出版社に持ち込んだボツ作品が盗作被害に?Web漫画雑誌の編集長が語る、「非合法なのに訴えようがない盗作」のお話

ええ…
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竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

竹熊健太郎(Aタイプ)です。無料Web漫画雑誌「電脳マヴォ」編集長。 宣伝RT多いです。【メルカリ始めました】noteに「竹熊健太郎のメルカリ解説文集」をアップしております。note.com/matenro1960/m/…

mavo.takekuma.jp

竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

ディズニーが「ライオンキング」で手塚の「ジャングル大帝」をパクったとき、手塚プロが訴訟を起こさなかった理由は良く分からないのだが、60年代に米国で「ジャングル大帝」が放送されたとき、CBSに「米国内での著作権込み」で売却していたから、という噂を聞いたことがある。

2017-07-01 13:03:26
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

米国では著作権を売買することは普通に行われているので、「ジャングル大帝」の権利をディズニーが持っている可能性もあり、この辺り当事者に聞かないとハッキリしない。ディズニーは「ライオンキングはジャングル大帝の盗作ではない」と公式に表明している。権利元の手塚プロもこの問題には触れない。

2017-07-01 13:07:58
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

岩明均『寄生獣』が話題になったとき、「ジェームズ・キャメロンが映画化権を買った」というニュースが業界を駆け巡ったことがあった。しかしキャメロンは寄生獣を映画にせず、代わりに『ターミネーター2』で液体金属ロボットT-1000という、露骨に寄生獣を思わせるキャラクターが登場した。 pic.twitter.com/JSsy7KRZKw

2017-07-01 13:14:44
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竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

どうも、後で「盗作」だと言われないために、欧米ではあらかじめネタ元の著作権を買っておくことがあるようなのだ。事前の訴訟対策としてである。

2017-07-01 13:16:36
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

60〜80年代までNYで自主映画を制作していたジャック・スミスという映像作家がいた。今で言うLGBTをテーマにした作家で、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーをテーマにした、明確な物語のないアングラ映画を作っていた。ジャック・スミスは80年代初頭にエイズを発症して死んだが、

2017-07-02 07:34:06
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

彼の映像は天才的センスに満ちており、世間では無名だが映像業界では注目を集めていた作家である。しかし過激な性的イメージに満ちており、物語もほとんどないので彼の作品が普通の映画館にかかることはなかった。晩年に一回だけ来日したことがあり、日本でも一度だけ上映会が行われたことがある。

2017-07-02 07:40:32
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

ジャック・スミスの代表作が倒錯者の性の饗宴を描いた「燃え上がる生物」(写真)。これは60年代に撮影されたが、スミスは死ぬまで再編集を繰り返し、異なるバージョンがたくさんある。さて、このジャック・スミスの映像の才能に目を付けたのが名前を出せば誰もが知っている映画界の某巨匠だった。 pic.twitter.com/C8Qr7NdYww

2017-07-02 07:45:50
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竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

某巨匠は、若い頃は名作を作り、実験的映像美で世界的に有名になったが、晩年はすっかりイマジネーションが枯渇してしまった。そこで、巨匠はスミスが新作を撮ると、彼から作品の権利とフィルムを買い取って、スミスの作品からおいしい映像をパクリ、オリジナルのフィルムを廃棄していたのである。

2017-07-02 07:51:03
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

ジャック・スミスの作品自体は商業性がなかったので、当然のように彼は貧乏だった。発表されている彼の作品は極めて少ないが、実は多くの作品は未発表のまま、某巨匠の「ネタ元」として売却していたのである。映画館で巨匠の新作を見ると、作品のあちこちにスミスの作品からの「合法的盗作」があった。

2017-07-02 07:56:04
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

しかし某巨匠が作品を買ってくれないとスミスは生活ができない。彼は無名のまま死んだが、どういう気持ちだったのだろう。私はこの話を美術家の西岡文彦氏から聞いて、驚愕した。西岡さんは若い頃工作舎で仕事をしていて、工作舎の編集長の松岡正剛はジャック・スミスと対談している。

2017-07-02 08:00:56
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

著作権の売買が当たり前の世界では、「合法的盗作」ということがありうるのだ。巨匠はスミスの作品を「自分の作品でパクること」を条件に著作権込みで買収していたのだから、完全に合法なのだ。ジャック・スミスは晩年、相当に荒れた生活をしていたというが、若死にしたのも分かる気がする。

2017-07-02 08:06:12
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

ジャック・スミスの「燃え上がる生物」より。彼の映画はNYのアンダーグラウンド・シーンで注目を集め、アンディ・ウォーホルの映画に多大な影響を与えた。因みにジャック・スミスの未公開作品を著作権ごと買い取って自作でパクっていた老巨匠とは、フェデリコ・フェリーニである。 pic.twitter.com/M3n4j07jrk

2017-07-02 13:40:50
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竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

上のツイートをした後、僕にこの情報を教えてくれた西岡文彦さんからメールがあり、若干、僕の思い違いがあったようで訂正します。ジャック・スミスがフェリーニに自作を売却したのではなく、間にNYの映像作家のジョナス・メカスが入っていて、

2017-07-03 11:27:38
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

メカスがヨーロッパ映画界の巨匠向けに米国無名アングラ作家の「未公開作品」の極秘上映会を開き、フェリーニだけでなく、ビスコンティにもジャック・スミスの未公開映画を「売却」したようなのです。そのためフェリーニとビスコンティの晩年の作品にはスミスの映画からの「合法的盗作」があります。

2017-07-03 11:30:58
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

この話は、西岡さんと親交があった松岡正剛が、ジャック・スミスにインタビューした際、ふとジョナス・メカスの話題を出したら、いきなりスミスが「あんな酷い奴はいない」と怒り初め、松岡さんに真相を暴露したのだそうです。この話、活字としては残っていません。

2017-07-03 11:34:39
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

契約関係はどうなっているのか、ジャック・スミスもフェリーニもビスコンティも亡くなった今となっては、ジョナス・メカスに話を聞くしかありませんが、たぶんインタビューは拒絶されるでしょう。

2017-07-03 11:38:31
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

ひとつ納得のいく説明があるとすれば、メカスがスミスに「ヨーロッパでお前の作品を売ってやる」と作品の権利を任され、エージェントとして渡欧し、映画会社にプレゼンせず、フェリーニとビスコンティに会い、スミスの作品を二人の巨匠に著作権込みで売却し、両者の映画に使われた可能性です。

2017-07-03 11:52:50
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

フェリーニの作品で言えば、「サテリコン」や「カサノバ」辺りが臭いです。

2017-07-03 12:37:21
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

「合法的盗作」の例を先にツイートしたが、「非合法だが、訴えようがない盗作」の例を私は知っている。仕事柄、学生作品をよく見るが、ある年、凄く面白い少女漫画を描いてきた学生がいた。特にキャラクターが面白かった。まだ電脳マヴォ創刊前で、「これ面白いから持ち込みしたら?」と彼女に勧めた。

2017-07-03 12:44:19
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

彼女は既に某大手少女漫画雑誌に持ち込みをしていて、担当も付いていた。しばらくして「あの作品どうなった?」と彼女に聞いたら、「ボツになりました」とガッカリしていた。それから1年くらいして、彼女が血相を変えて私に報告してきた。手には、彼女が持ち込みをした雑誌の最新号が握られていた。

2017-07-03 12:47:41
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

彼女が指差すページを見たら、なんと、別作家の作品に、彼女が使ったキャラクターと全く同じキャラクターが載っていたので、仰天した。非常に特徴のあるキャラクターで、偶然似るようなレベルではない。犯人は間違いなく担当編集者で、新人の未発表作品をその作家に見せたに違いなかった。

2017-07-03 12:53:33
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

「ひどい。こんなことってあるんですか?」と泣き出す彼女に、私はどう慰めていいか分からなかった。「残酷なことだけど、たまにこういう悪質な編集者やプロ作家がいるんだよ。弟子の作品を盗作する漫画家の話も聞いた事がある。今回は編集者だけど、酷い編集者に当たっちゃったね」

2017-07-03 12:57:27
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

デビュー前作家の作品から盗作というのは、本当に悪質だが、仮に訴えたとしても、公判が維持できるかは非常に難しい。裁判そのものが却下される可能性が高い。何しろ、その作品を見た人間は、作者本人と私、それから雑誌編集者と、パクった作家以外にはいないのだ。こんな話も本当にあるのである。

2017-07-03 13:01:21
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666

それは単にキャラの絵をパクられたというレベルではなく、非常に特殊な特徴を持ったキャラクターがクラスにいて、その特徴を軸に展開するストーリーなので、キャラクターが同じであれば、必然的にストーリーも同じなのである。この場合彼女が先にその作品の同人誌を出していれば防げたかも知れない。

2017-07-03 13:19:33