ゴールデンカモイ #2

幌筵泊地の8割は農地でできています 1:https://togetter.com/li/1129843 3:https://togetter.com/li/1130927
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-07-15 20:32:07
劉度 @arther456

「神威より膠州へ。漂流物を発見した。合流して付近を捜索したい、応答願う」1937年、日本統治領、南洋諸島近海。水上機母艦『神威』は、行方不明になった飛行機を捜索中に、その残骸らしきものを見つけた。引き上げてみると、いくつかの金属板と、空き瓶、それに何かの機械の一部があった。1

2017-07-15 20:33:07
劉度 @arther456

「飛行機なんでしょうか?」「どうだろうなあ」いかにもそれらしいが、探している行方不明機のものとは限らない。ただのゴミかもしれない。「まあ手がかりには……おい、何やっとるか貴様」見張員が引き上げた機械のようなものに耳を近づけていた。「あ、いえ。喋らないなと思いまして」2

2017-07-15 20:36:07
劉度 @arther456

「バカモン、ただの鉄クズだぞ。喋るわけがないだろうが」「いや、でも見つけた時は喋ってたんですよ」「なんじゃそりゃあ、気味悪い……とっとと持ち場に戻れ」「はあ」上官にドヤされ、見張員はマストへ戻る。その途中で、独り言を呟いた。「助けてくれー、って言ってたんだけどなあ」3

2017-07-15 20:39:02
劉度 @arther456

【ゴールデンカモイ】#2

2017-07-15 20:40:07
劉度 @arther456

「君ら、一体何をやらかしたんです……?」蔵王に逃げ込んで、ようやく一息ついた提督は、車に乗り込んできた2人を早速呼びつけた。軍服を着たハンターとアイヌの少女は、それぞれ杉坂弘一、神威ミナと名乗った。2人は車の中で、日本陸軍に追われていると言い張っていたのだ。4

2017-07-15 20:45:02
劉度 @arther456

「って言われてもなあ」「何から話せばいいんでしょうか」「まずなんで陸軍に追われてるかってところから話して、お願い」「ああ、それか。神威さんがあいつらに攫われたんだよ」いきなり、穏やかではない話が飛び出してきた。「……どういうこと?」提督が促すと、2人は事情を話し始めた。5

2017-07-15 20:48:01
劉度 @arther456

事の発端は、ミナの村に日本陸軍がやってきたことであった。彼らはアイヌの天才的な巫女として有名になりつつあったミナに、極秘実験に協力するよう求めてきた。当然、ミナは反対したが、村に大砲が向いているのを見ては、彼らの言いなりになるしかなかった。6

2017-07-15 20:51:02
劉度 @arther456

陸軍は彼女にとある霊、あるいは神を降ろすように命じた。その名は神威。旧帝国海軍の補給艦である。「ってことは……今の君は、艦娘なのか?」「そうなんですか?」「艦霊が憑いてるなら艦娘だよ。でも陸軍が艦娘で何をしようとしてたんだ?」「何かを探してました」「何か?」7

2017-07-15 20:54:08
劉度 @arther456

「ええ。あの人たちは、『アメリアの柩』って言ってました」「『アメリアの柩』?なんだそれ?」「陸軍の人たちは、旧日本軍が隠した黄金だって言ってました」「埋蔵金!?」提督は思わず身を乗り出した。すると神威は慌てていった。「ですけど、私は違うと思うんです」「違う?なんで?」8

2017-07-15 20:57:05
劉度 @arther456

「声が聞こえるんです。ずっと、私に話し掛ける声が」「……なんて言ってる?」「『こちら、アメリア・イアハート。私は今、地獄の池にいます。6210キロサイクルでこのメッセージを繰り返します。聞き続けてください』」提督は細くため息をついた。「地獄の池って、また物騒な……」9

2017-07-15 21:00:17
劉度 @arther456

「アウ・ライトです」「え?」「アウ・ライトです。アイヌの言葉で、地獄のような溶岩の池、って意味です」「へえ、溶岩の。火山にでも落っこちたのかな?」「いいえ。そういう名前の島があります」「あるの!?」「はい。幌筵泊地のすぐ北です」「……阿頼度島か!」10

2017-07-15 21:03:06
劉度 @arther456

ミナの言う通り、幌筵の北には島がある。ロシア語ではアトラソフ島、日本語では阿頼度島と呼ばれる、小さな火山島だ。「そこに『アメリアの柩』ってのがある訳か」「かもしれません。でも、喋る埋蔵金ってありませんよね?」「そうだねえ……」『アメリアの柩』。ただの埋蔵金ではなさそうだ。11

2017-07-15 21:07:02
劉度 @arther456

提督は不知火へと振り返った。「補給艦・神威と阿頼度島、それとアメリア・イアハートについて、調べておいて」「かしこまりました」不知火は一礼すると、部屋を出ていった。「さて、次だ」続いて提督は杉坂に向き直った。「キミは一体なんなの」神威とは違い、彼は正真正銘の一般人だ。12

2017-07-15 21:10:05
劉度 @arther456

「いや、俺の住んでるアパートの大家さんの娘さんが神威さんでさ。ネオエゾジカ狩りから戻ってきたら、神威さんがさらわれたって聞いて、探してたんだよ」「知り合いなの?」提督は神威を見る。「はい。ちょっと前に引っ越してきた時に、狩りの仕方とかを教えてあげました」「ほお……」13

2017-07-15 21:12:07
劉度 @arther456

「それで、クシロで聞き込みをしてたら、基地でもないのに陸軍の連中が集まってる家を見つけてな。こいつは怪しいと思って張り込んでたら、ロシア人の奴らがいきなり突っ込んでったんだ」「……え、ロシア人ってそっち?」「ん?なんだ?」「ああ、いや、どーぞ続けて」14

2017-07-15 21:15:07
劉度 @arther456

どうやら、先程のロシア人の狙いは、提督ではなかったらしい。慌てて逃げ出す必要はなかったようだ。「それで、ドサクサに紛れて家の中に入ったら、上手いこと神威さんを助けられたんだ」「部屋に杉坂さんが入ってきた時はびっくりしました」「俺もビックリだよ。本当にいると思わなかったからな」15

2017-07-15 21:18:02
劉度 @arther456

2人の話をまとめると、陸軍が神威の艦霊を使って『アメリアの柩』なるものを探している。そして、アメリアを名乗る声が、幌筵泊地近くの阿頼度島から聞こえている。ロシアンマフィアがなぜ乱入して来たのかはわからないが、もしかしたら彼らも『アメリアの柩』を狙っているのかもしれない。16

2017-07-15 21:21:20
劉度 @arther456

「お宝争奪戦か……?」提督が考えていると、部屋のドアが開き、隼鷹が電話片手に入ってきた。「提督ー。陸軍の倉田さんから電話だよー」「おっ、来たか」提督は今回の事件の仲裁を、陸軍の友人の倉田に頼んでいた。こういう頼み事は何度もしているから、慣れたものだ。17

2017-07-15 21:24:13
劉度 @arther456

「もしもし、いくら払えばいい?」『すまない、東郷。止められない』「……は、え、なんで?」思わぬ返答に、提督の声色が真剣なった。『スパイ捜索と治安維持って名目で、こっちの命令を拒否してきた』「それ、現場が暴走してない?」『多分』どうやら今度の陸軍は、金では動かせないらしい。18

2017-07-15 21:27:02
劉度 @arther456

「……しょうがない。こっちで頑張るよ」『すまん。俺も説得を続けてみる』提督は電話を置いた。「すみません、杉坂さん、神威さん」2人を見る提督の顔は、いつになく真剣だった。金の力が通用しない以上、この問題は自分たちで解決するしかなかった。「『アメリアの柩』探しを手伝って下さい」19

2017-07-15 21:30:24
劉度 @arther456

幌筵泊地南方の海上に、深海棲艦が集まっていた。フリル付きの防寒服を着込んだ北端上陸姫。巨大な鉤爪を備えた港湾水姫。側近マグロを供につけた潜水棲姫。そして、『北の魔女』北方水姫。いずれも北方海域で戦う猛者たちだ。21

2017-07-15 21:33:08
劉度 @arther456

だが、そんな彼女たちも、今日の北端上陸姫の宣言には驚くしかなかった。「幌筵泊地を攻略するわ」港湾水姫と北方水姫は顔を見合わせた。潜水棲姫は無言で腕を組んでいるが、賛成とは言い難い顔色だった。「……ろしあの。幌筵といふたな?」「ええ」「本気なりや?」「ええ」22

2017-07-15 21:37:08