ゴールデンカモイ #6

大佐と言ったな、アレは嘘だ 5:https://togetter.com/li/1132514 7:https://togetter.com/li/1133617
0
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-07-23 20:31:25
劉度 @arther456

【ゴールデンカモイ】#6

2017-07-23 20:32:15
劉度 @arther456

《第4班、擲弾筒準備完了!》《第2班、第3班、配置につきました!》《こちら第5班、敵の戦車を発見!交戦を開始します!》「第4班、敵への攻撃を開始めろ!装甲車両を優先して狙え!」榛少佐は洞窟内に設えた臨時の司令部で、迫るロシア軍に対する防衛戦の指示を繰り出していた。1

2017-07-23 20:33:15
劉度 @arther456

彼らが旧日本軍の隠し基地にたどり着いた時、ロシア軍が阿頼度島に上陸してきた。南海岸を哨戒していた部隊はすぐに逃げたものの、こちらの所在は無人偵察機によって暴かれてしまった。「奴らに『アメリアの柩』を渡すわけにはいかん!なんとしてもこの場を防衛せよ!」2

2017-07-23 20:36:07
劉度 @arther456

幸い、ここは旧日本軍の防衛拠点である。当時の塹壕が今でも残っており、防衛戦はやりやすい。更に思わぬ誤算もあった。《こちら第4班!洞窟内にて多数の火器を発見!……やはり、これも使えるようです!》百年前の兵器が、未だに使える状態で保存されていたのだ。3

2017-07-23 20:39:04
劉度 @arther456

「火砲を優先して運び出せ。準備のできたものから第2防衛線へ配置しろ」《了解!》「榛少佐!これは一体どうなっている!?」そこに現れたのは、ゾルダーゲン少佐だった。「無事だったか大佐!貴方の部隊で敵の側面を突いてくれ!」「待て、一体何と戦っているんだ!?」4

2017-07-23 20:42:03
劉度 @arther456

「ロシア軍だ!南に輸送艦が数隻、砲兵に戦車までいる!」「なんと……!」「敵の隊列は縦に伸び切っている。貴方の人狼部隊で側面を突けば打撃を与えられる!」「……その後はどうする気だ?」「防衛線を組み上げ、時間を稼ぐ。その間に『アメリアの柩』を見つけて、西から脱出する」5

2017-07-23 20:45:03
劉度 @arther456

ゾルダーゲンは洞窟の天井を仰ぎ見た。「無謀だ。柩は諦めて、すぐに撤退を……」「できん!」榛は拳を机に打ち付けた。「あの金塊をロシア人に、外国人に渡すわけにはいかん!あれは、我々日本人のものだ!」ゾルダーゲンは榛の狂気じみた覇気に驚き、そして、悟った。6

2017-07-23 20:48:01
劉度 @arther456

「……そこまで言うなら、行こう」「頼む」榛に背を向け、ゾルダーゲンは洞窟の外に出た。大きく深呼吸して、新鮮な空気を吸い込む。そして、深々と溜息をついた。『アメリアの柩』の存在を第11旅団に教えた張本人は、この展開にすっかり辟易していた。「これも指輪の力なのか?」7

2017-07-23 20:51:01
劉度 @arther456

『アメリアの柩』は金塊ではない。旧日本軍が遺した軍資金など、ゾルダーゲンの狂言に過ぎない。彼らが探している物は、第2次潜水艦派遣作戦において、日本へ送られた黄金の指輪だった。その指輪は、無限の富と争いをもたらす、ニーベルンゲンの指輪と呼ばれていた。8

2017-07-23 20:54:06
劉度 @arther456

アーネンエルベは指輪の魔力に踊らされ、内輪揉めを繰り返し、ろくに研究もできないまま、指輪を無価値なオカルトアイテムとして日本に押し付けた。ドイツにやってきた潜水艦伊8は奇跡的に指輪を日本に送り届けることができた。よく、艦内で反乱が起きなかったものだ。9

2017-07-23 20:57:04
劉度 @arther456

驚くべきことに、日本はこれを使った魔法兵器を作ったらしい。『アメリアの柩』と名付けられたその兵器の存在は、敗戦によりベルリンに届かなかった書簡から見つかった。ゾルダーゲンは、それを手に入れるために日本陸軍に取り入り、首尾よく発掘するつもりだった。それがこのザマである。10

2017-07-23 21:00:12
劉度 @arther456

指輪の呪いにあてられて、榛たちは正気を失っている。これ以上日本軍に付き合えば諸共に全滅するだろう。「指輪だけ取り戻して、早く逃げなければならんな」箱を持った子供たちの、独特の潮の香りはまだ辺りに残っている。その跡を追って、ゾルダーゲンは森の中を走り始めた。11

2017-07-23 21:04:11
劉度 @arther456

「せまい……」「我慢して、ほっぽちゃん」杉坂たちは、逃げ帰ってきた北方棲姫たちと合流し、灯台に逃げ込んでいた。子供5人とはいえ、7人も入ると流石に狭い。杉坂とやましろは、『アメリアの柩』の上に座る形になった。「こんなもんがあったとはなあ」老人は柩を見て感慨深げに呟いている。13

2017-07-23 21:06:12
劉度 @arther456

「おじいさん、知らなかったんですか?」やましろが聞くと、老人は頷いた。「おう。あの地図のところには一度行ったけど、そん時は洞窟なんてなかったからな」「地震で崖崩れが起きて、入り口が塞がってたのかもね」やましろは、先日に泊地を襲った地震を思い出していた。14

2017-07-23 21:09:08
劉度 @arther456

「……繋がりました」灯台の通信機をいじっていた不知火が顔を上げた。提督へ連絡ができるようになった。「こちら不知火。蔵王、応答してください」数度の呼びかけの後、返事があった。《もしもしらぬい!?》「不知火です」《そっちどうなってる!?ロシア軍がなんかやってるみたいだけど!》15

2017-07-23 21:12:04
劉度 @arther456

「ロシア軍は日本軍と交戦中です。また、島内には2種類の不明勢力がいます。片方は以前、トラック島の地下で遭遇した、あの黒い巨人です。もう片方は、ヴェアヴォルフと名乗るドイツの人狼です。」返事がない。「提督?」《ごめん、頭が追いつかない。意味がわからん》16

2017-07-23 21:15:08
劉度 @arther456

「詳しい報告は後でします。提督、今は『アメリアの柩』を調べてほしいのです」《あ、見つかったのか。中には何が入ってたの?》「わかりません。ただ……」不知火は横目で神威を見た。顔色が悪い。時折、柩を見ては、怯えるように目をそらすことを繰り返している。「良くないのは確かです」17

2017-07-23 21:18:03
劉度 @arther456

「ですから、ドリフト・システムで中を調べてほしいのです」《そこまでやるか……まあ、いいけど。指輪はしてる?》「はい」不知火は人差し指の指輪の感触を確かめる。《オッケー。システム起動。ちょっと待っててね》「すみません、調べるのでちょっと柩から降りてください」18

2017-07-23 21:21:09
劉度 @arther456

不知火に言われて、杉坂とやましろは箱から降りた。神威が杉坂の膝の上に乗り、やましろは北方棲姫の隣にむりやりねじ込まれた。「調べるってどうするんだ?」「提督に調べてもらいます」「提督?あの人、ここにはいないだろ?」「……静かに、杉坂さん」神威が何かを感じ取ったようだ。19

2017-07-23 21:24:13
劉度 @arther456

不知火も自分に降りてきているものを感じ取っていた。《……繋いだよ。大丈夫、不知火?》提督の声が頭の中に浮かぶ。2人の魂がつながった。「問題ありません」ドリフト・システムは提督と艦娘の五感を繋げるものである。ある事件の後、不知火と提督の間で、この魔術が変質した。20

2017-07-23 21:27:02
劉度 @arther456

五感だけでなく、第六感、魔力や霊的存在を感知する霊感を共有するようになったのだ。戦闘の役には立たないが、海域に流れる悪意や嘆きを感じ取ることで、索敵や罠の回避を行うこともできた。おかげで、羅針盤索敵システムに頼らず、航行ルートを自発的に選べるようになった。21

2017-07-23 21:30:12
劉度 @arther456

《うん、うーん……?》柩を調べる提督は、困っているようだった。「どうしました?」《いや、なんか、拍子抜けだねえ》「わかったんですか?」《えっとねえ、ただの魔力通信機》「え?」魔力通信機は現代において珍しいものではない。傍受困難な通信として、日本海軍では普通に使われている。22

2017-07-23 21:33:09