドレスよりももっと凄い物も出せるのだろう。だからこそ、あまり頼りたくないのだ。母様に申し訳ないから。

2017-04-21 00:18:37
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「母親か…。俺にも気持ちは分からないでもない。たしかにお袋絡みなら…俺も遠慮するかもな」 原典のアラジンは昔、道楽息子だった。父はその心労から他界。母親によって育てられた。最初は親とも思ってなかったが、冒険を切っ掛けに心を入れ替え今では母を養っていたはずだ。

2017-04-21 00:18:59
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「だが一番の理由はまた別にある。頼りきってしまったら自分がダメになると思ったからだ」 「自制の為、だったのか…。たしかにアンタ自分に厳しそうだしな。俺には真似できねえや。何でもかんでも叶えちまうからな」 ジーンは諦観の溜息をつく。もしやジーンはそれがコンプレックスなのか?

2017-04-21 00:21:33
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「俺も…アンタみてえに自制してたら、もうちっとマシな性格になってたのかもな…」 「そうでもないぞ。ほら、『貧すれば鈍する』というだろう?私はボロボロになりすぎて随分と擦れた性格になってしまったからな…」 「それでもアンタは強い誇りを持ってる。餓えた狼みてえな強い誇りだ」

2017-04-21 00:24:53
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「人間は満たされ過ぎると不安になるらしいが…お前はその状況なのかもな?」 「なんつーか、このままでいいのかって思ってよ。願いを叶える道具を持っていながらそれを使わないシンデレラと話せば、何か見えてくるかもと思ったんだが…。まあそう簡単にいかないよな…」 彼の悩みは深刻なようだ。

2017-04-21 00:27:52
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「ジーン、たしかに一般論では『何でも願いが叶ったら人間は堕落していく』と人は言う。だがな、『何かしらの助けが無ければ人は幸せになれない』というのもまた事実なんだぞ。私やサンド、シンデレラもそうだ。ウィッチや母様の助けが無ければ私達は幸せの切っ掛けも掴めなかった」

2017-04-21 00:31:18
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「問題は、その切っ掛け…幸運を糧に自分がどう成長するかだと思う。そしてお前は…その魔法のランプを使っても堕落する事なく立派に成長した。…見ろ!これがその証拠だ!」 私が指差したのは、ジーンから沢山貰った千夜一夜物語のお土産だ。 「俺のあげた土産がどうした…?」

2017-04-21 00:34:25
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「お前は商人のコネで手に入れたと言ったな?お前が商人として大成したのは、やはりお前の実力の筈だ」 原典においてアラジンが最初に魔神に願ったのは閉じ込められた洞窟から出る事。そして次に願ったのが「ご馳走を食べる事」だ。彼はその時に出てきた銀の皿を売り捌く事で生計を立てていた。

2017-04-21 00:36:23
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「そうだったな。悪徳商人に安く買われていたのにも気付かず、大安売りしてたっけか」 「でも相場に気付けた。お前に上昇志向が無ければ一生気付かなかったかもしれない。そしてお前はそこから魔神に出して貰った色んなものを売る事で商人として大成していった。そうだったろ?」

2017-04-21 00:40:51
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「たしかに仕入れは魔神頼りだ。だがそれでも小銭稼ぎだけに満足せず、そこから身に付けた商人としてのスキルは紛れもなくお前の能力だ。願いに溺れる事なく有効に活用している」 「これが証拠ってのはそういう意味か…」 これほどのレア物、並大抵の商人では集める事はできないだろう。

2017-04-21 00:45:14