ゴールデンカモイ #8

「ソ連と聞いて病院から走ってきました」 7:https://togetter.com/li/1133617 9:https://togetter.com/li/1134867
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-07-27 21:01:23
劉度 @arther456

1959年、阿頼度島。「やったか!?」ソ連守備隊の目の前で、漁船が爆発した。彼らが投げ込んだ手榴弾が、燃料タンクを直撃したのだ。燃える漁船から乗員が飛び降りる気配はない。「……よし、やったな、よし!」巡視船のソ連兵たちは、安堵の溜め息をついた。1

2017-07-27 21:03:07
劉度 @arther456

突如現れた漁船は、ソ連領であるこのアライド島に、警告を無視して乗り込もうとしていた。島を守る守備隊は、当然これに発砲、実力で止めようとしたのだが、相手は機関銃を持っていた。船上での激しい撃ち合いは、守備隊長の死亡と、数人の負傷という惨事を引き起こした。2

2017-07-27 21:06:12
劉度 @arther456

漁船は更に爆発を起こし、急速に沈み始めた。「何だったんだ、一体?」「何だったじゃねえよ!言い訳、考えねえと!」「そうだ!」不法侵入未遂に隊長の死。これがモスクワに知られれば、大問題になる。最悪、粛清もあり得る。「……隊長殿は勇敢に戦ったってことにしとこう!」「ああ!」3

2017-07-27 21:09:07
劉度 @arther456

【ゴールデンカモイ】#8

2017-07-27 21:10:05
劉度 @arther456

「こちら蔵王!幌筵泊地、応答してください!応答してください!」眼前の泊地からは、黒煙が立ち上っていた。幌筵泊地が奇襲されたと聞いて、提督は泊地水姫から逃げる勢いのまま戻ってきた。そこで目にしたのは、占守島からの砲撃を受け続ける本拠地だった。4

2017-07-27 21:12:04
劉度 @arther456

蔵王の前にも水柱が立ち上る。《射程外に退避して!隼鷹、グラーフ、翔鶴姉!襲撃して、敵の砲撃部隊に爆撃を仕掛けて!》「ヒャッハー!任せろ!」リフトが降ろされ、3人の空母娘が海上に降り立つ。すぐさま式神が召喚され、艦載機が頭上に展開する。5

2017-07-27 21:16:01
劉度 @arther456

《こちら彩雲!大変です、北から航空機が来ています!》「何ですって?」翔鶴が放った偵察機が、敵影を捉えた。《あれは……陸攻です!奴ら、空襲を仕掛ける気です!》「隼鷹さん、グラーフさん、戦闘機隊の発艦を優先させてください!敵の爆撃機が来ます!」「マジか!?」6

2017-07-27 21:18:01
劉度 @arther456

やがて、深海機の大編隊が水平線の向こうからやってきた。幸い、その時既に、隼鷹たちは艦載機を発進し終えていた。「航空隊、攻撃開始!いい?瑞鶴を危ない目に遭わせちゃダメよ?」翔鶴の号令で、零戦と烈風の混成部隊は爆撃機隊へ猛然と襲いかかった。7

2017-07-27 21:21:11
劉度 @arther456

その頃、提督はようやく幌筵と連絡がついたところだった。「無事ですか、城島さん!」《無事なワケあらへんやろ。地下シェルターが無かったら終わりやったわ》城島たちは地下に逃げ込み、そこで指揮を執っていた。《せやけどこれじゃ出撃でけへん。優月ちゃん、なんとかならへん?》8

2017-07-27 21:24:13
劉度 @arther456

「いや、むしろこっちが助けてほしいです!凄い数の爆撃機が来てます!基地航空隊だけでも上げてください!」先手は取れたが、数が桁違いだ。いつまで保つかわからない。《無茶いうなや!?先に大砲をなんとかしてくれ!》「ぐぬう……!」提督は占守島を睨みつける。その時であった。9

2017-07-27 21:27:02
劉度 @arther456

「提督!幌筵から基地航空隊が上がっています!」「え!?」確かに、煙の間から航空隊が出撃している。「城島大将!航空隊が上がってるみたいですけど!?」《は?……いやいや、知らん!そんな命令出してへんで!?》2人の困惑などお構いなしに、航空隊は次々と無断出撃していった。10

2017-07-27 21:30:12
劉度 @arther456

海岸に並んだ砲台小鬼が、次々と砲を撃つ。そのうち何匹かの砲身は、赤く加熱し始めていた。「第1小隊、第3小隊と交代し、港への制圧射撃を継続しなさい」北端上陸姫の指示で、一部の小鬼が砲撃を止め、海の中に入って体を休める。代わりの小鬼が幌筵泊地へ砲撃を始めた。12

2017-07-27 21:33:07
劉度 @arther456

今までの戦闘経過を振り返る。北方水姫の正体は暴かれたが、横須賀の提督に取り入って時間稼ぎをするという目的は果たせた。潜水棲姫の別働隊は、アトラソフ島でロシアの海軍と戦っている。あんなところに敵がいたのはまったくの予想外だが、分散した敵を叩けたので良しとする。13

2017-07-27 21:36:10
劉度 @arther456

そして、この占守島からの奇襲砲撃。これは大成功だった。夜中のうちに北から占守島に上陸、警備隊基地を占拠し、通信を乗っ取る。そのまま島を縦断し、南端から海を挟んで向こう側の幌筵泊地へ攻撃を始めた。敵の司令部と港、航空基地は、砲撃に晒されて機能していない。14

2017-07-27 21:39:02
劉度 @arther456

もうすぐ、港湾水鬼が放った爆撃機が到着する。南から戻ってきた艦娘が戦闘機を出撃させているが、あの程度の数で爆撃は止まらない。「それは悪手よ、横須賀の提督さん」北端上陸姫を爆撃すれば、幌筵泊地が息を吹き替えしたかもしれない。その場合は、船が陸攻に襲われるだろうが。15

2017-07-27 21:42:02
劉度 @arther456

「ギイッ!?」「イーッ!」急に、小鬼たちが騒ぎ始めた。「どうしたの?」泊地に目を向けると、あろうことか、砲撃されている滑走路から出撃しようとする航空機の姿があった。「正気!?……このっ、撃ち落としなさい!」砲台小鬼たちが撃ち始めるが、大砲は狙い撃てる武器ではない。16

2017-07-27 21:45:05
劉度 @arther456

途中で破壊されるものもあるが、1機、また1機と離陸する。「高射砲隊!準備しなさい!」北端上陸姫の号令で、対空攻撃が始まる。敵は僅か10機ほど。大した数ではない。だが、北端上陸姫は自分の掌にじっとりと嫌な汗が浮かんでいることに気付いた。この体が恐れている?あれを?17

2017-07-27 21:48:01
劉度 @arther456

花火の合間を縫って、敵がこちらに降下を始めた。すると、甲高い音が響き始めた。サイレンのような風切り音に、北端上陸姫は身を竦ませた。ほかの小鬼たちも同じだ。「まさか――」見上げた敵機は、日本のものではなかった。Ju87スツーカ、ドイツ軍の急降下爆撃機である!18

2017-07-27 21:51:03
劉度 @arther456

吊り下げられた500kg爆弾が次々と投下され、地上の砲台小鬼たちに降り注ぐ!炸裂した爆弾は、容赦なく子鬼たちを吹き飛ばした。「くうっ!」北端上陸姫の近くにも一発落ち、爆風が彼女の身を焼いた。急降下爆撃を終えたスツーカは、鋭いカーブを描いて北端上陸姫たちから離れていく。19

2017-07-27 21:54:06
劉度 @arther456

的確な爆撃は、砲台小鬼たちに想像以上のショックを与えていた。生き残った小鬼たちは、次の爆撃が来ないか怯えながら空を見たり、海や森の中に逃げようとしたり、とにかく混乱している。「狼狽えるなッ!」北端上陸姫は一喝した。小鬼たちが動きを止め、彼女に注目した。20

2017-07-27 21:57:04
劉度 @arther456

「敵の爆撃は終わったわ!次の爆撃が来るまでに、滑走路を徹底的に破壊しなさい!」北端上陸姫の命令で、小鬼たちは落ち着きを取り戻した。被害は出たが、こちらの優位は変わらないのだ。それがわかれば恐れる必要はない。小鬼たちは気を取り直して泊地の方を向く。21

2017-07-27 22:01:14
劉度 @arther456

だが、またしても動揺が広がった。基地へ戻る、誰もがそう見ていたスツーカ隊が、反転してこちらへ向かってきたのだ。爆弾は落として、もう武器は無いはずだ。スツーカ隊が、一瞬パッと光った。次の瞬間、轟音と共に数十発の砲弾が北端上陸姫たちの周りで炸裂した!22

2017-07-27 22:05:04