- yorishirosama
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太陽はひどく傾き、赤ら顔で夕暮れ時の町を照らす。 小さな公園のブランコが揺れている。 そこには顔を伏せ、どこか暗い顔の少女が独り。 『もう……サヤったら、あんな言い方しなくてもいいのに……』 友達との喧嘩だろうか、頬には涙の跡がある。 そんな彼女に、話しかけてくる声が一つ。
2017-05-01 01:21:14「ねぇ、おねーさん」 ちいさな可愛い、女の子。 (知らない子だ、この辺りの子じゃないのかな) そんなことを思いながら、少女は女の子に対応する。 「きみ、どうかしたの?」 「えっとねぇ、あたしと一緒に遊んでっ!」 ぱあっと笑顔になった女の子は、遊んで遊んでと無邪気に繰り返す。
2017-05-01 01:21:58(うーん……まあ、いいかな) (気分転換した方が、いいよね?) この暗い気分を紛らわすにはちょうど良い。 彼女はそう考え、女の子の誘いに乗る事にした。 「うん、いいよ。なにして遊ぼうか?」 「かくれんぼ! かくれんぼがいいな!」
2017-05-01 01:22:31(かくれんぼ……懐かしいなぁ) (昔、みんなと……うん、サヤも、いたっけ) 少し複雑な思いを抱くものの、 それを少女は了承する。 「あ、鬼やる! やりたい! あたし、得意なの!」 「そっか、じゃあ、気合い入れて隠れないとね」
2017-05-01 01:23:06(どこに隠れようかなぁ) 昔はあった大きな遊具たちは影も形もない。 きっと撤去されてしまったのだろう。 少女はため息を吐き、きょろきょろと辺りを見回す。 「あ……」 目に入ったのは、自治会の倉庫。 鍵が壊れている事は皆が知ってる、中に何が入っているという訳でもない。
2017-05-01 01:24:00. 「ちょっとズルいけど……いいよね?」 絶好の隠れ場だ。 少し大人げないが、勝負で手を抜くのは性分に合わない性質らしい。 少女はもういいよ、と声を張ると。 音がしないように、倉庫の扉を閉めた。
2017-05-01 01:24:49とてとてとした足音が聞こえる。 あの子の声は聞こえない。 何も言わず、彼女の居場所を探しているようだ。 とてとて、とてとて、とてとて。 足音が遠くなったり、近くなったり、あちこち探し回っているようだ。 足音が止まる。止まってしまったようだ。 (やりすぎちゃったかな……?)
2017-05-01 01:25:13少女の不安を掻き消すかのように、とてとてとした足音が再開する。 今度はだんだんと、音が大きくなってくる。 こちらに近づいて来ているようだ。 (あ、バレちゃったかな?) とてとて、とてとて、とてとて……。 音は、扉の前で止まる。 「おねーちゃん……」
2017-05-01 01:25:51女の子が、扉に手をかける音。 ざざぁと、扉が開く音。 「み~つけたっ!!」 女の子の明るい声。 (あーあ、見つかっちゃっ……) 「――!?」
2017-05-01 01:26:13――それは、少女の背後に立っていた。 「えっ!? あれ? ええと……?」 「おねーちゃん」 少女は、身体が硬直していることに気づく。 動けない。 (どうして、え? 身体が……!) 「――つ か ま え た」
2017-05-01 01:27:08. 少女の身体がビクンと震え、 その身体の中に"なにか"が入り込んでいく。 (なにこれ、やだ、はいってくる……!) (いや!やめて! 私が、私じゃ、なくなって――) 少女の意識は、暗転した。 .
2017-05-01 01:27:32しばらくすると少女は、ふらりと倉庫から出てきた。 女の子の姿は、欠片も見当たらない。 少女は不意に自分を抱き締めるようにしてうずくまり、全身をさすさすと触り始めた。 まるで、その身体を隅々まで確かめるかのように。
2017-05-01 01:28:00「やったぁ! ニンゲンのからだ だーっ!」 不意に妙な事を口走り、子供の様に無邪気な、満身の笑みを見せる少女。 「はやく、おかあさまのところにもってかなきゃ!」 「きっとほめてくれるよー! えへへ~!」 にこにこと楽しそうにスキップを踏みながら、少女はどこかに行ってしまう。
2017-05-01 01:29:20. 夕日が沈みきり、空にはポツポツと星が滲み始める。 もう、公園には、だれもいない。 動くものなど、なにもない。 ただ、先頃まで少女が座っていた、 ブランコだけがしばらく、ゆらゆらと揺れていたーー .
2017-05-01 01:32:22