ソウカイ・シンジケート #3
◆ニーズヘグは手を翳し、サーチライトの照射に耐えた。鬼瓦の口が開き、ジップラインが吐き出された。そこからクローンヤクザが続々と地上に降下を始める。「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!」ソウカイヤの増援である!最後に一人!ニンジャの影が身を乗り出し、ガーランドを見下ろした。◆
2017-05-09 07:31:19◆「……」ガーランドは彼女をしかめ面で見上げた。彼女もガーランドと同様、ソウカイ・シックスゲイツの一人。ヴァニティという名のニンジャである。ガーランド、ニンジャスレイヤー、ニーズヘグへと視線を走らせたのち、彼女も地上へ身を躍らせた。◆
2017-05-09 07:34:30ヴァニティは流麗に回転着地し、胸をそらしてニーズヘグを見た。やおらアイサツした。「ドーモ。ソウカイ・シンジケート、シックス・ゲイツ。ヴァニティです」「ドーモ。ヴァニティ=サン」ニーズヘグはアイサツに応えた。「ニーズヘグです。ザイバツ・シャドーギルド」 1
2017-05-09 07:41:35「スッゾ!」「スッゾ!」クローンヤクザ達は後退するニーズヘグの退路を塞ぐように包囲展開してゆく。戦闘地域に通りがかる入浴市民に対して「ミセモンジャネッゾコラー!」と威嚇し追い散らす者もいた。「なんじゃ大仰に。追加のニンジャはお前一人か」「……」ヴァニティは肩をすくめた。 2
2017-05-09 07:46:03「で、今どんな状況?ガーランド=サン」ヴァニティが問う。ガーランドは鼻を鳴らした。「見ての通り。ニンジャスレイヤーだ。ザイバツがこいつ目当てにテリトリー侵犯を行っている」「ザイバツのニーズヘグ。笑い飛ばすわけにもいかないようね」彼女はオーカーのニンジャのカラテ充実を見て取った。3
2017-05-09 07:52:25「わしを知るか。チョージョー」「名前はね」ヴァニティは無雑作にカラテを構えた。「教科書的なレベルだけれど」「再三繰り返すが、ここはソウカイ・シンジケートのテリトリーだ。ニンジャスレイヤーの身柄は現在、我々の管理下にある」ガーランドがニーズヘグに言った。「無法にはカラテだ」 4
2017-05-09 08:01:09ニーズヘグはオニめいて笑った。「よかろう!イヤーッ!」「イヤーッ!」ヴァニティが飛び出した!強烈なニーズヘグの回し蹴りを左腕で受け止め、ヴァニティは1メートル後ろに滑った。彼女は微笑し、左手をぶらぶらと振った。「イヤーッ!」殴りつける!KRAAASH! 5
2017-05-09 08:08:05ニーズヘグは思いがけず凄まじい衝撃によって横に跳ね飛び、バイオしだれ柳を蹴り折って受け身をとった。折れたしだれ柳の幹がオンセンに着水した。「イヤーッ!」ガーランドがクナイ・ウィップを繰り出す。ニーズヘグは連続側転で執拗な攻撃を躱し、地面のヘビ・ケンを蹴って掴み取った。 6
2017-05-09 08:11:22「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!」クローンヤクザ部隊が電磁ヤクザドスを構え、フットボール選手めいて殺到する。「イイイヤアアーッ!」ニーズヘグはヘビ・ケンを振り回し、クローンヤクザを殺戮する!「イヤーッ!」ヴァニティが跳躍し、動きを止めたニーズヘグに上から殴りかかる! 7
2017-05-09 08:14:38「スウーッ……フウーッ」ニンジャスレイヤーは眼前のイクサを睨み、ひたすら呼吸を深め、身体を循環する黒炎のコントロールを取り戻そうとつとめた。歪んだメンポが不満げな軋みを立てて、再び形状を戻してゆく。ヴァニティはガーランドに匹敵する強者。二対一はニーズヘグの手に余るか。 8
2017-05-09 08:22:46「イヤーッ!」「グワーッ!」ニーズヘグはヴァニティの拳をスレスレで躱し、脇腹を蹴った。更に回転してクローンヤクザをまとめて薙ぎ倒す!「イヤーッ!」ガーランドは吹き飛んだクローンヤクザの身体を飛び石めいて踏み渡り、斜め上方からムチで襲う。ニーズヘグは大きく跳んで間合いを取った。9
2017-05-09 08:27:14ニンジャスレイヤーの思考は呼吸と共にクリアになり、鋭敏化した意識は時間の流れを泥めいてスローにした。たとえばこの機に乗じて逃走する事も可能だろう。しかしはなからその選択肢は無い。それでは事態が解決せず堂々巡り。サツガイも遠ざかる。彼はラオモト・チバに談判せねばならない。10
2017-05-09 08:31:38ダウンを取られたヴァニティが跳ね起き、ガーランドは打ち合いを経て着地した。ニンジャスレイヤーは屈めた身体のエネルギーを解き放ち、ロケットスタートを切っていた。一瞬後、ニーズヘグに到達した。「イヤーッ!」ヘビ・ケンが肩を切り裂く。ニンジャスレイヤーは懐に潜り込んだ。 11
2017-05-09 08:37:25「イヤーッ!」迎え撃つ断頭チョップを躱しながら、ニンジャスレイヤーは背中を向けて沈み込んだ。その姿勢から強烈な上段回し蹴りを繰り出した。ナムサン……奇しくもそれは攻防一体の回し蹴り、メイアルーア・ジ・コンパッソに酷似したカラテムーヴだった。ニーズヘグの側頭部に踵が入った。12
2017-05-09 08:42:13「グワーッ!」ニーズヘグは石畳に叩きつけられ、破片を飛び散らせた。追い打ちをかけるガーランドをヘビ・ケンで牽制し、彼はなおも起き上がった。ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。ニーズヘグの肩や背中から蒸気めいて立ち昇る0と1のノイズ。虚空から現れ出でた時の様相にも似る。 13
2017-05-09 08:44:15「ハッハハハ!ザンネン・ムネン」ニーズヘグはよろめき、ヘビ・ケンを振り回しながら後退した。「うまくないわい……!一時退却といくか」彼は身を翻した。「ザッケンナコラー!」「イヤーッ!」「グワーッ!」退路に回り込むクローンヤクザを斬り捨てる。「追う」ヴァニティは走り出した。14
2017-05-09 08:48:32「そいつは任せる。ガーランド=サン」走りながら、ヴァニティは振り向かずに言及した。「これは貸し。後で追加の説明をよこしなさい」「よかろう」ガーランドは得物を納め、ニンジャスレイヤーに向き直った。「貴様……チッ」ガーランドは舌打ちした。「俺をここまでイラつかせた奴はおらんぞ」 15
2017-05-09 08:56:42ギャギャギャギャ……クローンヤクザの死体を轢きながらヤクザリムジンが走り込んできた。クロスカタナのエンブレムがある。ドアが開き、運転ヤクザが呼ばわった。「センセイ!」「乗れ」ガーランドはニンジャスレイヤーの肩を憎々しげに突いた。ニンジャスレイヤーは睨み返し、乗り込んだ。16
2017-05-09 08:59:32ヤクザリムジンは大通りに出、しめやかに走行する。ダッシュボードのハンニャ・オメーンが揺れる。車内には殺気が満ち、もし仮に無辜の市民が乗り合わせておれば、即座に失禁して気絶しただろう。座した状態でも二人のニンジャは互いに心の中でイマジナリー・カラテ想定を無限に繰り返していた。 17
2017-05-09 09:05:35