映画美学校アクターズ・コース講師陣による公開書簡
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【公開書簡、近藤>山内】アクターズ講師の近藤強です。うまい俳優、いい俳優、難しいですね。そこで山内さんに質問。何がきっかけで俳優の技術に対しての意識が高まったのでしょうか?何か具体的なエピソードがあれば是非教えて下さい。
2017-06-10 20:00:56引き続き、近藤です。僕のきっかけは大学時代の演劇サークルの演出家です。ガツンガツンと笑いを取る先輩を横目に見ながら、段取り芝居すんな、自意識過剰なんだよ、と何度も言われたことがキッカケでした。自分じゃよく分からないけど、体系立てて勉強したら何とかなるかな。で、米国留学でした。
2017-06-10 20:47:50技術を勉強してうまくなったのか? 抽斗は増えたし、迷路で出口を探しやすくなった気はします。でも、結局は自分でどこまで深く潜る欲求/勇気を持てるかという問題に突き当たり、さらに突き詰めると生き様の問題にまでなるのかも?と思うようになりました。つまり、未だに手探りです。(近藤)
2017-06-10 21:14:14【公開書簡、山内>近藤】アクターズ講師の山内です、おお公開書簡!!! ぶっこんできますねー! 俳優の技術への意識が高まったきっかけですね。続
2017-06-11 16:16:4624年前の話。『ソウル市民』を1993年に韓国で上演しました。なぜでしょう24年前の私たちは字幕での上演はまったく考えず、真っすぐに全編韓国語による上演に取り組みました。私は慎二という、冒頭から膨大なハングルの台詞を話し続ける役で、そのハングル上演の初演は私にとって 続
2017-06-11 16:17:31特別なものとなりました。ハングルと日本語は語順が同じなので、イントネーションやニュアンスは、日本語の台詞と同じように話せばいいから、という大方針のもとに、ソウル初日を迎えた私は、その後もほぼ経験する事の無い、舞台の上で膝が勝手に震え続けるという事態を経験しまた。続
2017-06-11 16:17:54台詞は完璧に入っていて、なにやら音がスムーズに自分の口から出ているのですが、劇場は日本人がハングルらしきものを話し始める事態にシンと静まり、それが絶対に自分の言葉ではないことを突きつけられる時間が始まりました。僕は何を喋っているのだろう、続
2017-06-11 16:18:32これは本当に聞く人に意味のある音なのだろうか。やがて何かの瞬間に前列の僕の右手のお客さんが、フフッと僕の台詞に反応した時に、膝の震えはぴたりと止まりました。ああ、聞いててくれたんだと。その時、僕ははっきりと了解したのですね、続
2017-06-11 16:19:13俳優というのは、自分のではない言葉を聞く人に届ける仕事であると。俳優が自分の母語ではない言葉を目の前で喋る時、それを聞く人はどのくらい上手に話せるかを裁く人ではありません。なにやら一所懸命話している人の言葉を聞いてくれる人、聞きたいと願ってくれる人なのだと。続
2017-06-11 16:19:40私たち俳優はこの「願い」無しにはまったく人前に立てないのだと。でもこれは外国語だけのことではないことに、ほどなく思いいたりました。母語であっても、自分とは全く異なる生活経験の、異なる地域の、異なる年代の、つまり全く自分の言葉ではない、劇作家や、役の言葉に 続
2017-06-11 16:20:11なんとか食らいついて話すのがこの仕事なのだと。心の片隅でどこか否定できなかった、演じるとは自分で自分のことをだますってことなんじゃないかという疑念は吹き飛びました。そして上手に喋ることは目標にすらならない。続
2017-06-11 16:20:43腑に落ちたその時から、俳優という仕事が俄然面白く、果てしないものとなったのでした。答えになっているか、心配になってきました。なにも妨げるものなく、うまい俳優になりたい、いい俳優になりたいと思ったのはその時だったと思います。なんともう30歳になってました。遅すぎですねー(山内)
2017-06-11 16:21:28ここに返信でいいのかな。山内さん、お返事ありがとうございます。ありきたりですが、人に歴史あり。質問してみるもんですね。普通、素面でこんな質問しないし、酔ってこの話すると面倒くさそうですしね。近藤
2017-06-11 20:18:38【公開書簡、近藤>山内】講師の近藤が馬鹿な質問して、山内さんが真摯に答えるシリーズ第2弾です。 今まで、共演者にこいつには絶対に敵わない、と感じたことはありますか?悔しいとかじゃなくて、あの土俵では絶対無理、って感じです。 そして、そこからどう這い上がりましたか? (近藤)
2017-06-12 14:21:04アクターズコース講師の近藤です。僕の場合は、2005年にcabula6とやったTraceで共演した俳優Jeremy Xidoでした。彼が演出家も兼ねて共同創作した芝居です。 この創作過程で、キャラクターの世界にに深く潜るんだという彼の意思の強さに圧倒されました。 -続
2017-06-12 14:45:17敗北感というよりも、どうしたら彼のいる場所に行けるか自分では想像も出来なかったんです。悔しさ、無力感、諦め。この時以来、自分の武器は何じゃろと悶々と生きてます。今回、自分でこの質問してみて、この時のトラウマを思い出しちゃいました。今じゃトラウマと仲良しですが。(近藤)
2017-06-12 16:03:01【公開書簡、山内>近藤】アクターズ講師の山内です、あはは近藤くんー、ほんとに打ち合わせ無しでぶっこむなー。むむむ、こいつには絶対に敵わないと感じた共演者、ですね。
2017-06-13 08:02:00これね、そんな躓きの石みたいな事はないんだけど、しょっちゅうですよ、なんか稽古場や現場で一発かまされると、はあー俺には無理ーとなります。老若男女問わずです。で、そっち方向にメンタルが流れると集中力が弱まるので、その場では心の中でなんかスナイパー的な、続
2017-06-13 08:02:09仕留めてやるって闘争心に着火しておきます。そうしないと自分を保てない。あと、劇場で見てて俺無理ーとかしょっちゅうだよ、素晴らしい仕事が溢れてるじゃないですか、先日のQの永山さんとかすごかったし、こないだ見たオフフィスマウンテンでの稲継さんとか、続
2017-06-13 08:02:25四谷怪談の黒岩さんとか、羽衣の深井さんとか、もうみんな、まったく敵う気がしません。共演者だったら打ちひしがれてると思います。はっ、全員女優じゃないか!!!続
2017-06-13 08:02:32年上にあんまり感じたことないかもです、特に若い頃僕は、演劇ってこういうもんでしょ、とか、あの人は演劇がよくわかっている、とか、演劇という制度があらかじめある感じの演劇をものすごく圧に感じたし、とにかくものすごくダサく感じました。続
2017-06-13 08:02:47だからこうしたほうがいいという年上の言葉には、それでできたものが本気で面白いと思ってんの、という反発がどうしても隠せなかった。だからぶつかりました。自分がけっして上手く演じることができているとも思ってもいなかったけど。続
2017-06-13 08:03:06今なら少し見えることがあります。演技に向いている人は、いる。やすやすと演技というものにアクセスできてしまう人は、いる。演技にアクセスっていうのは、作品が乗っかってる世界にひょいっと、あぶなげなく乗っかることができる感じ。僕自身はまったく凡才だと思います。続
2017-06-13 08:03:16天才ですよ。老若男女問わずそういう人は、いる。そういう人が、役や作品世界の探求(近代演劇、かな)や、演劇の方法の発明(現代演劇、かな)に、執念を燃やす修羅の道にはいってしまったら、これはもう敵わないなと。続
2017-06-13 08:03:27一方で、演技に向いているからといって、いい俳優であるとは限らないし、うまい俳優はやはり滅多にいないと感じます。まあジェラシーとかコンプレックスに足を取られないようにメンタル整えてこつこつやるしかないよねー。ああ、またお答えになってないですね。続
2017-06-13 08:03:36