烏賀陽弘道氏( @hirougaya )の語る3.11クライシス

"3.11クライシスは、今後、世界の政治や経済の場だけでなく、大学や大学院で、文明史、技術史、工学、あらゆる場面で例として引用される歴史的なシンボルになる。これだけは確信しています。" 烏賀陽弘道氏(@hirougaya)の語る3.11クライシスPart1 Part2はこちら→http://togetter.com/li/114976
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烏賀陽 弘道 @hirougaya

@jasanuma 3.11は日本の「成長信仰」もっと細かくいえば「経済規模拡大神話」の終止符あるいは「終わりの始まり」になると思っています。誰もが「ここまでのリスクを冒して、快適さ、便利さ、効率が本当に必要なのか?」と自問自答せずにはいられない。

2011-03-18 02:39:50
烏賀陽 弘道 @hirougaya

@jasanuma 3.11と「フクシマクライシス」を見た日本人は、「あれを再現されるくらいなら、多少の非効率、不便は我慢してもいい」という選択肢を持ってしまったのです。これは1868年以来の経済成長信仰に対する巨大なオルタナティブウエイ「もうひとつの価値」の出現です。

2011-03-18 02:41:55
烏賀陽 弘道 @hirougaya

@piichan 「あの原発事故のとき、逃げていいのか何なのか、報道はさっぱりわらかなかったね」という「共通理解」ができてしまったことは巨大な現象です。

2011-03-18 02:45:36
烏賀陽 弘道 @hirougaya

@piichan 「記者クラブは情報公開を阻害する」といっても、そんな無形の理念で大衆は動きませんが、「現実世界に有害あるいは役立たず」となると話は変わります。

2011-03-18 02:45:42
烏賀陽 弘道 @hirougaya

@piichan 市民〜権力者という「戦闘正面」と比べると、記者クラブ制度は「疑似統治機構」という「第二戦線」でしかないという宿命があります。常に優先度は低い。これまで、巨大なクライシスが起きても、ほかの課題の陰に隠れて逃げてしまうのが常でした。

2011-03-18 02:47:49
烏賀陽 弘道 @hirougaya

あるいは「原発がひとつ止まってもたいした不便じゃなかった」と思う人たちもいるかもしれない。当否や是非、好悪は別として、日本社会には巨大な「もうひとつの価値集団」が生まれることが予想されます。

2011-03-18 02:51:06
烏賀陽 弘道 @hirougaya

そうした「もうひとつの価値集団」の発生は、当然、政党のあり方を変えるでしょうし、企業の姿を変えます。働き方、生き方など、あらゆるライフスタイルを変えていくと思います。

2011-03-18 02:52:56
烏賀陽 弘道 @hirougaya

これは今までにも「エコロジー」「オーガニック」「ロハス」「スローライフ」など様々なキーワードを与えられていたが、共通の価値シンボルを持たなかった複数の価値集団が、共通の課題、シンボル、スローガンを得たということでもあります。

2011-03-18 02:55:47
烏賀陽 弘道 @hirougaya

なにしろ、毎日これほどのパブリィティと関心、注目、心配(英語でいうとconcern)をヘビィに集めている、という事件はそうそうありません。「戦争」があって「敗戦」があって「反戦」が生まれたような巨大な転換です。

2011-03-18 02:56:57
烏賀陽 弘道 @hirougaya

「戦争」〜「敗戦」が生んだ「反戦」という価値集団はだいたい1945〜1980年ごろまで35年ほどは社会的な影響力を持ち続けています(現在でもあるが、かなり退潮した)。それに匹敵するかもしれません。

2011-03-18 02:58:14
烏賀陽 弘道 @hirougaya

それより視野に入れなければならないのは、日本の原発事故が世界マターになっていることです。放射能問題だけではなく、今後の原発〜エネルギー政策への影響は世界規模を免れません。石油需要にも影響しますし、産油国の経済政治力にも当然影響します。中近東の政治にも影響するでしょう。ドミノです。

2011-03-18 03:01:28
烏賀陽 弘道 @hirougaya

原発の暴走を、日本は一国だけで対処できない、という認識が世界に広まっています(事実ではなく、認識の問題)。そうすると、日本の内政問題であったエネルギー政策、これから「外国の干渉」は増えるものと思われます。

2011-03-18 03:02:53
烏賀陽 弘道 @hirougaya

韓国は財政破綻を経てIMFの援助を受け入れました。これは「経済政策決定権の非自国政府への明け渡し」でした。昔なら「反植民地状態」と言われたことですが、最近はもっとスマートに管理するようになっています。

2011-03-18 03:04:54
烏賀陽 弘道 @hirougaya

韓国ではIMFの援助受け入れは「国家的敗北」のように認識されました。「フクシマ原発」は日本の国家的敗北とも言えると思います。

2011-03-18 03:05:39
烏賀陽 弘道 @hirougaya

なぜなら、戦後日本の信用と自信を担保してきたものは、技術力だったからです。それがよりによって、ウオークマンが壊れたとか自動車が(トヨタがリコールをしたことがそれに近いのですが)故障したとかそういう「カワイイ」次元ではない次元で破綻した。

2011-03-18 03:07:11
烏賀陽 弘道 @hirougaya

「貴国は『高度の技術力と管理能力』に支えられていると信じてきたのだが、貴国の製品や社会的繁栄は、自立していると信用していいのか?ほっといて大丈夫なのか?」という1945〜53年ごろと同じレベルの問いが(言わないかもしれないが)懐疑として認識されることでしょう。

2011-03-18 03:09:23
烏賀陽 弘道 @hirougaya

「貴国の政治制度は、第二次世界大戦という帰結を招いた。困る。なので政治に干渉する」という歴史にやっと終止符を打てたのに。

2011-03-18 03:10:52
烏賀陽 弘道 @hirougaya

同じ文章で言葉だけ入れ替えてみましょう。「(領土的拡張主義の破綻のあと)貴国のX制度は、原発のクライシスという帰結を招いた。困る。なので貴国のYに干渉する」という忌まわしい時代が来るかもしれません。X、Yには何が入るでしょう?

2011-03-18 03:12:49
烏賀陽 弘道 @hirougaya

ここまで書いて気づいたのですが、フクシマ原発クライシスは、「政治(=領土)的拡張による成長主義の破綻」(敗戦)と匹敵する「経済的拡張による成長主義の破綻」なのかもしれません。誰もそう言いたがらないでしょうが「第二敗戦」「もうひとつの成長神話の破綻」なのです。

2011-03-18 03:16:47
烏賀陽 弘道 @hirougaya

不幸なことですが、9.11やイラク戦争、リーマンショックが世界の歴史を書き換えたように「フクシマ」は世界史の教科書に載る。東日本震災、津波より世界史的には大きな事件です。しかも輝かしい歴史ではない。

2011-03-18 03:23:37
烏賀陽 弘道 @hirougaya

こうして「敗戦」や「阪神大震災」とのアナロジー(類推、比較、比喩)で「地震〜津波〜原発事故」というクライシスを論じているのですが、実は、それが妥当ではないかもしれないという思いがあります。この3.11クライシスは、前例がないのです。ですから、いかなる比喩も無力かもしれません。

2011-03-18 03:26:57
烏賀陽 弘道 @hirougaya

そして3.11クライシスは、「歴史から学ぶ」「過去の教訓から解決法を見いだす」ことさえ拒絶するような、そういう空恐ろしささえ感じさせます 。それは、平時に慣れきった私という日本人の未熟な現象なのかもしれません。

2011-03-18 03:28:16
烏賀陽 弘道 @hirougaya

3.11クライシスは、今後、世界の政治や経済の場だけでなく、大学や大学院で、文明史、技術史、工学、あらゆる場面で例として引用される歴史的なシンボルになる。これだけは確信しています。

2011-03-18 03:29:46
烏賀陽 弘道 @hirougaya

個人的にイヤだなあと思うのは、当分、世界のどこに行っても「日本人?ソニー大好きだよ」じゃなくて「日本人?ツナミ大丈夫だった?」「放射能浴びたの?」と言われることですね。笑

2011-03-18 03:31:23
烏賀陽 弘道 @hirougaya

しかも、インターネットという「人間の認識機能の拡張」が発展する中、人間の思考や認識に与える影響が正確に把握されないうちに、世界史的な3.11クライシスが起きてしまった。あまりに未知の変数が多すぎて、その結果が予測しにくいのです。

2011-03-18 03:33:15