2017年6月5日

【憑依:TS/OD】能力者の使い方_1

おおよそ小説のような何らかの文字列。 続くかもしれない。続かないかもしれない。
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九重七志@憑依特化 @yorishirosama

氷雨森総合学園、今時珍しくもなくなった、"能力者"の為の学校だ。 能力者というのは、「普通の人間が決して持ち得ない"特異な能力"」を持った人間のことだ。最初の事例はおよそ百年前、現在の分布は国内外問わず世界中で……と、そんな事はどうでもいいか。 とにかく。それが、僕の通う学校だ。

2017-05-13 01:27:30
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

能力者といっても様々なものがある。 炎を出したり、傷を癒したり、人の心を読み取ったり、本当に様々だ。 そうかと思えば、中には何の役にもたたないものだってある。 例えば――そう、"僕の能力"とか。

2017-05-13 01:31:04
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「なぁ~、蝉野ー。またあれやって見せろよぉー」 「ありゃあマジで傑作だったぜ、あんな笑える"異能"、たぶん世界でただ一つだぜ?」 そんな風に、クラスメイトにまで散々馬鹿にされる、僕の能力。 それは。

2017-05-13 01:36:13
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「きゃーっ!? 蝉野くん!? 大丈夫!?」 近くにいた女子が、悲鳴をあげて心配そうに駆け寄ってくる。 「だはは、大丈夫、これこいつの能力だから」 「そうそう、"死んだフリ"する能力とか、マジ笑える」 チャラ目のクラスメイト、貫川と力山が馬鹿笑いをする。 畜生、聞こえてんだぞ。

2017-05-13 01:43:34
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

僕の能力。 それは、一時的に自分の身体を仮死状態にして、生命活動を一時的に休止する能力。 言ってみれば、コールドスリープに近い状態だ。長時間そのままでも、解除すれば元通りになるし、長距離移動なんかにも便利だ。 ただ相手からしてみれば、急に倒れて気絶した様にしか見えないのだが。

2017-05-13 01:48:51
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

そんなわけで、僕には早速[異名――コードネームや通り名のようなもの(というかニックネーム)]がついた。 「"オポッサム"の蝉野」 死んだ振りが得意な小動物の名前らしい。 僕が小柄なのもその決め手になったようだ。

2017-05-13 01:54:01
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

こんな異名、いつか絶対返上してやる……! そんな思いを燃やしながら、能力を解除しようとすると、聞き慣れた声が聞こえてきた。 「こらー! アンタたち! 他人の能力を見世物にしてんじゃないわよッ!!」 ああやっぱり、あいつの声だ。

2017-05-13 02:00:13
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「ああ、わりぃわりぃ」 「でも珍しい能力だしなー、やっぱ気になんじゃん」 「珍しいからって珍獣扱いしていいと思ってるの?蝉野の気持ちも考えなさいよ!」 ここで、僕は能力を解除する。 「どうだよ畜生、これがオポッサム様の能力さ。どうだ、羨ましいだろ? 」 僕は、泣き顔だった。

2017-05-13 02:04:58
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「お、おう。すげえ能力だよ、もっと自信もっていいぞ」 「相当レアだよ、だからそんな……その、悪かった」 チャラい二人に慰められる。 僕は必死に涙を堪えて、振り返る。 「というわけなんだ、百花。僕は平気、二人も悪くない、OK?」 幼馴染みの百花は、はぁ~とため息をついた。

2017-05-13 02:13:05
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「アンタがそんなんだからナメられるんでしょうが……もう」 百花は二つ結びにした髪の先をくるくると弄っている。これは照れている時の癖だ。 「悪かったって、これからは気を付けるよ」 「あ、ちょっと待って。アンタ、怪我してるじゃない、ほらそこ」 「え、ああ、本当だ。擦りむいたかな?」

2017-05-13 02:21:09
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「診せて。この位なら、アタシの"ヒーリング・タッチ"で……」 「ああ、大丈夫だよ。この位、放っておいても治るって」 百花は心配性だ。それに優しい。 だから、"触れたものの傷を癒す能力"なんてものが備わったんだろうな、と思う。

2017-05-13 02:27:34
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

能力の発動条件は、相手に触れること。 触れたまま能力を発動ていれば、傷はだんだんと回復していくって寸法。 便利な能力だ、と思う。僕のよりは、遥かに。 でも、こんなふうに些細な怪我でも触ろうとするのは止めて欲しい……実は結構、恥ずかしいし。

2017-05-13 02:31:07
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「……あ、そういえば。三年の御鏡先輩って知ってる?」 「うーん、知らない人だなぁ。その人がどうかしたの?」 「その人から蝉野に伝えてくれって頼まれたんだけど。 『放課後、図書準備室に来て欲しい』って」 「……心当たりはないなぁ。でもまあ、一応行ってみようか」

2017-05-13 02:38:54
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「告白だったらいいね!」 「はっはっは、そんな馬鹿な…………はぁ」 急に気分が暗くなる。 そんな都合の良いことがそうそうあってたまるものか。 「どうせ大したことじゃないって、知らない人に用事なんて。まあ、タカが知れてるだろ?」 「そうかなー……ま、気を付けていって来てね」

2017-05-13 02:44:27
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

チャイムが鳴ること、数度。終業のベルだ。 教室を出て、階段を上る。 図書準備室は五階だ。 そんなに階数があって、昇降機の一つもないというのはあまりにも酷な話だ。やれやれ。 辺りには、人の気配もあまりない。 部活は殆ど部活棟で行われるし、五階から上にクラス教室はない。 静かだ。

2017-05-13 02:50:02
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

図書室の前に辿り着く。今日は閉館日で、扉は閉まっている。 その左手にポツリと、図書準備室と書かれた板がぶら下がっていた。 コンコン。 一応、ノックをする。 「入れ」 中から返事があった。 凛とした響きの声で、どこか耳に残る印象だった。 「失礼します」 扉を開け、中に入る。

2017-05-13 02:55:25
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

中に入ると、見知らぬ女生徒が仁王立ちでこちらを見つめていた。 あれが御鏡先輩だろうか。少し帰りたくなってきた。 「蝉野 司だな?」 「はい、貴女が御鏡先輩ですか?」 ペースを取られると厄介そうだと判断し、即座に質問を切り返す。

2017-05-13 03:04:40
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「……そうだ。君は……うん、えーと……」 ああ、やっぱり。 この人は自分のペースを崩されるとパニックになるタイプらしい。 「僕に、何か用があるのですか?」 「そ、そうだ! っと、こほん。蝉野 司、君は、自分の力に不満を持っているね?」 助け船を出すと、本題に辿り着いたようだ

2017-05-13 03:10:05
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「そんなことはありません、満足していますよ?」 少し意地悪を言ってみる。さぁ、どう出てくる? 「……本当に、そう思っているのか? 私には、そうは見えないな」 「ええ、はい。不満しかありませんよ、こんな能力」 「ええー!」 ペースを与えてなるものか。 掌返しはお手のものさ。

2017-05-13 03:13:57
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「それで、先輩。まさか貴女が、それをどうにか出来る、とでも?」 「……話が早いな。端的に言って、そうだ」 おや、正解。 まさかとは思ったけど、本当にそう出来るのなら少しは期待したいところだ。 「私の力は、"能力の複製"。君の能力をコピーし、その性質を見極めることが出来る」

2017-05-13 03:22:09
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「君の能力、"仮死"だったか。類例からすると、"その先"がある可能性が高い」 「"その先"……?」 「ああ、異能というものの性質上、ただ肉体を仮死状態にするだけ、というのは考えづらい。肉体を仮死状態にした上で、何かを行う性質があるはずだ」

2017-05-13 03:33:31
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

いつの間にか、先輩の話に聞き入っている。 能力が、これだけじゃない。 とても魅力的な話だ。 コピー系の能力には、相手の能力を"奪う"ものもあると聞くが。 どうせもともと、奪われて困るような能力じゃあない。 「――わかりました、お願いします」 「で、だ、つまり――え?」

2017-05-13 03:40:01
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

話始めると止まらないタイプか。 そして人の話が耳に入らなくなるタイプか。 「あ、うん。ほ、本当に良いんだな? 君の能力の全てを知ってしまうぞ? 嫌じゃないのか?」 あたふたと念押しをしてくる先輩は奇妙に可愛らしい。 どちらかと言えば綺麗な顔立ちとスタイルなのに、ミスマッチだ。

2017-05-13 03:44:25
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「もちろん、覚悟の上です」 対能力戦闘で能力情報が漏れるのは命取り……なんて言葉もあるが、今のままではバレた所で何のデメリットもない。 そもそも能力戦なんてやるつもりもないからなぁ、出来る気もしないし。 「――そうか」 御鏡先輩が、真剣な表情になる。 僕は少し、緊張する。

2017-05-13 03:49:36
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「では、蝉野 司……」 先輩の顔が近づく。 接触を発動条件とする能力なのだろうか。 「い、いくぞ!」 先輩の顔が真っ赤になる。 何だ、何が始まるんだ? 「――っ!」 柔らかい感触を、どこかに感じる。 どこに? ああ、口の先だ。 ……口の先? 唇。 唇と、唇。

2017-05-13 03:56:48
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