「右翼」「左翼」「右傾化」などの政治分類法の弊害について

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

クリス・エヴァンス氏の「これはLeft（左翼）とRight（右翼）ではなくRight（正）とWrong（誤）の問題なんだ」という言葉は、非常に的確な指摘だと思う。日本国内の諸々の社会的問題に関しても、この指摘が当てはまる。 twitter.com/C4Dbeginner/st…

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クリス・エヴァンスはトランプに噛みつく共和党の一匹狼、マケインへの共感も表明。「批判の声を上げる共和党員を党派を超えて誇りに思う。これはLeft（左翼）とRight（右翼）ではなくRight（正）とWrong（誤）の問題なんだ」と。 twitter.com/ChrisEvans/sta…

2017-02-01 08:03:39

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

2年前のFB書き込み。「左翼」「右翼」という分類は、20世紀末または東西冷戦の終結でほとんど意味を失っていると思うが、皮相的な口げんかのレベルで、特に意味の定義を考えずに使われることが多い。「リベラル」も同様で、日本ではなぜか「リベラル左翼」等、異なる思想の人と混同して語られる。 pic.twitter.com/rqPL2Oyu3u

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山崎 雅弘 @mas__yamazaki

安倍政権や日本会議の政治手法を「右傾化」と呼ぶことには、違和感と抵抗を感じるので、私はその言葉を使わない。「右」「左」という区分自体、もはや意味を失っていると思う。安倍政権や日本会議の政治手法を「右傾化」と呼ぶことは、私を「左翼」呼ばわりする人間に一定の正当性を与えることになる。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

私の望みは、日本国憲法の理念（国民主権、基本的人権の尊重、平和主義）の完成度を緩やかに高めていくような社会であり、急進的な政治体制の変革など望んでいないし、共産主義や社会主義に魅力を感じたことも、それを擁護するような文を書いたこともない。「左翼」と呼ばれる理由など、どこにもない。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

ところが、ネットでは「左翼」とか「左派系」などと意味不明なレッテルを貼られる。その前提にあるのは、安倍政権や日本会議を「右」と捉える認識で、それを批判する側にいるのだから「左」だと意味を深く考えずに腑分けされる。実際には「急進的な政治体制の変革」を実行しているのは安倍政権だろう。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

天皇機関説の「機関」の理解が、憲法学者と一般市民や軍人の間で違っていたのと同様、政治学の文脈を知る人とそうでない人では「右傾化」の理解も異なる。「安倍政権が右傾化、つまり左翼や共産党と逆ってこと？　なら問題ないじゃん」と思う人は、たぶん安倍首相を批判する人間が想像する以上に多い。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

自国の歴史上、最大の損失を国民と国土、社会の全てにもたらした大失敗の構造を直視して、自国が同じことを繰り返さないように努力するという「愛国者」が「右翼」なら、私は「バリバリの右翼」ということになる。自国民が外国軍の存在で不当な苦しみを味わっている時、自国民の側に立つのも「右翼」。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

自国の歴史上、最大の損失を国民と国土、社会の全てにもたらした大失敗の構造を直視せず、当時と同じ価値観や論理を振りかざし、当時と同じ思考の陥穽に人々を落とそうとする人間は、悪意の有無にかかわらず「愛国者」とは正反対の場所に位置する。自滅の構図を繰り返す人間は「愛国者」でありえない。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

軍事オタクや戦史マニアの世界では、昔から「反左翼」の根強い心情が共有されており、私も部分的にその心情を理解できる面もある。安倍政権を単純に「右派」「極右」と呼ぶことで、そんな「反左翼」の人々は半ば自動的に「安倍政権を攻撃するサヨクと戦う側」へと導かれる。そんな効果が生まれている。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

ちなみに、私が原稿で「右翼」「左翼」などの言葉を使う際には原則的に、国粋主義、民族主義、親米反共、共産主義、急進改革派などの「定義」を沿えている。定義なしに「右派は」「左派は」等の言葉を使う文章を見ると、角度をきちんと確かめずに空に向けて物を打ち上げているような不安定さを感じる。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

定義なしに「右派は」「左派は」等の言葉を使う人は、受け手も自分と寸分違わない「言葉の定義」を共有しているとの信頼感があるのかとも思うが、今の社会で飛び交う「右派」「左派」という言葉とその着地点を見る限り、受け手の「右派」「左派」の認識や解釈には大きな幅がある。かなり危なっかしい。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

安倍政権や日本会議の政治手法を「右傾化」と呼ぶ人は、「自分は昔から左翼が嫌いだから」という人を、ムード的な理由だけで「安倍政権を支持する側」に追いやるという弊害もあるとの自覚が必要だろう。批判的な文脈でその言葉を使っているつもりで、逆に批判対象をサポートする効果を生み出している。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

日本会議を含め、安倍首相周辺の人間は、社会のあちこちにいる「左翼嫌い」を味方につけるのが抜群に上手い。指で「左翼嫌いのツボ」を圧されて気持ち良くなり、自分の自由や権利を奪おうとしている政権に同調してしまう。「左翼嫌い」の人は、自分が左翼と見なす人間が集まるデモには行こうとしない。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

私の古い友人にも、特に安倍首相を積極的に支持するわけではない一方で、安倍政権が「左翼」に一泡吹かせている状況に快哉を叫んでいる人が何人かいる。政治を「右翼か左翼か」の二分法で定義してしまうと、彼らは「左翼でない側」につく。「右対左」の対立が構図なら、一般の人は両方から距離を置く。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

今この国で起きているのは、権力者が権力と国費を私物化して公務員を下僕のように使い、権力基盤を強化するために国民監視や権利制限を強めようとする腐敗政治であり、自由や民主主義、立憲主義が失われた国家体制に向かう途中の段階にある。「右対左」や「与党対野党」の政局対決という問題ではない。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

天皇機関説事件の最中、東京帝大の河合栄治郎教授は「長年国体に反しないとされてきた学説（天皇機関説）が、急に『国体に反する』として糾弾されている。これは、今までと違う『国体』概念が出現しているからではないか」との指摘を、帝大新聞に寄稿した。言葉に対する鋭敏な感覚ゆえの見識だと思う。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

時代や政治状況が変われば、同じ言葉であっても意味するところは大きく変わる。「国家神道」も、明治期と昭和初期では、国民生活への支配力や内面への干渉の度合いが大きく違った。政治状況を表す語句としての「右」「左」という言葉は、もう有効性を失ったように思える。むしろ弊害を生み出している。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

安倍政権は、野党第一党も日本最大の労働組合も、内側から乗っ取るような形で無力化することに成功した様子だが、いわゆる右翼勢力についても、内側から乗っ取るような形で無力化したのかもしれない。こんな問題が起きても、右翼団体が全然騒がない。 this.kiji.is/27300553430715…

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

安倍政権より前なら、ロシアが北方領土を自国領として既成事実化する発表を行えば、北方領土返還と白く表記した黒塗りの街宣車が、それを許した政権に抗議するはずだが、なぜか静かにしている。今の日本では、安倍晋三氏の味方をすることが「右翼」「愛国」であるかのような錯覚が既成事実化している。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

日本会議を「右翼」と呼ぶ人は、外形的な運動組織の系譜を踏まえてそう理解しているのだろうが、内面の行動原理は、すでに過去の「右翼」のそれとは大きく異なっている。安倍晋三氏が天皇の意向を公然と踏みにじっても、全然怒らない。北方領土をロシアに譲り渡すような態度をとっても、全然怒らない。