- fbd_forest
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(前回までのあらすじ:俺は片桐。田舎町の風科に住む高1だ。俺達の町の北には人を襲う妖怪共が出る禁忌の森がある。俺は僚勇会って組織で幼馴染達や大人と一緒に奴らと戦っている。勿論油断は禁物だが、基本は慣れたもんで滅多に死傷者はでねぇ。だってのに先週はとんでもねぇ騒ぎだった)
2017-05-09 21:39:15(月曜には新種の妖怪が操るバケグモの大群と戦った。新種自体は珍しくもねぇが妙な特徴を複数持った奴だった。何より大勢の被害者達がどうやって森に連れ込まれたのかが分からなかった。犠牲者も大勢出たし不気味で仕方なかったが、事件は続いた)
2017-05-09 21:48:35(水曜日には町中に姑獲蝶が出て俺のダチとガキ共を攫いやがった。今回は新種じゃ無かったがどうやって森から出てきたのかが分からねぇ上に面倒な能力を身に着けていた。俺も月曜の戦いで倒れたばかりで空中戦をする羽目になった。救出には成功したが本当に訳が分からねぇ…。)
2017-05-09 21:52:54(そんな一週間の最後に、俺達の後輩鳩寺がイギリスから帰ってきた。佐祐里先輩はコイツの力を使って森に調査拠点を立てる計画を立案し、次の土日に実行することになった。急な話だが、この異常事態が続かねぇ保証も無い。確かに拠点を作って腰を据えて調べる必要はあるよな)
2017-05-09 21:58:59(皆が慌ただしく準備に動く中、俺は自分の戦力強化を考えていた。俺がサポート向きなのは分かってるし、そのポジションに不満もねぇ。それでも一人で戦わなきゃならねぇ時の為の力が必要なのは、先週の戦いで痛感した。土曜には間に合わねぇかも知れねぇが、まずは武器を改良することににした)
2017-05-09 22:24:15日曜11時。俺は風科の北西辺りの禁忌の森の手前に来ていた。道路沿いの茂みを抜けてしばらく歩くと俺の目当てが見えてきた。ちょっとした教会か金持ちの屋敷くらいのサイズの二階建てに見える建物で、真ん中に白いドームがある。このドーム部分はプラネタリウムになっている。 1
2017-05-09 22:34:15去年の秋に建ったこの建物は、クレーバーン博士の住居兼研究所でもある。表向きはプラネタリウムということになっていて、実際に俺達の学校や近所の小学校に使わせたりもしてるが、この建物の本丸は地下にある。俺はまだ入ったことがねぇが、聞いた話じゃ少なくとも地下三階まではあるらしい。 2
2017-05-09 22:45:33俺はついさっき僚勇会本部に武器の改良プランを持って訪れたんだが、そうしたら、こっちに行くように言われたんだ。考えてみりゃ日曜で人がいねぇ様だったからな。でも博士も忙しいと思うんだが良いのか。ともかく俺は建物の横合いの入り口を叩き、チャイムを鳴らした。 「こんちはー!」 3
2017-05-09 22:53:52俺が声を掛けると数秒ほどでドアホンから返事があった。 『シャキンとお待ちしていました。ハルカ。今開けますので…一度離れて頂けますか』 いけね。忘れてた。 「悪ぃな」 『いえ』 「あと、名前で呼ぶんじゃねぇ」 『ズバンと分かりました。ハルカ』 「お前な…」 4
2017-05-09 23:06:24俺がたっぷり10メートル以上離れると扉が開き、中からガイアが胸を出した。…いや本人は顔を出したつもりなんだろうが、実際どうしても目が行く。何カップなんだアレ?Z超えてても驚かねぇぞ。 「もう少し近付いても大丈夫ですよ。迎撃判定は5メートルですから」 ガイアが俺を手招きする。 5
2017-05-09 23:19:47「おう。まあ念の為な」 「私は先にシュタッと地下二階へ行きますので20秒ほどしたらお入り下さい」 特注に違いねぇメイド服を着たガイアは軽く頭を下げると、先に中に入っていった。俺は言われた通り、しばらく待ってから俺は円形の小部屋の中に入り、螺旋階段を降りた。 6
2017-05-09 23:34:04階段は、消防士が滑るポールみてえな細い柱に十字模様の足場が付いた飾りっ気のない階段だ。手摺はあるから普通に降りる分には良いが、バリアフリーもへったくれもねぇ。正面玄関にはエレベーターもあるから良いのか?地下二階に着いても階段はまだ下に続いていた。どんだけデカいんだここ。 7
2017-05-09 23:43:32俺が廊下に出ると、ガイアが部屋から上半身の半分だけを出して手を振っていた。 「こちらへどうぞ」 ガイアは別にシャイな訳じゃねえし、俺が特別嫌われてるって訳じゃねぇ…と思う。少なくとも俺が近づけねぇのは別の理由だ。ガイアは俺が近づくと迎撃するように設定されてやがるんだ。 8
2017-05-09 23:53:08ガイアは人間じゃねぇ。自我のあるロボットだ。より正確に言うと「ハイインテリジェントゴーレム」とかいうらしい。僚勇会には戦闘訓練用の低級ゴーレムしかいねぇから、ガイアをゴーレムと認識するのには抵抗があるんだが、そもそも魔術の世界ではロボット全般をゴーレムと呼ぶのが標準らしい。 9
2017-05-10 00:00:58そのガイアを製作したユーリ・クレーバーン博士は、半年前に魔術連合(セフィロト)からの応援要員として派遣されてきたエンジニアだ。ガイアに俺を迎撃するプログラムを仕込んだのもこの人の筈だが、それも好きでやったことじゃねぇ…筈だ。上から要請されてのことだ。 10
2017-05-10 00:04:16迎撃の対象になるのは俺だけだ。「要注意人物」である俺が機密情報の塊であるガイアや博士に近付いちゃいけねぇんだとさ。俺が何かした訳でもねぇのに忌々しい話だ。詳しい理由は言いたくねぇが、ともかく俺は二人の5m以内には近付けねぇ。 11
2017-05-10 00:13:06この自動迎撃は人間で言う深層意識部分が勝手に行うらしい。1度こっそり近寄ったことがあるが、俺がガイアの持っていた辞書をぶつけられたばかりか、無意識に俺から飛び退いたガイアが壁にギャグ漫画みてぇに埋まっちまったことがある。あれは悪ぃことをした。俺も肋にヒビが入ったけどな。 12
2017-05-10 00:15:36流石にこれじゃ共闘に不都合だからってんで、博士が上に掛け合ってくれた結果、今ではガイアのAIが戦闘モードに切り替わった時は、2mまでは近付ける様になった。どっち道迂闊に近付けねぇのは同じだけどな。本当にあのクソ野郎のせいで…いや止めだ止め。考えたくもねぇ。 13
2017-05-10 00:20:01俺が案内されたのは寝室らしい部屋だった。部屋の奥にはデカいシングルベッドがあり…博士はその上で寝ていた。いや寝かされていた。「されて」なんて言ったのは、博士がゴム紐でベッドに拘束されていたからだ。普通は自力でこんな真似は出来ねぇしする意味もねぇ。 「なんだこりゃ」 14
2017-05-10 00:25:26フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 #1「陸の宇宙船」終わり #2「陸の宇宙船②」に続く
2017-05-10 00:26:18