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フォビドゥンフォレスト＠カクヨム投稿中
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まとめを更新しました。「#14「雪中の行軍②」＜フォビドゥンフォレスト５話「選ばれし者、選ぶべき者」＞」 togetter.com/li/1132920
2017-07-25 02:36:52
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（田舎町・風科で森に棲む妖怪から人々を守る組織、僚勇会。彼らは森に活動拠点・砦を再敷設すべく百人規模での泊まり掛けでの作戦を決行していた。森の中央を車両と徒歩で行く徒歩部隊は、散発的な妖怪の襲撃を退けつつ順調に進んでいた。一方、凍った川の上を資材を載せて進むトレイン部隊は…）
2017-07-26 23:52:28
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禁忌の森の奥から流れる境川は、風科と隣の村井とを隔てる町境でもある。川幅は平均で四十メートル、広い箇所では六十メートルを超える。川底は同じく平均で五～六メートル。冬場は表層の殆どが凍っているが、大河である為凍り方は一様ではなく、場所によっては非常に薄い。 1
2017-07-27 00:03:37
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トレインは外観は古い汽車に似ているが、その動力は電動をメインに魔力を補助としている運搬車両で、今は足元を氷上仕様に換装している。一両の幅×長さ×高さは三×六×二メートルほどで、上に載せる資材に応じて二・三両を直線状に固定連結して一つの車両のように用いている箇所もある。 2
2017-07-27 00:15:05
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本来は本物の電車と同様に森の中央に通した線路上を走らせるのだが、冬場は線路が凍結して役に立たない。そもそも雪の下の線路の複数箇所が破損したままだ。特にレベル２と３を繋ぐ線路が谷の上の橋ごと失われたのが痛い。そこで氷上を滑らせることになったのだが、前述の通り川の氷は不安定だ。 3
2017-07-27 00:23:39
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それを凍らせるのが、今回の鳩寺望の役割である。 「そろそろお願いしますね。望くん」 「はい！」 オープントップにされた先頭車両の座席に座っていた望は、気合の入った声で佐祐里に応えた。その佐祐里は座る望の半身長上、トレインの屋根の上に立っている。 4
2017-07-27 00:35:04
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一行の現在地は徒歩班と同じ森のレベル２と３の境付近で、南から北へ伸びていた川は西側へと大きく蛇行し始めている（無論、実際は流れを上流へと遡って進んでいる）。直線部分は時速ニ十キロほどで割合スムーズに進んで来れたが、今は急なカーブで横転しないように五キロ以下で進んでいる。 5
2017-07-27 00:43:24
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徒歩班と同じなのは、現在地の瘴気レベルだけではなく進行度もである。八時頃に出発した両チームの先頭は、十時現在共に八割の道程を終えている。そして残り二割に二時間を見込んでいるのも同じだ。徒歩班は車両を降りて文字通り徒歩で進み、トレイン班は蛇行した川の上をゆっくりと進むのだ。 6
2017-07-27 00:57:50
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川の周りは広く深い雪原と、更にその先は白銀の森に囲まれている。総勢二十一名のトレインのうち、七名は二手に分かれて雪上を警戒している。雪の上を浮く乗り物スノーブルームを駆る六名が、川の西…風科側に二名、東側に四名。戦車めいた脚部ユニットで雪を蹴散らして進むガイアも東側だ。 7
2017-07-27 00:58:10
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残る十四名のうち、非戦闘員は運転手と望の二名のみ。厳密に言えば彼らも戦えるが、勿論戦わせてはならない。二十両編成のトレインは全長約百二十メートルになるので、大雑把に言えば残る十二名が十メートルづつ守る勘定だ。実際は、前方と後方に戦力を集中し、ブルームが適宜隙をフォローする。 8
2017-07-27 01:02:43
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十両目でトレイン部隊の指揮官、立森太臓が定時報告の緑の信号弾を打ち上げる。本部とのケーブルが繋がっておらず、無線通信の環境も悪いこのエリアでは彼らは孤立無援である。部隊内での通信こそ可能だが、万一妖怪の群れに遭遇した場合に戦線が間延びする恐れもある。全体の指揮は難しい。 9
2017-07-27 01:13:38
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一同が準備を整えると、望は車両先頭に備え付けられた円筒状の器具に右腕を深く挿入する。器具は銃座めいて固定され、左腕のレバーで上下左右に座席ごと動く。望の力を整流・収束して放射すると共に彼の負荷を抑えるための魔道具である。腕につけて使う汎用の歩兵用魔力砲の改造品だ。 10
2017-07-27 01:19:03
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望は、理論上では一発で数キロ先まで川を凍結出来るが、実際は出力を上げるほど精密性が損なわれる。凍結面が荒くなり、魔力光線も川をはみ出していく。ここまでは三百メートル前後づつ地道に凍らせては表面を整えて進んできた。しかも蛇行の多いここからは百メートル以下刻みになる。 11
2017-07-27 01:24:45
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無理に動けないこの急カーブは、運転手はともかく望にとっては良い休憩になったようだ。気合を入れ直した望は照準器を覗き込み、川の中心に狙いをつける。そして円筒内のトリガーを引こうとした所で、通信が入った。 『……待て。川の中に妖怪がいる。Ｂ級だ』 12
2017-07-27 01:26:42
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望は射撃を止めると、腕も引き抜くべきか逡巡して後ろを向いた。佐祐里が頷く。 「念の為、襲撃に備えましょう」 「はい…！」 立ち上がった望は座席から一歩踏み出す。佐祐里も望を片手で庇うように乗り出し二人で川を覗き込む。氷も水も濁っており妖怪の姿は見えず気配も感じない。 13
2017-07-27 23:36:31
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境川の水は妖怪が風科の外に出るのを防ぐ結界でもあるが、それが霊波の解析をも妨げてしまう。川中の妖怪を探知出来るのはＢ級ならせいぜい数十メートル圏内からで、種類を特定したくば更に近づかねばならない。川の表面が凍っているので尚更測定が難しい。 14
2017-07-27 23:43:29
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あまつさえトレインの先頭から十数メートルは、まだ望が魔力で凍らせた部分で二重三重に確認しづらい。いっそ妖怪ごと川を凍らせたくなるが、移動中に復活されてはトレインの真下から攻撃を受けることになる。Ｂ級以上ないしＣ級の大群は凍結作業前に倒すことに決まっている。 15
2017-07-27 23:48:00
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『分かったわ。アレは…センザキね」 通信の声は途中から肉声に代わった。小方黒音だ。数歩遅れて彼女の兄、磐司も楽進盤を持って跳んで来た。先程の通信は彼だ。 「センザキですか…ではお願いします」 トレインの上は狭い。佐祐里は望共々二人と入れ替わりで一両目の後ろ側へ下がる。 16
2017-07-27 23:56:30
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「ええ、任せて」 場所を譲られた黒音は左手で髪をかき上げ、右手でワイヤーガンを手にする。 「ホラ、兄さんも」 「分かってる」 左手に盤を持った磐司も妹に追いつく。一両目の先頭に立ち盤を右手で回すと、川の中へと淡い金色の光線が伸びていく。二十メートルほど先だ。 17
2017-07-28 00:00:40
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「そこね」 黒音は光の先にワイヤーガンを撃ち込む。手応えは……あった。磐司も楽進盤を望のの座席に放ると同じように撃った。 「来る！」 氷の割れ目からボコボコと泡が立ち、ひび割れも大きくなる。二人が攻撃した地点を中心に川が揺れ始めた！ 18
2017-07-28 00:09:05
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センザキは大山椒魚を数十倍に巨大化させた様な姿の妖怪である。普段は鈍重ながらパワーが強く大型の船をも容易く鉄くずに変えてしまう。また水中では直線方向に限るが高速で突進も可能だ。それ以上に恐ろしいのはその再生能力である。「千裂き」の名の通り千に裂いても再生すると言われている。 19
2017-07-28 00:21:39
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切れば切っただけ増える上に打撃耐性も強い。火や乾燥には弱いが、体重が重く水から引き摺り出すのは難しい。一番効率的で有効な対抗手段は…。 「行くわよ兄さん」 「ああ」 磐司の右手と黒音の左手が繋がれる。猛烈な力で川に引き摺り込まれかけたのも一瞬、二人は真っ直ぐに川中を見据える。20
2017-07-28 00:32:27
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二人は反対の手にと握ったワイヤーガンを通して強力な電撃を放つ！。二人が手を繋ぐことで放てる必殺の一撃だ！ 「－－－！！」 水中から苦悶が聞こえた気がした。センザキには声帯は無い。強力な電撃で細胞が泡立つ音だ。水上から大型妖怪を狙うならセンザキに限らず一番有効な攻撃だ。 21
2017-07-28 00:43:19