三浦英之記者によるアフリカゾウ密猟の現状

朝日新聞アフリカ特派員・三浦英之@miura_hideyuki氏がアフリカゾウ密猟をレポート。象牙目当てで殺されるゾウと、密猟者と命がけで戦うレンジャーたち。この問題には文化を理由に象牙市場を放置し続ける日本も深く関わっている。
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三浦英之 「太陽の子」に新潮ドキュメント賞 @miura_hideyuki

①ケニアのサバンナでまた1頭、大きな牙を持つゾウが密猟者に殺された。象牙の密輸大国・中国は昨年末、2017年中に国内の象牙取引を全面禁止すると宣言したが、ゾウの密猟は止まっていない。陸と空からアフリカゾウの今を報告する(写真はツァボ・トラスト提供) pic.twitter.com/K6Ucw5qioO

2017-07-08 22:27:19
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三浦英之 「太陽の子」に新潮ドキュメント賞 @miura_hideyuki

②午前8時。密猟の多発地帯として知られるケニア南東部のツァボ東国立公園。自動小銃で武装したレンジャー7人とサバンナに踏み込んだ。仲間のレンジャーが密猟者と銃撃戦になった際、真っ先に現場に駆け付ける即応部隊の隊員たちだ pic.twitter.com/hWJOEV9ACj

2017-07-08 22:29:43
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③「危険なので我々より前には出ないで」と隊員が言った。横一列になり、低い姿勢で進む。「足跡がある。東に向かっている」。隊員たちは土の上に残された足跡やたばこの吸い殻などを目印に密猟者が公園内に潜んでいないか調べた。茂みがある場所には銃を向け、安全を確認してから前へと進んだ pic.twitter.com/m9Aq0HiCwp

2017-07-08 22:32:47
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④「ここでは数週間に1度、ゾウの遺体が見つかり、数カ月に1度、密猟者と銃撃戦になる」と隊員は言った。このチームでも3月、2人の死傷者が出た。パトロール中に密猟者と銃撃戦になり、隊長が左肩に被弾。直後に応援に駆け付けた部隊の隊長が心臓を撃ち抜かれて即死した pic.twitter.com/YDus8pejB1

2017-07-08 22:34:57
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⑤「今年に入って同僚がすでに3人も殺されている」と別の隊員は言った。「もちろん怖い。でも密猟が続く限り、パトロールをやめるわけにはいかない。これ以上密猟が続けば、本当にゾウが絶滅してしまう」。象牙をめぐる戦争でアフリカでは今も人間が殺されている pic.twitter.com/QNhMXv9cKi

2017-07-08 22:38:08
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⑥ツァボで暮らしていた大きな牙を持つ巨ゾウ「サタオ2」が密猟者によって殺されたのは今年1月だった。両牙を合わせて計約100キロを超える立派なゾウで研究者や観光客らのシンボル的な存在だった(写真はツァボ・トラスト提供) pic.twitter.com/w2bbIUsmKn

2017-07-08 22:40:14
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三浦英之 「太陽の子」に新潮ドキュメント賞 @miura_hideyuki

⑦同公園では2014年、やはり巨大な牙を持つ人気ゾウ「サタオ」が密猟者によって殺された。顔面をえぐられ、牙を奪われた。サタオ2はサタオにちなんで命名された。世界にはもう巨大な牙を持つゾウは30頭以下しか残っていない(写真はツァボ・トラスト提供) pic.twitter.com/DTve0UAXgl

2017-07-08 22:42:34
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三浦英之 「太陽の子」に新潮ドキュメント賞 @miura_hideyuki

⑧なぜゾウを殺すのか。それは生きるために肉を得るためではない。一部の愚かな人間がゾウの命の一部である象牙を奪い、印鑑や彫り物に加工して所有することで「自己満足」を得るためだ。そのためにゾウは生きたまま顔面を削り取られる pic.twitter.com/8vSpDBXOdu

2017-07-08 22:45:41
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⑨ゾウの激減を受けて国際社会はすべての象牙市場を全面閉鎖する方向へと向かっている。顕著なのは中国だ。昨年12月に「国内の象牙の加工と販売を2017年末までに全面的に禁止する」と発表した。国内の加工業者34社と取引市場143カ所が間もなく閉鎖される方向だ pic.twitter.com/4ZF1FfzDbR

2017-07-08 22:48:43
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⑩一方、日本は未だに象牙に固執している。象牙が判子や三味線のばちの材料として使われており、政府は今後も国内取引を継続する方針だ。恐るべき時代錯誤と国際感覚の欠如。私の愛する祖国はいつから冷笑を受ける国になったのか pic.twitter.com/VSlyBpPVUh

2017-07-08 22:52:44
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三浦英之 「太陽の子」に新潮ドキュメント賞 @miura_hideyuki

⑪最終日、「スーパーカブ」と呼ばれるバイクに翼を付けたような超小型飛行機に乗って空からゾウの群れを追った。大地を蹴って軽やかに離陸すると、眼下には朝日を浴びて金色に輝く広大な草原と、一列になって水辺の方向へと歩いていく十数頭のゾウの群れが見えた pic.twitter.com/UPs4z0FvUs

2017-07-08 22:56:18
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⑫世界はこんなにも美しい。全身でそうつぶやくと操縦席に座ったパイロットが言った。「こんな美しいゾウたちを象牙目的で殺すなんて信じられないよ。象牙をほしがる人間はさ、ゾウが象牙よりも何十倍も美しいことをきっと知らないんだ」 pic.twitter.com/DGMDpQtu99

2017-07-08 23:00:31
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三浦英之 「太陽の子」に新潮ドキュメント賞 @miura_hideyuki

⑬ゾウは人間に似ている。怒りや悲しみを感じ、人間には聞こえない低周波で仲間と会話をしながら社会的な生活を営む。妊娠期間は22カ月。繁殖能力が極めて乏しく、だから子どもを大切にする。子ゾウが産まれるとみんなで鼻を寄せ合って匂いをかぎ、群れ全体で子育てをする pic.twitter.com/br92dlhOAF

2017-07-08 23:02:50
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三浦英之 「太陽の子」に新潮ドキュメント賞 @miura_hideyuki

⑭群れを率いるのは最長老の雌ゾウ。長年の経験から水やえさの場所を熟知している。寿命は約60年。繁殖適齢期が過ぎても生存し続ける動物は人間以外には希だ。それは多分、生殖を終えた後でもその「智恵」を種の存続に求められているから。私は時々こう想う。人間もゾウのように生きられたらと pic.twitter.com/41O4ZCrzGk

2017-07-08 23:05:01
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三浦英之 「太陽の子」に新潮ドキュメント賞 @miura_hideyuki

⑮その日は2時間半、空からゾウの群れを追った。上空からゾウの群れを見つけると、低空に降下して状態を確認する。軽飛行機に窓はなく、冷え切った風が体を冷やした。「一つ、聞いていいか」とパイロットが言った。「日本はいつまで象牙の取引を続けるつもりなんだ?」 pic.twitter.com/g3k68zcJ61

2017-07-08 23:06:40
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三浦英之 「太陽の子」に新潮ドキュメント賞 @miura_hideyuki

⑯アフリカに赴任して成し遂げたいと願ったテーマが二つあった。一つがこのゾウだった。私の小さな情熱はあと少しで途切れてしまうけど、アフリカゾウを救いたい。この雄大な風景を子どもたちに残したい。子ゾウが顔面をえぐり取られて殺されている、それが私たちが暮らしている小さな星の現実だ(終) pic.twitter.com/75ff2FBsOc

2017-07-08 23:10:42
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