140ssログ４月

やまたに@極めのネタばれをします @mw_snc

可愛い、と言われた過去を清光は覚えている。平安刀だらけの部隊で、清光は孫のような扱いだった。清光さんは可愛いね。あの大太刀に頭を撫でられたこともある。けれど。君は、本当に可愛いね。獰猛の色を瞳に隠したその言葉は向けられたことがない。可愛いよ、青江。凶暴な、恋の色。（石かり＋清光）

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髪を切るなら、と彼は鋏を取りだした。大丈夫ですか、心配そうな兄に、僕は器用な方だよ、と笑って彼は平野の髪を切っていく。しゃきん、しゃきん。小気味のいい音だ。上手ですね、青江さん。ありがとう、と笑うから。同じように、あの方の髪も切れるといいですね。僕と似た髪型の方。（石かり＋平野）

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万屋に行くとき、秋田は誰かと手を繋ぐ。お前はすぐふらふらとするから、という長兄からの厳命だ。今日握ったのは、同じ桃色の髪のひとで。親子みたいだねぇ。万屋の主人がそう言った。なら、とふたりで顔を見合わせて。旦那様。お父上。お会計ですよー。黒髪のひとを呼ぶ。(薬宗＋秋田)

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我慢しろ。と、青江は平然を装う。隣の御神刀は呑気に茶を飲んでいる。気にするな。念じる。彼の膝には一番小さな短刀が、ぐっすりと眠っていて。珍しい。よく彼の警戒をほどいた。だから、眠らせてやらなくては。そこは僕の場所だよって、言うのはすごく大人げないじゃないか。(石かり＋小夜)

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あ、と止める間もなく長い指に牙が刺さった。ぷつ、と血の玉が浮く。膝丸さん、ごめんなさいっ。虎くんが、虎くんが、と泣く子供を慰めようと手を伸ばしたところで、別の牙に傷口を抉られて。はい、これで虎くんの傷じゃなくなったよ。そういうことじゃないぞ、兄者。(髭膝＋五虎退)

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青江さんのことお願いしますね。笑顔で言われたのは初めの年。まだ青江さんの兄弟は来てないから、脇差繋がりで俺が勝手にお願いしちゃいます。そして、にこにことしていた表情を消して。あなたなら大丈夫と思ってますけど泣かせないでくださいね。そう、彼は友達のために頭を下げた。(石かり＋鯰尾)

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妹が出来たみたいですね。宗三は金色の髪をとく。じゃあ、お姉ちゃんが出来たみたいだね。乱は細い指が三つ編みを作っていくのを待っている。その光景に、薬研は退屈そうに欠伸して。そこの美人姉妹の姉さんや、俺っちのとこにお嫁に来ないか。まだ、だーめ。だそうで、残念でした。(薬宗＋乱)

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この戦いが終わったら、あいつを頼む。長谷部が言われたのはとっくの昔。あの子供が顕現してすぐ。旦那だったら、守れるだろう。話を聞いてやれるだろう。寂しくさせないだろう。生きてるだろう。だから、頼む、と重ねる声を張り飛ばした。お前以外に愛してやれるか、無茶を言うな。(薬宗＋長谷部)

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前田、なにしてる。声は、ぞっとするほど冷たい。あ、あの、お風邪を召されるのではと、外套をひとまず。返す声も固く怯えている。俺の白衣を貸すから、いらん。そう兄弟は白の中に眠る桃色を隠して、それから何事もないように笑う。俺のおひいさんだからな。本当に、なにもないように。(薬宗＋前田)

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薬研と遊んでくるよ。そういうと、石切丸は少しだけ面白くなさそうな顔をして見送る。最近多いね、と拗ねられたこともある。けれども、青江は笑って誤魔化した。素直に、旦那を手伝えるように医学の勉強に来てますって言えばいいだろうに。ことこと、木の根を煮ながら薬研が笑った。(石かり＋薬研)

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国行はやれば出来んのにさ。畑から聞こえた声に、髭切は布団から起き上がる。まずは早起きをさせてはどうだ。弟は赤髪の短刀にそう教えている。くあ、と大欠伸をした。畑もさぼるしさ。この不毛な相談はいつ終わるのか。寝坊したら、畑仕事を代理でしていた弟は相談に乗ってはいけない。(髭膝＋愛染)

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兄者、呼ぶとなあにと振り返る。柔らかな笑顔。甘い声音。それが自分ひとりのためのものだと思って、間違いはないだろう。なぜなら、そう彼を呼ぶのはひとりだけのはずなのだから。（髭膝）

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君があのこの腰越状かい。髭切の言葉に、対する短刀の表情が険しくなる。それは、なかなおりをするきがないということですか。ぼくがつかいでは、きにいりませんか。悔しそうな顔は、何を思い出しているやら。髭切は首を振る。そもそも、些細な喧嘩だ。僕は鎌倉殿と同一ではないんだよ。（髭膝＋今剣）

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もう何百年、だろうか。骨喰が覚えていない時間も合わせれば、宗三との付き合いはひどく長い。その割りに聞くことと言えばほとんど同じで。あなたの弟が。薬研が。あの燃えた刀が。藤四郎さんが。そればかり繰り返す。二度焼けても忘れられない、それはどれほど鮮明な記憶だろうか。(薬宗＋骨喰)

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残される方ばかりが気に病むのだ。安定はそっと宗三の隣に座った。宴会。ぎゃあぎゃあと響く喧騒の中、彼の視線は固定されて。僕の視線も同じで。ねえ、宗三。顔は見ずに話しかける。あいつら、現世を楽しみ過ぎじゃないの。こっちは、また会えなくなるのがいつかと、気にしているのに。(薬宗＋安定)

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写しなんて、と馴染んだそれを口にすれば、膝丸が面白そうに視線を寄越した。そんなに気になるのなら、山伏殿といればいいだろう。彼は、お前の自己を固定する確定的な言葉を持っている。なんだそれは。首を捻る。兄弟、本科を彼はそう呼べない。鎌倉生まれの義経の刀はそう微笑む。(髭膝＋山姥切)

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刀というのは、持ち主のせいかどうも上下関係に厳しい。宗三は話の聞こえない距離に座る弟たちに呆れた。いいんですか。直す方法があれぼ教えてよ。僕も知りたいですね。天下人の刀と源総領の刀にふたりの弟は近寄れない。でも、近寄りたくて焦れてる顔も可愛いよねぇ。わかりかねます。(髭膝＋宗三)

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話に聞いた世界を、陸奥は夢見ていた。話に聞いた短刀を、同じように想像していた。こがん男じゃとは思わんかったき。期待外れか。拗ねる可愛い面すら、彼の口から出なかった。格好よくて格好いい、そがな面しか惚気られんかったんじゃ。許せ、と言うと簡単に頬を染める子供だった。(薬宗＋陸奥)

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こりゃあ、酒が美味くなりそうなふたりだなぁ、と薬研は焼酎を掲げる。月に桜、絶世と傾国か。俺と一緒にしては、宗三が妬くぞ。とぷり、と注がれた酒を三日月は飲む。月を手折りたくは思わんからなぁ。なぁ、と隣に笑いかければ。はいはい、散らして結構ですよ。明け透けに彼は言う。(薬宗＋三日月)

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伽羅、と呼ぶ。ひらひらと手を振って、隙あらば頭を撫でようとしてくる。あんたの猫は別にいるだろう。妬かれるぞ、と告げても石切丸は気にもせず。あの子が妬くなら嬉しいね。その顔、御神刀は清廉潔白だと思ってるあいつに見せてこい。そして俺を巻き込むな。平安刀は話を聞かない。(石かり＋伽羅)

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鳴狐は見ている。庭を並んで歩くふたりを。鳴狐はただ見ている。好きなおかずを交換するふたりを。鳴狐はただ、見守っている。同じ部屋に消えていくふたりを。おふたり共、今日も仲がよろしくてなによりですなぁ。お供が言う。うん、と鳴狐は頷いた。薬研と宗三は今日も一緒にいる。(薬宗＋鳴狐)

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山伏と石切丸が話していると近寄りがたい、と青江が思うのは両者の身なりのせいだ。神職と修験者の会話なんて想像もつかないのだからと。けれども彼は気付かない。紫色の瞳がこちらを見ていること。おいで、と手招きされるその瞬間のひとつ前まで、彼が愛し子について語っていたこと。（石かり＋山伏）

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僕は君たちの辿った道を美しいと評価するよ。歌仙は宗三にそう告げた。嫌な男だ、宗三は顔色を変えずに思う。彼は元の主に似て、何かに執着する嫌いがある。今は、雅さか。特に、悲劇を提供する気はありませんが。本人たちだけが幸せな結末もあるものさ。ああ、嫌な男だ。読まれている。（薬宗＋歌仙）