オープンソース彼女

Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

ゲノム解析が完了し、どこをどうすればどの因子が発現するかわかった未来。 インターネットでヒトゲノムジェネレータが公開され、「彼女の創り方wiki」のカウンタが壊れる。

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「彼女の創り方 Part5540」とか2chのスレが伸び、レベルの高い「彼女」を作り出した住人は錬金術師などと讃えられる。 法規制は追いつかず、試験管から生まれた「彼女」には人権は未だ認められず、失敗作が野に放たれ治安悪化の一因となっていた。

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ときに、ここに一人の失敗作がいる。右脚はなく、左腕は途中から歪な触手の如く枝分かれしている。通りかかるは作業服の中年の男。昨今では珍しくない「彼女」の不法投棄ではあるが、この時彼は何の気まぐれか、彼女を連れて帰ったのだ。

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まともな人の形もしていない「彼女」は言葉さえも発することはない。覚える前に捨てられるからである。便利な教育マシンなど、そんなものは野生化した技術の暴走とも言えるこの界隈に存在するはずもなく、「理想的な彼女」ができたとしても、赤子にものを教えるのと同じく、根気のいる作業であった。

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教育が面倒であるので、赤子のような絶世の美男美女美男子美少女があっさり捨てられるものの、そういった見目の良いものは誰かに拾われ、やがてどこかへ落ち着くのだ。 男が拾ったこの失敗作は、誰にも拾われることなく何処かで野垂れ死ぬ運命にあったはずであった。

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失敗作は男の小脇に抱えられ、抵抗することなく運ばれてゆく。年の頃は十代半ば、捨てられるにしても成長しすぎているので、どこかの錬金術師が量産に失敗したのだろう。数を揃えたり試行回数を増やす場合、ある程度までの成長を自動化するメソッドが確立されていた。

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ヴャクセンから「オープンソース彼女」という命名を頂いた。

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ある程度までの成長の加速は、彼女の創り方において重要な技術である。受精卵から新生児になるまで、そして一般的にそれが「彼女」にふさわしい年齢になるまでを、錬金術師が自然なまま待てるものであろうか。 交際という手段を経ず、製造という手っ取り早い方法に手を出す連中である。

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人工子宮たる容器は試験管からはじまり、大きな硝子瓶、バスタブ、衣装ケース、そしてだいたいドラム缶に行き着く。 普通の錬金術師はバスタブで彼女を創り、量産するほどのめり込んだ錬金術師はドラム缶や特注の硝子製インキュベータを使う。

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即ち人工子宮の大きさが、成長加速の上限である。 バスタブや衣装ケースだと幼子、ドラム缶で10代少年少女、大型インキュベータで成人、というのが一般的である。 ドラム缶の並ぶ家は、ここらでもよく見るようになった。DIYで人間を作る狂気が蔓延している。

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男がこの失敗作を拾ったのは気まぐれである。顔立ちは好みで、躯はそこらで腐敗しているようにさえ見える醜悪な肉塊のような失敗作に比べれば綺麗で、左脚の付け根にある性器は使えそうだった。 つまりは失敗作を生きたオナホールにでもしようと考えていた。

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さて、それができなければどうするか。普通、拾った「彼女」が使えない代物であれば、すぐに捨てられる。 しかし彼は違った。拾ってしまったのであれば最後まで責任を取る、そう考えていた。野良猫を拾ったら最期まで飼う人間である。

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「彼女の飼い方」は「彼女の創り方wiki」内tipsだ。何も知らない彼女に、そして何も知らない飼い主や錬金術師に「彼女」の扱い方を教える。 食事、排泄、風呂、教育、躾など、試行錯誤の結果がここにある。男は現代人らしく、わからないことは素直にgoogleやスレ住民に訊いた。

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彼はスレ住民でなかったため、wikiから飛んできたスレに不躾に質問レスをすると、罵詈雑言と「テンプレを見ろ」とのレスがついた。F&Qで、スレに書き込むルールや、その他おおよそのことがわかった。 まずはテンプレのリンク先、「彼女の飼い方」を熟読した。