【ミリマスSS】アンナの日記　#2-3

創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ) @chou_tan_

(これまでのあらすじ：ギルド対抗戦に挑むvivid_rabbit(望月杏奈)とlilyknight(七尾百合子)。相手ギルドは猛攻を仕掛けてくる。ギルマス死亡の報を受け、味方基地の援護に向かおうとしたlilyknightは、モンスター使いの男GILに行く手を阻まれてしまう)

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(惨状を引き起こしたのは恐らくガンナーのライアだ。彼はlilyknight達を裏切り、敵を手引きした。彼の真の狙いとは？敵ギルマスMADSの実力は？また、vivid_rabbitに対し異様な感情を示すメンドスの思惑は？未来のアイドル達を巻き込んだ戦いは混乱を極めていく！)

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【アンナの日記】　#2「微かな灯火(ともしび)」-3

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空を見上げた。遠くの空に、雨を切り裂くように、赤い狼煙が打ち上がっていた。私はそれを見たことがある。GILが最初攻めてきたときに打ち上がっていた狼煙と同じ色だ。あの方角は……「うちの拠点のあたりだな」キュイイイイイイイイイ！！！甲高い音が周囲に鳴り響く！「クソッ何だ！」　01

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ナリコ・スナード・ネットに何かが引っかかった音だ。しかもその音はとてつもなく近くで鳴った！「見つけたぞメンドス」林の奥で何者かが嘲笑った。水たまりの泥を跳ねさせ両手を広げ現れたのは……GIL！　単身だ！「あの狼煙は作戦開始の合図だ。ブッコロシ大作戦のなァ！」　02

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「ネーミングセンス壊滅的だな」メンドスさんは鎖鎌を構える。私も風の剣を構えた！「壊滅的なのはてめェらだ」GILは勝気に言う。「俺とMADSが塵一つ残さず消し去ってやるよォー！」「そういうセリフが雑魚っぽいんだお前」メンドスさんは砥液を垂らす。鎖鎌が泡を立て空を裂いた！　03

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鎖鎌は見る見るうちに巨大化する！「デスサイズ《オーバー》」巨大鎖鎌で自分の胸を切り裂く！　血が溢れ、身体に張り付いて悪夢のように渦巻き、紫色の鎧を構築する！「気色悪い術だなァオイ」「バケモンをペットにして喜んでるお前に言われたかねぇな」紫のヘルムがメンドスさんの頭を覆った。　04

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「メンドスさん、私」「行け」メンドスさんは巨大鎖鎌を軽々と回す。その軌道が紫色に染まる。GILは低く笑っている。「俺は一人で勝てる。お前らは一人じゃ勝てない。合流しろ」「でも」「優先順位を考えろ。こいつは俺が引き付ける」「ハ！」GILは大仰に笑った。「口だけは達者だなァ！」　05

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メンドスさんが巨大鎖鎌を構える！　ギシギシと木々が唸り、黒い雷光が巨大鎖鎌から放出される！「デスグロック！」巨大鎖鎌を振り抜く！　雷光がGILを貫く！「ハハァーッ……」GILは無傷！「lilyknight、行け！」メンドスさんはGILを睨みつけたまま叫ぶ！「足手まといだ！」　06

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私は風の剣を構えた。「『風神招来九二ノ段』……荒れ狂う風よ私を導け」風が私の体を包む。私は浮き上がる。GILは私を見上げ満足げに頷いた。「風使い。逃げるか。いい判断だ」私は何も返さない。今は、拠点の防衛が最優先だ。メンドスさんならきっと大丈夫。一度GILを倒してるんだから。　07

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ただ、GILの余裕の笑みが、気にかかる。一度負けた相手に対してなんでそんなに余裕があるんだろうか。「何してる！　行け！」メンドスさんが怒鳴った。私は風を操り、GILとメンドスさんから離れようとする。拠点の方向からはまだ狼煙が上がっている。私は飛翔する！　……しかし、その時！　08

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「うああっ！？」私の肩口が裂け、血が噴き出した！　私は制御を失い、地面に墜落する！「ハハハハ！」GILが嘲笑う！「お前の仕業か」「そうだ。我が能力をもってすれば、飛び回るハエ一匹叩き落とすくらい簡単なことだ」私は上空に目を凝らす。何もいない。どうやって攻撃を？「ハハハハ！」　09

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「鳥は鳥籠から出ることはない」GILは静かに言った。「ここが貴様らの墓場だ」「手垢のついたセリフばっかり吐きやがって」メンドスさんは再び巨大鎖鎌を構える。「理屈は知らんがお前を殺せば全て解決だろ。lilyknight、伏せてろ」メンドスさんは上半身を捻った。私は咄嗟に屈む！　10

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「『デスエンゲージ』！」メンドスさんは巨大鎖鎌を振り抜いた。メンドスさんを中心とした黒い円が、私の頭すれすれを切り裂いた。「何ッ」GILが素早くジャンプする。足元を円が切り裂き、その背後の木々も全て切り倒す。周囲30mほどの木が全て切り倒された。「これでシンプルになったな」　11

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木々が切り倒されて視界が開け、同時に、周囲には、さっきまで見えなかったものの姿が明確に浮かび上がっていた。私達の周囲を、四体のオカマガエルが取り囲んでいたのだ。オカマガエルは透明化能力を有しているが、メンドスさんの攻撃が当たったことで、一時的に見えるようになったんだろう。　12

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オカマガエルは巨大な水棲モンスターだ。体長三メートルほど、体の表面にはイボのような黒い斑点、舌が鎌状になっていて、それでモンスターを殺して食う。透明化能力を有しており、このデカレモン水没林の生態系のかなり上にいるモンスターだ。ベムランサーほどではないが防御力も高い。　13

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「なるほど」私はそう呟いた。オカマガエルがいたなら、さっきの『見えない攻撃』も合点がいく。透明化したオカマガエルが、舌で私を切り裂いたのだ。「さっき俺の攻撃を防げたのも、オカマガエルの舌のおかげか」メンドスさんも合点がいったようだった。「……そうだ」GILは頷いた。　14

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「だが、それが理解できたところで、貴様らに勝ち目はない」パチン！　GILが指を鳴らす。オカマガエル達は一斉に消えた。「メンドいな……しかし……」メンドスさんは呆れたようにため息をついた。「俺に『鎌』で対応するのはセンスがないと思うが」「最終的に殺せればいい」「それは同感だ」　15

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「メンドスさん。オカマガエルは私が倒します」私は風の剣を構え直す。「私だって『鎌』を使えますから」「風使いが鎌なんか使えるものか！」GILが嘲る。「見えない攻撃を躱すこともできないだろう！」私は目を閉じ、風の剣を横一文字に構える。「『風神招来一ノ段』、『風見鶏』」　16

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風の剣を包んでいた風が霧散する。私の網膜に、白い軌跡が浮かび上がる。軌跡は、白竜のように飛び回り、「見えないもの」の形を浮き彫りにする。私の周囲にある全てのもの。目を閉じているときには見えないもの。メンドスさん、GIL、オカマガエル。舌を躱す。足元の地面が抉り取られる。　17

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「避けた！？」GILの驚きの声が聞こえる。後方のオカマガエルが舌を飛ばしてきたので、私は横へ軽くステップして、それも避ける。「なぜだ！」私は風の剣を構え振り抜いた。「『風神招来百ノ段』、『大牙鎌鼬《オーガカマイタチ》』！」一対の斬撃がドリル状になって飛ぶ！　巨大鎌鼬だ！　18

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大牙鎌鼬は四体のオカマガエルを連続で貫いた！　緑色の体液が間欠泉めいて空に噴き上がる！　GILの額に体液が一滴落ち、血管が浮き上がる！「貴様ァッ！」「お前の戦い方はクソだ」メンドスさんはGILに歩み寄る。「お前みたいな、他のやつの力に頼りきった輩には、俺は負けない」　19

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「言わせておけばッ」「lilyknight、行け」「はい」私は飛翔した。飛翔した。狼煙はもう雨で消えていた。メンドスさんはきっと大丈夫だ。負けたりしない。それより今は、vivid_rabbitを、杏奈ちゃんを、助けに行かないと。私は焦っていた。現在の拠点の状況は全く不明だ。　20

創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ) @chou_tan_

敵勢力の強さ、スパイは本当にライアくんなのか、ギルドマスターは本当に倒されたのか、vivid_rabbitは無事なのか。何もかも不明だ。私は風の剣を握りしめる。もっと早く。もっと早く。雨が頬を打ち付け防具を濡らす。雨天下の戦闘は苦手だ。疾風となり空を駆ける。雨を弾き散らす。　21

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拠点近くの岩陰に、なるべく音を立てないように降り立つ。雨のせいで地面がぬかるみ、足首まで鉄靴が埋まった。拠点の方はいやに静かだ……戦闘箇所を移動したのかもしれない。野伏の可能性もあるので、私は意識を張り巡らせつつ、拠点に近づいていく。心臓が早鐘を打つ。嫌な予感がする。　22