ライムジュースは脚気の薬ではない。

ツイッターは勉強になりますね。
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光栄が教えてくれたことbot @bettuakagi

【ライムジュース】 嗜好品じゃなく、脚気の薬として飲む。長い航海で生鮮食品が食べられず、ビタミン不足に陥るのを防止してくれるありがたい品物。ちょくちょく寄港すれば脚気に悩むこともないがそこはそれ。日本は森軍医中将のおかげで海軍が脚気に苦しんだ。そら仲悪くなる。(大航海時代)

2017-06-24 19:23:38
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

「どこから突っ込んでいいか判らない」というのが実際にあるとは思わなかったけれど、今まさにそう思っています。これ、ありとあらゆる部分で間違いがある。よくもツイッターの短い文章でこれほど……(;´ω`)

2017-06-26 15:51:47
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

まず、巷で意外に多い勘違いが西洋の壊血病と日本の脚気を混同している点。大航海時代に猛威を振るった壊血病は、実は日本ではほとんど記録にない。逆に日本の脚気は欧米ではまったく症例がない病(ベリベリ病の報告があるけどあれも植民地の発症例を報告したもの)だった。

2017-06-26 15:58:40
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

ライムジュースが脚気の薬だったというのは、まさにこの勘違いから来た誤りですな。英海軍省のリンドが提唱し英海軍で導入されたライムジュース・麦芽ジュース・ザワークラウトの食事は壊血病対策のもので、しかも現在ではライムジュースはほぼ効果がなかったことが実証されている。

2017-06-26 16:03:22
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

「日本は森軍医中将のおかげで海軍が脚気に苦しんだ」 森林太郎は陸軍の軍医総監であって、なぜ彼のために海軍が脚気に苦しむことになるのか。それを言うなら陸軍だろう。さらに言うなら、陸軍において脚気対策が遅れた点は一概に森だけを責められない事情がある。

2017-06-26 16:11:07
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

ビタミンが未発見だった当時、脚気(ベリベリ病)は世界的に見ても病原菌による感染病説が大勢を占めていた。英国で臨床医学を学んだ高木の研究によって海軍が食事に由来するものとして脚気を克服した例は有名だが、一方「どうして食事によって脚気発症率が変わるのか?」は海軍でも不明だったのです。

2017-06-26 16:19:15
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

つまり当時としては森をはじめとする陸軍の感染病説派のほうが世界的には主流なのであって、海軍の食事由来説は「原因はよく判らんけど食物じゃないか?」程度の異端な説だったのですよ。学論的に見るなら原因も判らないまま洋食統一を強行した海軍のほうがむしろおかしいの。

2017-06-26 16:29:15
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

結局その後のビタミン発見によって海軍の食事由来説が正しかったことが証明されるけど、いうなれば「病気の原因も判らないまま、何に効くかも判らない薬を飲んだら効果があった」というホメオパシーに近い説なのであって、そりゃ陸軍も簡単に受け入れるわけにはいかなかったでしょう。

2017-06-26 16:41:13
Simon_Sin @Simon_Sin

この辺りは「病気には必ず原因となる菌がいるはず」というドイツ観念論に影響を受けた日本陸軍と「よくわかんないけどコレで病気治るならいいんじゃね?」というイギリス経験論の影響を受けた日本海軍の差があるんだとおもう。 twitter.com/aruma_kanjiro/…

2017-06-26 17:05:21
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

まさにまさに。 ちなみに海軍でも、高木の疫学的研究までは感染病説をとっていたりします(海軍へ指導に来た英医が感染病説を推したため)。 twitter.com/Simon_Sin/stat…

2017-06-26 17:11:46
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

これも一応書いておこ。 どうしてライムジュースが効果無かったのか。生の絞りたてライムジュースなら良かったんだけど、冷蔵技術が未発達だった当時、保存性を上げるため濃縮したライムジュースを支給したのです。これがイマイチだった。

2017-06-26 17:38:43
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

当時の濃縮技術は果汁を釜で煮詰めて水分を飛ばす方法しかなく、ところがビタミンCは熱に非常に弱い。熱処理されたライムジュースはビタミンCがほとんど入っておらず、ただ酸っぱいだけのジュースとなってしまったわけです。

2017-06-26 17:40:31
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

ライムジュース・麦汁・ザワークラウトの3種のうち効果があったのはザワークラウトで、キャベツ自体にビタミンCが豊富に含まれている上、乳酸発酵によりさらにビタミンCが生成されるという効果もある。この点を見ると何故日本で壊血病の記録がないのか、その理由も掴めたりする。

2017-06-26 17:50:09
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

冬場の保存食として漬物など乳酸発酵品が古来から多く取りいれられていた日本では、含有量は少ないまでも、それを摂取することで高度なビタミンC不足である壊血病にはぎりぎり至ることは無かった訳です。これが長期無寄港航海をしなかった国情とあわせ日本では壊血病が記録に無い要因となるんですな。

2017-06-26 17:56:46
長 高弘 (獣脚類ティラノサウルス科ズケンティラヌス) @ChouIsamu

たしかに、よくよく考えたら、太平洋戦争が例外なのであって、太平洋戦争開戦までの近代日本では、ず〜っと、「長期航海しなくても行ける場所」でしか戦争(事変その他含む)してなかったんだよなぁ…… twitter.com/aruma_kanjiro/…

2017-06-26 18:34:58
有馬桓次郎 @aruma_kanjiro

日本はある意味幸運で、欧州が大航海時代だったときは日本は戦国時代で長期航海に出る余裕がなく、その後鎖国となって国内航路だけになり、明治維新で開国した時にはすでに世界は動力船の時代となっていて、半年間無寄港なんて航海をついぞ日本人は経験しないまま近代国家となったのですよ。 twitter.com/ChouIsamu/stat…

2017-06-26 18:39:02