@jumping5555 さんの連続ツイート20170617-19

興味深い内容だったのでtogetterしました。
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阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

「朝日新聞」の連載「英語をたどって」は、書き手の刀祢館正明さんの鋭いつっこみが楽しみで愛読していますが、今回は「紙上ディベート」という形で私のコメントもとりあげていただきました。この討論、我ながら、続きが気になります。 pic.twitter.com/x6jm5UzXVX

2017-06-17 00:02:04
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阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

昨日の「朝日新聞」の紙上論争の補足ですが、ポイントとしては、1)大学入試は単なる選抜試験ではなく、受験者に対して「こういう試験を受けるための勉強をしてきてね」というメッセージ。準備のプロセスも大事。「外注」でいいの? asahi.com/articles/DA3S1…(1/4)

2017-06-17 08:16:23
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

2)義務教育および高等教育の英語の勉強は、単に「英語」のスキルをあげるためのものではなく、言語運用能力そのものに目を向け、鍛えるという側面がある。たとえば最近は「訳」はすっかり不人気だが、言葉をわかりやすくいいかえる能力は、言語運用の基礎となる。(2/4)

2017-06-17 08:19:54
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

3)4技能をバランスよく、というのは理念としては正しいが、実際には安易な「オーラル重視」につながってきた。結果、学生の総合的な総合的な英語運用能力がこの10~20年でものすご~く落ちた。悲惨なのは、能力の高い学生のポテンシャルが生かされていないこと。(3/4)

2017-06-17 08:20:38
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

4)……というわけで、いい加減「スピーキング幻想」は捨てて、「英語ができる」とはどういうことか考え直すべきでしょう。そもそも「日本語ができる」という言い方などしない。言葉は実に奥が深いものです。表層的な「スキル」だけで言葉が身につくことはありません。(4/4)

2017-06-17 08:26:34
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

大学入試における「英語4技能評価」の弊害…。(1/16) (先週末のツイートに質問や反応をいただいたので、まとめてみました)

2017-06-19 11:10:24
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

「4技能」という区分そのものはさして新しいものではありませんが、近年の誤った宣伝と受容が弊害を生み、「英語力の向上」「使える英語の推進」どころか、英語学習環境の危機的な荒廃を招くと考えます。その理由を述べます。(2/16)

2017-06-19 11:11:19
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

大学入試への4技能評価の導入は一見合理的な変革に見えますが、諸々問題を含みます。何より、4技能が同一平面にあり、それぞればらばらに習得可能であるような錯覚が生じているのは困りもの。忘れてはいけないのは、4技能には「ヒエラルキー」や「順番」があることです。(3/16)

2017-06-19 11:12:32
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

まず〈writing〉。最も難易度が高い技能ですが、英語学習の究極のターゲットでもある。個人の潜在能力の差がはっきり出てしまう領域です。学習には個別指導が必要。ただ、助走としてhearing, speaking, readingの力を鍛えれば大きな成果が見込めます。(4/16)

2017-06-19 11:20:37
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

次に何かと目の敵にされる〈reading〉ですが、これは読み取るべき重要ポイントを到達目標として明確に示すこともできますし、「読み取れた内容」を教室で「共通の知」としてシェアすることも容易で、学校教育で成果があがりやすい領域です。テスト結果の信頼度も高い。(5/16)

2017-06-19 11:21:51
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

〈reading〉では「個人差」を創造的に転用することも可能です。同じ文章を他の人がどう読んでいるかを知ることで、知的刺激を受けたり、学習への関心を高めたりできる。また文章を読むという行為は、語彙や文法知識の習得とも組み合わせやすいので、学習初期段階では便利です。(6/16)

2017-06-19 11:29:17
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

母国語でも、〈読む力〉の鍛錬による「知の標準化」と「共有」が共同体を安定化させ知的な基盤をかためてきました。誰もが高度な文章を書けるわけではないけれど、多くの人がかなり高度な文章を読みこなせる。誰もが夏目漱石のようには書けないが、漱石を読みこなせる人は多いのです。(7/16)

2017-06-19 11:39:02
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

今の政治システム(=代議制)の基盤になったのも、こうした「読解力の最低保障」でした。これは外国語学習でも当然考慮すべきです。〈reading〉の時間を削って〈writing〉の時間に振り分けるという改変は、間違いなく両方の技能の低下を招きます。(8/16)

2017-06-19 11:55:18
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

〈speaking〉は「能力」よりは「個性」が出る領域です。即興性が高く、技能の不足は「その場」で感じられます。失敗すると心理的な絶望感が強い。比較的社会的地位の高い人が、人前で赤っ恥をかいた(と感じた)場合、政治・行政の場でヒステリックな反応・対応を生みやすいです。(9/16)

2017-06-19 12:07:29
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

〈speaking〉の困難は、「練習」や「慣れ」で多少克服できます。対人的な場では、明朗さや「自信満々」の演出が助けになることもある。ただ、「ノリが大事。文法や単語などの知識は関係ない」というのは初学者が陥りやすい誤解。またテスト結果の信頼度も、やや不安定です。(10/16)

2017-06-19 12:37:40
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

本来、〈speaking〉とは伝える内容や、場への理解があって初めて意味をなす総合的な行為です。〈speaking〉だけを抽象化した練習は難しい。学習段階に応じて知的刺激、関心の発掘、注意の方向づけなど組み込むべき。その土台として読み聴く能力の鍛錬は必須です。(11/16)

2017-06-19 12:45:43
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

最後に〈listening〉。これはあらゆる英語学習の基礎です。習得には地味で長期的な練習が必要。ただ個性や能力の差がもっとも出にくい領域でもある。「練習量」と「経験」でレベルアップするので、生徒にとってはやりがいがあり、モチベーションを高めるには有効な領域です。(12/16)

2017-06-19 13:10:52
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

また言葉は静的ではなく時間の中で「動く」ということを知るには、〈listening〉と語彙や文法知識の習得を結びつけるのが効果的です。従来の英語学習で足りないのはここです。そういう意味では今一番行うべきは〈reading〉と〈listening〉の建設的統合です。(13/16)

2017-06-19 13:12:26
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

上記を考慮すれば、「4技能のバランス」にこだわりすぎるとおかしなことになるのは明白です。英語技能習得の基礎となり、比較的生徒のモチベーションを高めたり成果をあげたりしやすい〈reading〉〈listening〉に早い時期からより多くのリソースを振り分けるべきです。(14/16)

2017-06-19 13:31:40
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

〈writing〉〈speaking〉ももちろん大事ですが、〈reading〉や〈listening〉を削ってそちらに振り分けるのではなく、むしろ〈writing〉や〈speaking〉をより高次の技能ととらえ、生徒をそこまでひっぱりあげるには?という考え方をすべき(15/16)

2017-06-19 13:35:24
阿部公彦 ABE Masahiko @jumping5555

4技能型入試に向けて、学校側は生徒の関心、教室の状況、教員の体制を整備する必要があるし、出題や採点の方法をめぐって共通理解を築く必要があります。どこまでそれができているのでしょうか。「4技能」は魔法の解決策にはなりえません。お手軽なフレーズの一人歩きを危惧します。(16/16)

2017-06-19 14:30:23