映画「連合艦隊」新撮の特撮部分はまあまあなのだが、ドラマ部分は東宝戦記ものの中では最も充実

「連合艦隊」の艦船の新撮部分は、円谷時代よりも艦首波などの表現が退化しており、水のコントロールが上手くない。「日本海大海戦」の技術は正しく継承されていない。
2
三一十四四二三 @31104423

「連合艦隊」。前にも書いたが、昔(80年代末)、ボランティアでやっていた独居老人を励ます会で、この「連合艦隊」の上映会を行った。全員戦争経験者だったこともあり、映画への没入感が強すぎて、ついには「辛すぎて心臓が痛い」と訴える人が現れたため、途中で上映を中止した。実際、数人はその後

2017-06-09 08:08:15
三一十四四二三 @31104423

寝込んでしまった。 「地獄の黙示録」の時、コッポラが「映画には革命を起こしたり、人を殺したりする力はない」と語っていたが、革命はともかく老人のメンタルを揺さぶって死に至らしめるぐらいの力はあるのではないか?と思った。 上映を中断したにも関わらず、老人達は「連合艦隊」を見ることが pic.twitter.com/dHTgmaR5L2

2017-06-09 08:12:21
拡大
三一十四四二三 @31104423

できたことを感謝してくれて、体調不良を訴えた人も含めて、また見たい、今度は最後まで見たい、とのリクエストもあった。敬老会ではヌード撮影会などもやっているが、それ以上の反響であった。 「連合艦隊」は新撮の特撮部分はまあまあなのだが、ドラマ部分は東宝戦記ものの中では最も充実しており pic.twitter.com/o6H0UYwVWd

2017-06-09 08:16:30
拡大
三一十四四二三 @31104423

文学の香りさえあった。メロドラマとしても王道的で、泣かせるテクニックが駆使されているので、前半であれだけ心かき乱され、体調不良に陥った老人が、最後まで見たら大変なことになっただろう。上映中断は、正しい選択だった。 その頃の私は、特撮シーンばかり気にして、本編は気にしなかったのだが pic.twitter.com/8LgcG6cM9S

2017-06-09 08:21:12
拡大
三一十四四二三 @31104423

現在この年齢になって見直すと、確かにドラマ部分が堪える。戦争経験の有無に関わらず、ある年齢に達すると、ああしたドラマは身体に直接響くのだ。 「相手あっての戦争なのに日本人の悲劇しか描いてない」とか「あんなに軍人が思慮深かったら、そもそも戦争は起こらない」とか、色々言われた映画だが pic.twitter.com/Sx5aG3N1Dz

2017-06-09 08:27:11
拡大
三一十四四二三 @31104423

そうした思想的な面は、老人には関係ない。様式的な悲劇の構造が、素直に沁みてくるようになる。 81年の封切り時、19歳の私は財津一郎の「第三砲塔火薬庫チュースイ!」という台詞を聞いて「キビシー!」(今で言えば「ピアノ売ってチョーダイ!」)を思い出して笑ってしまったが、今は笑わない。 pic.twitter.com/IokOpTPltk

2017-06-09 08:33:09
拡大
三一十四四二三 @31104423

(続き)麒麟の田村がドラマで兵隊を演じた時「まさに兵隊の顔だ!」と絶賛されたが、「連合艦隊」でデビューした中井貴一も、同じ傾向の顔であったため、実によく作品に馴染んでいた。演技はガチガチ。しかし棒読みの台詞すら、あの顔から発せられると、リアリズムに感じられたから不思議だ。 pic.twitter.com/MZzie3wwOf

2017-06-09 11:16:04
拡大
三一十四四二三 @31104423

(続き)「連合艦隊」の戦艦大和は、巨大な自走式ミニチュアを実際に海に浮かべて撮影する予定だったが、船舶法に引っかかってダメになってしまった。 そういうことは、巨大ミニチュアを作る前によく調べておくべきではないか?と思うのだが。映画の現場というのは大金が動く割に、意外と杜撰である。 pic.twitter.com/ekXYWjmFfI

2017-06-09 11:26:31
拡大
三一十四四二三 @31104423

荒井注がカラオケスナックを作った時、扉を小さく作りすぎたため、肝心のカラオケの機械が店内に搬入できなかった、という話とよく似ていると思う。 しかし、もしミニチュアを外洋に出せたとしても、たかだか13mのサイズである。凪の時を狙っても、波の大きさに負けて、巨大さが表現でき

2017-06-09 11:33:04
三一十四四二三 @31104423

たかどうかは疑問だ。ある程度、波をコントロールできるプールの方がミニチュア艦船には相応しいように思うのだが(そのための大プールだろう)。 円谷英二も「太平洋の翼」で大和のミニチュアを山中湖で撮っているが「湖」を選択しているところに配慮を感じる。しかし透明度が高すぎて、喫水線から下

2017-06-09 11:37:48
三一十四四二三 @31104423

が見えすぎて、あまり使えなかったという(しかし、これは多分「連合艦隊」の大和のシーンにも、一部、流用されていたと思う)。 「連合艦隊」の艦船の新撮部分は、円谷時代よりも艦首波などの表現が退化しており、水のコントロールが上手くない。「日本海大海戦」の技術は正しく継承されていない。

2017-06-09 11:42:52
三一十四四二三 @31104423

大昔に作ったタミヤのウォーターライン大和。セロハンの海に浮かべたジオラマ。波はシェービングフォーム。まだ目がよく見えていた頃だから、細工が細かい。 これは先代の猫が棚から落として大破した。 pic.twitter.com/S7ueju4eao

2017-06-09 14:06:08
拡大
三一十四四二三 @31104423

(続き)戦艦大和を扱った映画は、後に「男たちの大和」があった。「プライベート・ライアン以後」らしい凄惨な戦闘シーンが印象に残っているが、「連合艦隊」に比べると品格の点でかなり劣る感じだった。全体にやや下品で、汚らしい。よく言えば人間的で生々しいわけだが…。 pic.twitter.com/C66HH6c8Vf

2017-06-09 16:49:23
拡大
三一十四四二三 @31104423

「釈迦」「秦・始皇帝」に続く大映の70㎜映画は「戦艦武蔵」が準備されていた。実物大の武蔵をセットで作り70㎜の横長大画面で一望できるように撮影する、という実にそそる企画であったが、70㎜路線自体が「コストの割に旨味が少ない」という理由で消滅。「戦艦武蔵」の企画も立ち消えとなった。 pic.twitter.com/wob4WWKRYr

2017-06-09 17:00:26
拡大
三一十四四二三 @31104423

(続き)「連合艦隊」はサントラも良かった。服部克久の衒いのない音楽が日本人の魂を存分に揺さぶる。しかし、やはり圧巻は谷村新司の「群青」だろう。沈みゆく大和の場面で既に流れ始めるのだが、特攻に赴く中井貴一が、爆発する大和の直上を舞う場面で間奏になり、中井の死ぬほど泣ける独白が入る。 pic.twitter.com/V1vAJXMi7I

2017-06-09 17:37:41
拡大
三一十四四二三 @31104423

大和には中井の父 財津一郎が乗艦しているのだが、その父に向かって 「お父さん 親よりも『ほんの少しだけ 』長く生きていることがせめてもの親孝行です」 って言うんだよ。 これは泣くなと言われても泣く。子供を持ってから見れば、さらに泣く。身体がズタズタになるほど泣かざるを得ない。

2017-06-09 17:45:26
三一十四四二三 @31104423

この中井の台詞は、中盤に特攻を志願した中井に対して父 財津が「親より先に死ぬアホがどこにおる」と親不孝を諌めた言葉の返答だが、一瞬後には中井の命は散ってしまうのだから、こんな悲しく虚しい親孝行はないわけで、松林宗恵はラストに「これぞ戦争の実相ぞ」と訴える。

2017-06-09 18:03:04
三一十四四二三 @31104423

そして中井の特攻機が、霞のように消えていくと、間奏が終わり「群青」の二番が歌われるのだが、ここで「泣かせ」の波状攻撃として、森繁が砂浜に杖で刻んだ、2人の戦死した息子の名前を波が消していくカットが入り、中井の独白に辛うじて耐えた観客の涙腺を決壊させるのだ。

2017-06-09 18:07:58
三一十四四二三 @31104423

谷村の歌、中井の独白、さらに歌、波に消える名前。そして海に舞う雪(ここは歌詞と映像がリンクしている)…と、こうくると劇場は嗚咽と涕泣につつまれ、あたかも巨大な斎場と化すのだが、これを知るのはリアルタイムで見た人だけである。 pic.twitter.com/NyjvuqZIdg

2017-06-09 18:12:55
拡大
三一十四四二三 @31104423

@hirousu47 「連合艦隊」の真珠湾のシーンは「トラ!トラ!トラ!」の映像を拝借してるんですよ。DVDの時は権利が切れて「太平洋の嵐」の特撮に入れ替わってましたが、ブルーレイでまた「トラ!トラ!トラ!」に戻ってます。

2017-06-09 20:47:19
まとめ 「大日本帝国」はまず、そのタイトルを批判されたが、内容はむしろ題名だけで批判する人たちに対して挑発的とも言えるもので.. 「連合艦隊」は、東映の「二百三高地」が さだまさしの「防人の歌」を付けてヒットしたことで、主題歌を谷村新司に依頼した。 さだは「フォーク歌手が戦争映画の歌を歌うとはなんたる事か」と批判されたが、谷村はこれを擁護する立場をとっていたという。 さだは「左翼からは戦争賛美、軍国主義と批判され、右翼からはその反戦厭戦の内容を批判された」と、どのサイドからも批判があったことを明かしている。 谷村は、それを承知で「連合艦隊」に参加したが、同様の批判に加えて商業主義といった罵声も受けたそうだ。映画の内容に関係なく、戦争の映画を作るということ自体に問題があるとされた。 4593 pv 63