オカルト探偵あきつ丸 -侵食輪廻-

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次のオカルト探偵あきつ丸シリーズです。 今回は尻尾付きについてのお話の諸々をひとつ。 ダークオリエンタルファンタジーな世界観を是非ご堪能くださいませ! 続きを読む
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はじめに

竹村京 @kyou_takemura

久しぶりにおっぱじめるぞー。#不知火に落ち度はない 本編を待つ繋ぎとしてご笑覧あれ

2017-04-30 21:34:23
竹村京 @kyou_takemura

#落ちぬい二次 、はじまります。本作は #不知火に落ち度はない 及び #人造人間あきつ丸 の二次創作であり、オフィシャルではありません。指摘、感想などは #落ちぬい タグにお願いします。

2017-04-30 21:34:37

本編

竹村京 @kyou_takemura

オカルト探偵あきつ丸 -侵食輪廻- #落ちぬい二次

2017-04-30 21:35:19
竹村京 @kyou_takemura

空にいた。 青く澄み渡る、果て無き空であった。 自分は空そのものであったか。 しかし空はそんなことを考えない。空はただ漠として広がっているだけだ。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:36:21
竹村京 @kyou_takemura

己に視線を向けると、黒いものが見えた。翼の先であった。であれば、自分は烏か。 そう思った時、翼が風を切る感覚が生まれた。 ひゅう、ひゅう、と、風が流れてゆく。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:37:48
竹村京 @kyou_takemura

吸い込まれる感覚。 否、墜落の感覚。 我が身が烏であれば、羽撃かねば墜ちる。失念していた。 翼を打ち振る。風を捕らえ、己を押し上げる。 蒼一色だった空にいつの間にか雲があった。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:38:20
竹村京 @kyou_takemura

鱗雲。 それはまるで波のようで。 浪であった。 流れるのは風ではなく水であり、見上げるのは雲ではなく浪であった。 烏が海に落ちたか。 しかし息苦しくもなんともない。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:41:36
竹村京 @kyou_takemura

再び視線を巡らすと黒い翼はなく、滑らかな鰭があった。 小さな鮫であった。 深く、深く、潜って行く。 何かに引かれるようであった。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:42:57
竹村京 @kyou_takemura

青い水面が遠く、暗くなり、水は氷のように冷たくなっていった。 しかしものを見るのに苦労はなく、冷たい水も苦にはならなかった。 やがて見えたのは、灯りか。 茫洋とした灯り。熱のない灯である。 街。というより、砦か。そのようなものであった。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:43:53
竹村京 @kyou_takemura

己はまっすぐ、そこへ向かっていた。 「あれ? お前、何か憑けてるね」 あどけない声であった。 横合いから手が伸びてきて、逃げる間もなく鷲掴みにされていた。 青白く、この深海よりもなお冷たい手であった。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:45:26
竹村京 @kyou_takemura

手。手である。形だけは人のそれと何ら変わらぬ手であった。 冷たい手に縛められ、鮫は逃れることができない。 だがその手の持ち主は鮫を見てはいなかった。 「これ、なんだろ?」 冷たい手の少女は鮫の背鰭の上あたりに青い目を向け、しげしげと何かを見つめている。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:46:55
竹村京 @kyou_takemura

「サウスダコタ様?」 低く落ち着いた女の声。真っ白い肌に大きな帽子のようなものを被った、表情の無い女であった。 「えーっと、キアサージ?だっけ?」 「ヨークタウンです。急がないと女王様のお呼び出しに遅れてしまいます」 「こわー。それはそれとして、これ見てよ」#落ちぬい二次

2017-04-30 21:48:59
竹村京 @kyou_takemura

サウスダコタと呼ばれた少女が、ヨークタウンと名乗った女に鮫を掲げてみせる。 「ダルマザメ……ですか?」 「そっちじゃなくってさ。もしかして見えない?」 「はあ、何かあるのですか?」 「迷子……かな? ほら、こっちにも」#落ちぬい二次

2017-04-30 21:50:24
竹村京 @kyou_takemura

少女の背から何者かが持ち上がる。巨大な海蛇……否、巨大な顎門を持つ尻尾であった。 顎門の間に何かが挟まっている。 薄ぼんやりと光るそれは何であったか。 しかしそれはヨークタウンには見えぬようであった。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:52:09
竹村京 @kyou_takemura

「それは女王様のお呼び出しよりも重要なことなのですか?」 「うーん……重要かもしれないし、どうでもいいかもしれないんだよね」 「では、まず女王様の謁見を賜りましょう」#落ちぬい二次

2017-04-30 21:53:07
竹村京 @kyou_takemura

ヨークタウンがサウスダコタの肩に手を添え、軽く促す。そのかすかな揺れが手を緩ませたか、ダルマザメが身を捩って逃げてゆく。 尾の顎門からも、かすかな光が離れてゆく。 「あーあ、逃げちゃった」 少女は大して惜しくもなさそうに呟いた。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:54:36
竹村京 @kyou_takemura

とある鎮守府の一室。 大分暖かくなっているというのに片付けられていない炬燵に当たっていたあきつ丸が目を開く。 傍から見ればただ居眠りしていただけだが、寝ていたわけではない。これでも行を修めていたのである。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:56:47
竹村京 @kyou_takemura

呪の最も基本的な行である。いわば行者の基本となるイメージトレーニングで、心に神仙境を描き、現実同様に体験するというものだ。#落ちぬい二次

2017-04-30 21:58:51
竹村京 @kyou_takemura

理想を言えば心を肉体から解き放ち、真に神仙境に遊んで孔雀王呪経にその名を記された大仙人から学ぶのであるが、あきつ丸はその域には遠く及ばない。ただ魂を肉体から放ち、尋常の世界を彷徨うのみである。#落ちぬい二次

2017-04-30 22:00:06
竹村京 @kyou_takemura

放っていた魂が空を飛び、意図せず海に没して、小さな鮫と共に深海へと至った。そこであの怪物に捕まった。#落ちぬい二次

2017-04-30 22:01:03
竹村京 @kyou_takemura

あれは尻尾付きと綽名される存在で、軍による正式な識別コードは戦艦レ級という。謎だらけの深海棲艦の中でもとりわけ謎が多く、とびきり強力なものだ。あのまま握り潰されでもしていたら今頃は魂が戻ることなく肉体は死んでいただろう。#落ちぬい二次

2017-04-30 22:03:47
竹村京 @kyou_takemura

だが、それよりも気になるのはあの尻尾に捕まっていたもう一つの魂の方だ。#落ちぬい二次

2017-04-30 22:04:31
竹村京 @kyou_takemura

人の魂であるのは、まず間違いない。しかしそれにしては異様だった。深海棲艦に、というよりもあの戦艦レ級によく似た雰囲気があった。そして、普通であれば単色の魂の輝きのようなものが、何色も不規則に入り混じっていた。#落ちぬい二次

2017-04-30 22:07:14
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