Erotic Love 〜 case F 〜 芙美香・父と二人の小学生時代

【R18】 Erotic Love 〜 side T / S 〜 からのスピンオフ。 時司家家政婦・澤名芙美香の過去。 続きを読む
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Erotic Love 一覧

 
 

F-1. 母の死

夢乃 @iamdreamers

私が小学四年生の時、母が亡くなりました。 #twnovels

2017-06-13 12:21:14
夢乃 @iamdreamers

梅雨時でした。母はその二年ほど前から癌の通院治療を受けており、時々は短期の入院もしておりましたが、亡くなる前、二ヶ月ほどは入院したままになり、そのまま病院のベッドの上で息を引き取りました。 #twnovels

2017-06-13 12:21:43
夢乃 @iamdreamers

泣き叫びはしなかったものの、母の遺体に取りすがって涙を流していたことを覚えています。隣では父が私の頭に手を載せて、何も言わずにじっと立ち尽くしていました。 #twnovels

2017-06-13 12:22:03
夢乃 @iamdreamers

私の両親は、どちらも親類付き合いの少ない親でした。と言うより、母は孤児でもともと身寄りもおらず、父は、そんな母との結婚を親類縁者から反対され、母と駆け落ち同然でこの土地に来たのだそうで、それ以来、父の両親、私の祖父母ですが、とも連絡を取ることなかったそうです。 #twnovels

2017-06-13 12:23:27
夢乃 @iamdreamers

それでも、母の葬儀には、雨の中にもかかわらず、マンションの住人や母の勤めている会社の方々たち、多くの人がお別れに来てくれました。それに、おじさまと、おじさまの奥様であるおばさまも。おじさまは、父の大学時代からの親友だそうです。 #twnovels

2017-06-13 12:23:58
夢乃 @iamdreamers

父が駆け落ち先にこの土地を選んだのは、近くにおじさまが住んでいたからなのかもしれない、と後に思うようになりました。それが真実か否かはもはや確かめようがありませんが。 おじさまは、母の生前から時折家を訪れておりました。時にはおばさまも連れられて。 #twnovels

2017-06-13 12:24:45
夢乃 @iamdreamers

一人、母の葬儀の準備に大わらわの父の手助けも、おじさまとおばさまは進んで手伝ってくれました。おじさま夫婦がいなかったら、母の葬儀は執り行えなかったかもしれません。少なくとも、より手間取ったことは確かでしょう。 #twnovels

2017-06-13 12:25:26
夢乃 @iamdreamers

母の葬儀が済んだ後三月ほどして、私と父はそれまで住んでいた賃貸マンションから小さなアパートに引っ越しました。父は『お母さんがいなくなってここじゃ広すぎるから、もっと小さい家に引っ越そう』と言っていましたが、実は家賃が重荷となったことを、私は気付いていました。 #twnovels

2017-06-13 12:26:10
夢乃 @iamdreamers

私の両親は、私が物心ついた頃から共働きでした。そして、幼稚園の送り迎えは父の役割でした。食事の支度も、大抵は父がしていたように思います。幼少の頃はあまり考えませんでしたが、私の家の家計を支えていたのは母だったのだと思います。 #twnovels

2017-06-13 12:26:41
夢乃 @iamdreamers

その母が亡くなって、家の収入が激減・・・したかどうかは判りませんが、少なくとも半分以下にはなってしまったことと思います。母と過ごした住処を離れるのは後ろ髪を引かれる思いでしたが、その気持ちは父も同じであることにも気付いていましたので、反対はしませんでした。 #twnovels

2017-06-13 12:28:30
夢乃 @iamdreamers

そらで、私は生まれてからずっと暮らしてきた、住み慣れたマンションを、父と共に出ることになったのです。 4LDKから1DKへと、家は極端に狭くなり、最初のうちこそ不便を感じましたが、半月ほどでその部屋にも慣れました。 #twnovels

2017-06-13 12:29:55
夢乃 @iamdreamers

それでも時々、母のいない生活に悲しみを感じることもありました。それは、父も同じだったと思います。いえ、母と暮らした時間が長い分、その悲しみは父の方が大きかったのかもしれません。 ふと目が覚めた夜、一つの部屋の隣に眠っているはずの父がいないことがありました。 #twnovels

2017-06-13 12:30:22
夢乃 @iamdreamers

父までいなくなる不安に駆られましたが、台所の明かりが灯っているのを見て、ほっとしたものです。けれど、台所との間の引戸の隙間から見える父の顔に暗い光を照り返す涙の跡を認めたとき、悲しいのは自分だけじゃないんだ、と子供心に思ったものです。 #twnovels

2017-06-13 12:30:51

夢乃 @iamdreamers

アパートに引っ越してから、父は仕事の帰りが遅くなるようになりました。昼の仕事だけでは生活費を工面できず、夜も働くようになったのです。それでも、この頃はまだ極端に遅くなるようなことはなく、大抵は私と一緒に遅い夕食を摂れるくらいの時間には帰ってきていました。 #twnovels

2017-06-13 12:31:44
夢乃 @iamdreamers

休みの日には、外食することもありました。そんな時には、おじさまとご一緒することがほとんどでした。おじさまとの食事は、母の生前は月に一度くらいの割合でしたが、この頃はその倍くらいに増えていたように思います。 #twnovels

2017-06-13 12:32:42
夢乃 @iamdreamers

父には友人と言える人が少なかったので、数少ない、気の置けない友人であるおじさまと共に過ごす時間は大切なものだったのだと思います。 以前はおばさまを連れてくることが多かったおじさまですが、母が亡くなってからは一人で会いに来ることが多くなっていました。 #twnovels

2017-06-13 12:33:57
夢乃 @iamdreamers

恐らく、奥様を連れて来ることで父や私に亡き母のことを思い出させてしまうことのないように気を使ってくれていたのだと思います。私はおばさまにもおじさまと同じように好意を抱いておりましたから御一緒でもまったく構わなかったのですが。 #twnovels

2017-06-13 12:34:42
夢乃 @iamdreamers

そんな会食の席で、私は眠ってしまうこともありました。そのような時、父とおじさまは『大人の話』をしていたようです。私にが半分夢の中に入っている時に、二人の会話が切れ切れに聞こえたことがありました。 #twnovels

2017-06-13 12:35:03
夢乃 @iamdreamers

『・・・困っていないのか? いつでも言えよ』 『今は大丈夫さ。・・・いけてる』 『怪しいところに・・・するなよ。そんな時は俺を・・・。格安で貸してやる』 『なん・・・利子取るのかよ』 『当たり前だ。・・・だから、気兼ねなんかするなよ』 『ああ。ありがとう』 #twnovels

2017-06-13 12:35:24
夢乃 @iamdreamers

お金の話をしているようでした。実際、母が亡くなってからというもの、安いアパートに移ったのにも関わらず、父と私の生活はぎりぎりでした。父が遅くまで仕事をするようになって、食料品の買い物も私の役目になっており、自然、私も家計を気にするようになっておりましたから。 #twnovels

2017-06-13 12:36:49
夢乃 @iamdreamers

生活が苦しくなったとはいえ、父が家計に入れてくれる給料は、毎日やり繰りして日々の生活をなんとか賄える程度にはあり、おじさまに限らず、どなたかの支援を受けるほどには困窮してはおりませんでした。少なくとも、当時の私はそう思っておりました。 #twnovels

2017-06-13 12:37:31
夢乃 @iamdreamers

それでも、おじさまの申し出、と言うよりも、おじさまのような友人の存在は父にとって有り難かったのだと思います。追い詰められているわけではない、いざという時には頼れる友がいる、という事実は心の支えになっていたと思います。 #twnovels

2017-06-13 12:37:56
夢乃 @iamdreamers

とは言っても、父がおじさまに頼ったことは、このときからずっと後、ただ一回だけしかありませんでしたが。 #twnovels

2017-06-13 12:38:14
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