調べれば調べるほど「詳しいですよ」とは言えなくなる

山本弘　『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015

もう20年ぐらい前に、『ガンダム』ファンの友人から聞いた話。 彼の勤め先で上司が「『ガンダム』分かる奴いるか？」て呼びかけたら、どう見てもオタクじゃなさそうな後輩の若い社員が、「おれ、『ガンダム』詳しいっすよ」と名乗りを上げた。

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そのやり取りを横で聞いていた友人曰く、 「俺、“『ガンダム』に詳しい”なんて、怖くてよう言えへん……」

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『ガンダム』についていろいろ調べはじめたら、知らなかった情報が次から次にヒットする。どこまで調べてもキリがない。『ガンダム』についての情報を集めめれば集めるほど、自分が『ガンダム』について実はほとんど何も知らなかったことが分かってくる。

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べつに『ガンダム』に限ったことじゃない。どんな分野でもそうだけど、調べれば調べるほど、逆に「詳しいですよ」とは言えなくなってくる。 「俺、○○には詳しいですよ」と平気で言える奴は、実は○○についてほとんど何も知らない奴なんだと。

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僕もそれは実感する。SFでもアニメでも特撮でも、僕は確かに好きだし、かなり詳しいけど、常に僕よりはるかに詳しい人がどこかにいる。いくらがんばっても、そういう本当に詳しい人たちの足許にも近づけない。

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だからいつも本を書きながら、曖昧な箇所にぶつかるたびに、「これ間違ってんじゃないかなあ」「誰か間違いを指摘してくる人がいるんじゃないかな」とドキドキしてる。

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なんでそんなこと書くかと言うと、先日出した『世にも不思議な怪奇ドラマの世界』の間違いを指摘してきた人がいるんですよ。それもレポート用紙何ページにもわたってびっしりと！　「やっぱりいたあ！　詳しい人いたあ！」と。

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幸い、ほとんどは人名の表記ミスとかスペルミスとか、些細な点だったんだけど、けっこう大きなミスの指摘もいくつか。そのどれも、僕は調べたけどどうしても分からなくて、やむなくぼかしたり省略したりした箇所。そこを正確に突いてきた！　あー、イタタタタ。

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『世にも不思議な物語』の日本での放映リストなんて、図書館に何度も通って朝日新聞と読売新聞の縮刷版を調べまくって作ったんだけど、それでもミスをやらかしててへこむ。

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あと、『新・世にも不思議な物語』の本国での放映データ。これ、IMDBをはじめ、海外のサイトで検索しまくってもひっかからず、かと言ってどんな本に載ってるのかも分からず、やむなく省略した箇所。やっぱり知ってる人がいたのか……。

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他にも僕自身が見つけたミスもいくつかあるんで、増刷分からは修正入れなくちゃいけません。でも、増刷かかるかなあ……？