【ミリマスSS】トルプリンノポス・アカネキア#1 美少女戦士アカネ大地に墜つ！
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創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ)
@chou_tan_
ガサガサ、ガササガサ。ビニールの擦れる音が道路に響く。「たらふく買ったな～！」塔京の夜街を歩く三人の少女は、めいめいが両手に大量の荷物を抱えていた。赤髪に金色のメッシュが特徴的な少女・舞浜歩は、緑髪の少女・島原エレナに目線を投げる。エレナは「そうだネ～」と感慨深げに呟いた。 01
2017-07-16 00:08:42
創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ)
@chou_tan_
「これでワタシたちも一歩アイドルに近づけたカナ！？」「もちろん！」歩は親指を立てる。「アタシたちはなんにだってなれる！」「イエス、ウィー・キャン！」息の合った二人の会話を、少し下がって見ているのは、橙髪の少女・矢吹可奈であった。「あの……」可奈はおずおずと切り出す。 02
2017-07-16 00:12:40
創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ)
@chou_tan_
「ちょっと寄りたい場所があるんですけど、いいですか？」「いいヨ！」エレナの即答。少し遅れて、「どこ？」と歩が問う。可奈は夜空を見上げた。街の光が眩しく、星は見えない。「……今日は流れ星の日なんです」「へぇ！」「だから、行きたいんです。星が降る丘へ」 03
2017-07-16 00:16:01
創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ)
@chou_tan_
☆★☆★ 『トルプリンノポス・アカネキア』 第一章 プリティープリティーインベーダー？ 第一話 美少女戦士アカネ大地に墜つ！ ☆★☆★
2017-07-16 00:17:55
創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ)
@chou_tan_
（うんっふ、ふんぐぐ、ぐぐぐぐぐぐぐぐ！ まずい。まずい。まずいまずいまずいまずい！ 非常にまずいよこの状況は！）大気圏付近で、少女が燃えながら墜ちていた。地球の重力に絡め取られ、風車のように回転しながら、宇宙から地上へ、成すすべなく墜ちてゆく。その少女の名はアカネという。 04
2017-07-16 00:22:47
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@chou_tan_
アカネは心中穏やかではなかった。小型宇宙遊泳ボードに乗り、生物生存環境が整っているという未知の星に近づいたのはいいが、ボードの操作を誤り重力に掴まり、高速落下し既に大気圏を突破しかけている。宇宙服からは火花が飛び散り、青、黄、赤、紫、と美しい炎を噴出しながら溶解していく。 05
2017-07-16 00:26:15
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@chou_tan_
（服から火花出てる～綺麗だな、死ぬのかなコレ？ アカネちゃん死んじゃうのかなコレ？ カワイイカワイイアカネちゃんがこんなヘンピな星の大気に焼かれて死んじゃう？ 送り火にしてはカラフルだな～コレ。てなこと言ってる場合じゃねぇ！ このままだとホントに死ぬ！ ヒジョーにマズい！） 06
2017-07-16 00:28:58
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@chou_tan_
どうするどうする、と思考を巡らせるものの、ボードは既に故障しており、落下はもはや止めようがない。アカネは眼下に迫る大地を見て静かに息を呑み、降参（ハンズアップ）した。（カワイイアカネちゃんが死んだら全宇宙の損失だよ！）誰へともなく叫んだが、漆黒の宇宙は残響すら返さない。 07
2017-07-16 00:31:21
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塔京郊外、星降りの丘。歩エレナ可奈の三人は、荷物をいったん765プロスクールに預け、丘を登った。空を見上げ、エレナはほあ～っと口を大きく開く。「キレー！」街の光が丘の凸凹によって遮られ、雲のない夜には星を多く観測できる場所だ。「おきにいりのばしょなんです」可奈は頬を緩めた。 09
2017-07-16 00:44:26
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一行は星降りの木に登った。「ここがいっちばんキレイに星、見えるんですよ」慣れた手つきで幹を掴み登る可奈のあとを歩とエレナが追う。「ほら、みてください」枝葉をくぐり抜け、木のてっぺんにたどり着いた三人は、感嘆のため息を漏らした。 10
2017-07-16 00:48:43
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眼前に広がっていたのは、もはや『星空』ではなく――『宇宙』そのもののように見えた。真っ黒な、宇宙の色で染め上げられた夜空に、黄色の星がぷかりと浮かんでいる。いや、黄色だけではない。赤、青、白、緑、茶、紫……色とりどりの星々が、クリスマスの街のように、美しく宇宙を飾っていた。 11
2017-07-16 00:50:53
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それらがぽつりぽつりとあるような、暗めの場所もあれば、川のように連なり、一言では表現できない目まぐるしい煌めきを持つ場所もあった。三人は、この世界が宇宙に吸い込まれたような錯覚がした。流星群の日ということもあってか、数秒に一度、空を星が横切っていく。 12
2017-07-16 00:55:15
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三人には、その流星が、まるで、神の持つ筆の穂先に見えた。神がすらすら、と天に筆を走らせる。穂先を見ると、さっきまでは気づかなかった小さな小さな星があるのを見つける。神が描いたのだ、と自然に思う。「何個あるんだろう」と歩が零す。疑問というより、感動に近い。 13
2017-07-16 00:57:41
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また一つ、流星が空を滑った。可奈が両手を合わせ、握りこむ。「私も……！」力強く、握りこむ。「私も、いつか……アイドルに……！」歩とエレナが目を合わせ、可奈の両手に手を添えた。「絶対叶うよ」「ウン、叶うヨ」二人はそう言い、可奈と同じ願いを口にした。 14
2017-07-16 01:02:24
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ひとしきり願い終えると、可奈は手をほどいた。「……ありがとうございます、ここまで付き合わせちゃって」「あやまることないヨ」エレナは目を細めほほ笑む。「今日はすっごく楽しかったモン！」「そうだよ可奈」歩は可奈の肩をバシッと叩いた。「迷惑なんかじゃない。アタシたちは仲間だ」 15
2017-07-16 01:06:27
創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ)
@chou_tan_
「……う゛ぅ゛っ、あ゛り゛がどう゛ござい゛ま゛ずぅ～」途端に可奈は涙声になる。「私、歌もまだまだだし、超能力《タレント》だってまだ目覚めてないし……後から入ってきた子たちはどんどんデビューしてっちゃうしぃ～……」「大丈夫だってば」歩は苦笑する。「可奈はアイドルになれるよ」 16
2017-07-16 01:10:41
創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ)
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「そうだヨ、カナはダイジョウブ……」エレナは優しく可奈を抱擁する。エレナの柔らかな拍動が可奈に響き、可奈は次第に落ち着きを取り戻した。「ほら、もう一個流れ星来たぞ、可奈」歩が指さす先の空に、鮮やかな流れ星があった。「もう一回願っとこうよ」流れ星は虹色にきらめいている。 17
2017-07-16 01:13:33
創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ)
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可奈は頬をぬぐい、空を見上げた。流れ星は明滅し、まばたきごとにその色を変える。もう一度両手を握り合わせ、願う。「アイドルに……あの人みたいなアイドルに……！」可奈の思いに応えるかのように、流れ星が強く光った。どんどん大きくなり、どんどん光が強くなっていく。歩が眉を寄せた。 18
2017-07-16 01:17:34
創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ)
@chou_tan_
「アレ、近づいてきてないか……？」エレナと可奈も気づき、三人は顔を見合わせた。どう見ても、流れ星はこっちに近づいてきている。「な、なぁ、こんな話知ってるか？ 恐竜が絶滅した原因」「そんなこと言ってる場合じゃないですよ逃げましょう！」「死んじゃうヨ！」三人は木から飛び降りる。 19
2017-07-16 01:22:54
創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ)
@chou_tan_
「いたっ」着地の際、足を捻ったのだろう、可奈が地面にしゃがみこんだ。「カナ！ ダイジョウブ？」エレナがカナに走り寄る。歩は決断的に空を睨んだ。流れ星は一直線に星降りの丘めがけ落下しようとしている。「エレナ！ 可奈を担いで逃げてくれ！」歩は右足を引き、キックの姿勢を取った。 20
2017-07-16 01:26:37
創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ)
@chou_tan_
「アユムはどうするノ！ 死んじゃうヨ！」「アタシの能力《タレント》なら食い止められるかもしれない」「デモ！」流れ星の速度は新幹線やなんかの比ではない。生身の人間が衝突すれば、脳天からつま先までひとつらぬきにされるだろう。「止められなきゃ恐竜と同じだ」歩の右足が桃色に光った。 21
2017-07-16 01:30:02