不知火に落ち度はない 53(加賀)

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はじめに

※ この話は艦これ二次創作的な何かのネタ帳じみたものです。
独自設定がちらほら混じってるので、適当にご笑覧ください。

今回は一航戦、加賀さんのお話。
彼女がどういう理由で艦娘として働いているのか。その理由を描いてみました。どうぞお楽しみください。

感想はハッシュタグ #落ちぬい か コメントまでいただけますと喜びます。

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

さてさて。落ちぬい久々にはじめるよー。 ただし、今回スポットライトが当たるのは一航戦なのであった。 #落ちぬい

2017-06-10 07:25:02

本編

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

艦娘という言葉が出来た現在において、一つの都市伝説とも言われる話がある。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 07:27:07
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

艦娘は死刑囚を使用した、人体実験により生まれたという話である。 今では根も葉もない噂話と片付けられ、一笑に伏される話。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 07:28:57
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

艦娘と言う言葉自体がまだ世間に馴染んでいない頃──ごく初期の頃には艦娘の間でもその話は半分真実だと言われていた。 その頃艦娘になった者なら、そう思える要素がいくつもあったからだ。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 07:31:56
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

現在においては、現実的ではないと処理される程度の話である。 また、その対象者はごく初期の艦娘──戦艦や空母と言った強力な艦船であるとも言われているが。 少なくとも鷲塚提督の傘下にある、五航戦姉妹はこう言うだろう。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 07:37:52
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「赤城さん達の話だとしたらあり得ません。あの方々は私達の自慢の先輩ですから」 「加賀さんの話してるとしたらぶっ飛ばすわよ? そりゃ人ぐらいフツーに殺してそうな顔してるけど」 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 07:45:38
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

その程度には身内からの信頼厚く、全体から見ても頭一つ抜けて優秀な戦力として数えられる一航戦。 報道などにも数多く顔を出し、今では日本人の大半は彼女らの名前を知っている。 が── #不知火に落ち度はない

2017-06-10 07:50:59
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

欠落がある。 誰もが名前と顔を知る程度の彼女らを。 彼女らの『元』の名前を、誰もが知らない。 それは秘匿情報故、知らぬのも当然と言えたのだが。 それでも消えぬ違和感はそこにあった。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 07:53:35

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

加賀は自身を定義するとき『普通』と答える。 自身はごく当たり前の人生を送り、ごく当たり前の思考のもと、ごく普通に任務に当たっていると言う。 雑踏に紛れれば即座に特徴を失い、一般大衆の中に埋もれて消えるであろうと思っている。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 07:58:12
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

趣味は読書と答える。 趣味のない者が、趣味として書くには最適な単語だからである。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:01:40
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

好きな音楽を問われれば、テレビで流れるCMソングを口ずさむ。 それを聞いた瑞鶴がやけに熱意をもって、洋楽のメタルバンドのCDを押し付けてきたこともあったが、それらをプレイヤーにかけることは一度もなかった。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:05:37
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

服装の趣味に関しても、特に目立ったものはない。 ごくありふれたメーカーの、店頭に並んだ品を適当に選んで休日に身に着ける。 赤城と出かけた際は、彼女の趣味を押し付けられたりもするが、概ね問題ないと思っている。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:10:59
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

珈琲か紅茶、どちらか好きかと問われれば、珈琲と答える。 だが、どちらを選ぶかと問われればどちらでも、と返す。 単に、経歴上珈琲の方を飲み慣れていただけで、深い理由はそこにない。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:16:04
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

それは作戦を選ぶ際においても同じである。 自身が有効な作戦はどちらか、と言えば空母戦力を活かした作戦を口にし。 しかし、どちらを選ぶかと言われれば、どちらでも問題ないと返す。 慣れの差以上のものを感じないからだ。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:18:30
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そんな『普通』の加賀であるが。 彼女の抹消された過去の職業が、看護師であったことを知る者はあまりいない。 知っているとすれば、彼女と『契約』した鷲塚提督、および赤城と──うっかり怪我をしたことのある瑞鶴程度か。 あとは軍上層部の数人であろう。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:21:02
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

看護師を選んだ理由も、大したものではなかった。 命を救うという尊さに触れた、という話もない。 単純に看護学校が通っていた中学のすぐ側にあり、市内に大きな病院がいくつかあったからだ。 近くにあったのが洋裁学校ならアパレルメーカーに行っただろう。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:28:59
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

一応建前上、ナイチンゲールの話に感銘を受けたとは面接で答えた。 裏付けの為に漫画のナイチンゲールの話を読み、さらに小説などで知識をつけていた覚えはある。 成績は上々で、卒業後すぐに近くの大病院に研修に入り、勤務することとなった。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:32:44
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

看護師という職業は、フワフワとした世間のイメージとは異なり激務ではあった。 昼夜を問わずの仕事であり、業務においても生死がすぐ側に佇んでいた。 ただ、彼女は文句ひとつなく働き、面倒な患者の相手もそつなくこなし続けた。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:36:13
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

病院側が彼女に与えた評価は、愛想はあまりないが極めて優秀な看護師。 過酷な勤務形態にも文句ひとつ出すことなく、膨大な数の案件を片付け続けた。 気づけば資格をいくつも手にしており、彼女はガン患者病棟の主任として現場を歩き回るようになっていた。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:41:35
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「どうか、助けて。楽にして」 彼女がそこに就いてから、何万も聞いた言葉である。 その度、彼女は顔に笑顔一つ浮かべるでもなくこう返した。 「今は耐えてください。じき何とかなりますから」 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:44:11
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

それは定型文であり、対話の拒絶であった。 実際その言葉が守られた機会は何回あったか。 最初のうちはそれでどうにかなっても、最終的にはどうにもならない。 医者が匙を投げるとは言うが、投げた匙を拾ってくるのが彼女の役割である。 #不知火に落ち度はない

2017-06-10 08:46:08
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