唐代の逸話として「杜陽雑編」などに収録されている、韓志和という日本人(らしからぬ名前だが)の工人の話がある。唐の穆宗に謁見して様々なからくり細工の粋を披露するのだが、その中に「見竜床」なるものが出てくる。
2017-07-14 23:33:56文章を読む限り、なんか踏台かベッドのようなとにかくそんなに大きくないテーブル状のものらしいのだが、その記述は明らかに異様なものだ。きらびやかに装飾された台は遠くから見る限り何の変哲もないが、上に乗ったとたんに足元に今にも動き出しそうな竜が鮮明に現れるというものなのだ
2017-07-14 23:37:02あまりの恐ろしさに穆宗は見竜床を下げさせた。韓志和はあまりの腕前のために皇帝の不興を買ってしまったのである。そのままでは命も危うかったが、水銀顔料で彩色した、とされる蠅虎子という蜘蛛の集団を箱から取り出し、さながら蚤のサーカスのごとく操って芸をさせ、面目を取り戻した――
2017-07-14 23:41:49さて諸兄らよ。蠅虎子が果たしてこれもゼンマイ的なものを使ったからくりだったかどうかも興味深いところなのだが、それよりも見竜床であるのだ、問題は。 これによく似たものに覚えがないであろうか? そう、裸眼による立体視効果を起こすアートワーク。すなわちステレオグラムである……
2017-07-14 23:44:13立体写真や立体図形、両目で見ることによって立体感をもって見ることの可能な画像というやつはかなり以前から存在してる。だがその場合は視差分だけ角度を変えて描かれたごく単純な図形だった。それが二つ並んだものである。昨今のステレオグラムのように、判然としない模様を見てるうちに
2017-07-14 23:46:36意味のある図形なりイメージなりが浮かび上がる形式のものは、コンピューターによる画像処理が発達した今日だからこそ可能なのだろうと思う。 だが、見竜床である。
2017-07-14 23:47:57穆宗は812年の即位。9世紀の人物である(ばいめたより60年くらい前)。 こんな時期に、果たしてそのようなものが作れたのだろうか? 可能性がないわけではない。偶然の経験などによって、裸眼立体視の概念を得ることは、あながち不可能ではないはずだ。東京でお世話になった漫画家の先生も、
2017-07-14 23:50:44だが、それを意図的に細工物に盛り込み、はた目にはそれとわからないように配置したステレオグラムを作りえたとしたならば……やはり恐るべき天才が研鑽を摘んだ結果、としか言いようがないし、もしそうだとすれば畏敬の念を覚えざるを得ない
2017-07-14 23:54:45ここまでの話は全くのところ、連想に基づく推測でしかない。推測でしかないのだが……そんなわけで韓志和の話はいつか何らかの形で創作に組み込んでみたいネタではある。どっかのTVで見竜床の再現実験とかやってくれないものか。 ドラマの1エピソードとかでも面白い。俺はそれを観るぞ。
2017-07-14 23:57:54@seabuki ステレオグラムでなくても、錯視を利用してビックリさせる仕掛けの可能性は高いですね。 私は「杜陽雑編」から引用した文章しか確認できないので、なかなかもどかしいです。
2017-07-14 23:55:11