ゴールデンカモイ #9

あのお爺ちゃんイケメンすぎる 8:https://togetter.com/li/1134232 10:https://togetter.com/li/1135584
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-07-29 20:31:10
劉度 @arther456

「どこだよここは……」老人は浜辺に座って途方に暮れていた。北海道で戦っていたと思ったら、知らない島に埋められていた。まるで意味がわからない。ともあれ、じっとしていても仕方がないので、老人は一緒に埋まっていた愛刀を携えて歩くことにした。1

2017-07-29 20:33:07
劉度 @arther456

しばらく歩いていると、浜辺に打ち上げられた男を見つけた。全身に火傷を負っている。顔は特に酷く、まるでのっぺらぼうのようであった。死体かと思ったが、まだ微かに息があった。「おい、大丈夫か?」老人が肩を揺すると、男は物凄い力で腕を掴んできた。2

2017-07-29 20:37:03
劉度 @arther456

「あんた……!」刀を抜きかけた老人だったが、懇願する様子に動きを止めた。「頼む……これを……!」男は手に握り締めた紙を押し付けてきた。「ああ?」「止めてくれ……」「おい、何だ一体」困惑する老人に紙を押し付けると、男の手がだらんと垂れ下がった。「おい、待て、バカヤロウ、説明しろ」3

2017-07-29 20:39:04
劉度 @arther456

老人は男を揺さぶるが、男の体に力は残っていなかった。「ヒグチ、さん……」「バカが、死ぬな、おい!」男は長い、長い息を吐いた。吸うことは二度となかった。「……クソッ」訳もわからず何かを託された老人は、ただただ困惑するしかない。4

2017-07-29 20:42:01
劉度 @arther456

渡されたのは地図だった。山の位置からして、この島を描いたものらしい。山の麓に思わせぶりな×印が書かれている。行くあてのない老人は、仕方なくそこへ向かった。「何だこりゃあ……」そして、またしても失望と困惑の入り混じったつぶやきを漏らすことになった。5

2017-07-29 20:45:01
劉度 @arther456

印のあった場所は、崖崩れの跡地だった。山の斜面は泥と岩に埋まり、木々は根こそぎ倒されている。目につくものはそれだけだ。「骨折り損か」老人は刀を携え、アテもなく歩き出した。6

2017-07-29 20:48:02
劉度 @arther456

【ゴールデンカモイ】#9

2017-07-29 20:49:01
劉度 @arther456

廃屋に逃げ込んだ杉坂たちは、ロシア兵にすっかり追い詰められていた。周りは完全に包囲され、四方から絶え間なく銃弾が撃ち込まれている。さっき助けてくれた鳥型深海艦載機は、歩兵用の対空ミサイルに追い立てられて、うかつに近づけなくなっていた。7

2017-07-29 20:51:02
劉度 @arther456

「ほっぽちゃん!何か艦載機持ってないの?」やましろが叫ぶ。「持ってない!」「なんで!?」「勝手に出撃するから、幌筵泊地に置いてきた!」返事をする北方棲姫の頭に、カンカンとライフル弾が当たった。「カエレ!」飛んできた方に、北方棲姫は落ちていたコンクリ片を投げつける。8

2017-07-29 20:55:04
劉度 @arther456

砲弾のように飛んできたコンクリ片に、攻撃していたロシア兵は身を隠した。北方棲姫は近くにあるものを投げ続ける。今度は別の方向から撃たれた。無傷の北方棲姫はそちら側に石を投げ始める。こんな感じで廃屋の入り口は守られていた。同じように、窓は護衛棲姫と杉坂が守っている。9

2017-07-29 20:57:07
劉度 @arther456

深海棲艦が2人いるだけあって、守りが破られる心配はない。問題は、ここから脱出する方法だ。生身の杉坂たちがこの廃屋から出れば、あっという間に蜂の巣だ。かといって、北方棲姫たちを突撃させて突破口を開こうとすれば、その隙にほかのロシア兵が雪崩込んでくるだろう。10

2017-07-29 21:00:17
劉度 @arther456

「なんとかならないんですか、これ!?」柩の影に隠れる神威は、隣のやましろに聞いた。「どうにもならないわよ!不幸以前に詰んでるわ!」ほかに味方がいれば違うだろうが、逃げる途中ではぐれた老人や、マグロに助けを期待するのは無理な話だった。11

2017-07-29 21:03:07
劉度 @arther456

「なんかあるはずだ!諦めんな、粘れ!」ライフルの弾倉を交換する杉坂は、まだ諦めていない。南西諸島で孤島に取り残され、深海棲艦に囲まれた経験のある彼にとっては、まだ希望のある戦況だった。弾を込め直し、窓から狙いをつけようとする。その顔のすぐ横を、何かが通り過ぎた。12

2017-07-29 21:06:12
劉度 @arther456

振り返る。床に転がる円筒形の物体から、白い煙が吹き上がっていた。催涙弾だ。廃屋は一瞬にして催涙ガスに包まれた。爆発ではなく、刺激性のガスで嗅覚を攻めるこの兵器は、神威とやましろはもとより、北方棲姫と護衛棲姫も咳とくしゃみが止まらなくなるものだった。13

2017-07-29 21:09:06
劉度 @arther456

反撃の止んだ屋内に、ロシア兵が機敏な動作で突入する。しかし彼らは、窓の側にいて外の空気を吸えた杉坂に気付かなかった。杉坂は涙をにじませながら、先頭のロシア兵を撃つ!「グウッ!?」「シトー!」次のロシア兵が撃った弾が、杉坂の腹部を貫いた。灼熱のような痛みが襲いかかる。14

2017-07-29 21:13:02
劉度 @arther456

喉まででかかった悲鳴を食いしばる。その形相は、さながら悪鬼のようであった。「俺は不死身だ!」悲鳴の代わりに、杉坂は咆哮を上げ、ライフルを連射した。たまらずロシア兵は壁に身を隠す。杉坂は柩の側に移動し、それを弾除けにして、入り込んだ敵への最後の防波堤になった。15

2017-07-29 21:15:09
劉度 @arther456

そんな廃屋での銃撃戦を、離れた所から眺める一団があった。「ゴボ……」マグロヤブと随伴マグロ兵である。指揮官のタ級が気絶しているので、彼らは手持ち無沙汰だった。北方棲姫と護衛棲姫の確保を命じられているものの、あの激戦区にわざわざ飛び込むほどの義理はない。16

2017-07-29 21:18:01
劉度 @arther456

「もう、帰るか?」「だな。ロングテイル=サンが戦ってるらしいし、そっちに行こうぜ」マグロたちは廃屋に尾を向ける。「おい」その前に老人が立ち塞がった。右手には刀を、左手にはライフルを握っている。「ゴボ?」「ああ、さっきの人間か。まだ生きてたのか?」「テメェら、退く気か?」17

2017-07-29 21:21:10
劉度 @arther456

「何言ってんだジジイ。どけよ」マグロの1匹が横を通り過ぎる。すると、頭が飛んだ。「アバーッ!?」老人が振り上げた刀が、一瞬でマグロの身を解体したのだ。「前に進め」壮年を過ぎた人間とは思えない、射殺すような眼光があった。「ジ、ジジイーッ!」マグロヤブが銃を向ける。18

2017-07-29 21:24:12
劉度 @arther456

老人は左手のライフル銃を撃った。銃弾はマグロヤブの肩関節を撃ち抜き、銃ごと機能を停止させた。「ゴボーッ!?」「ジジイ強いナンデ!?」「ガタガタ抜かすなッ!」一喝!「装甲兵は前に出ろ!歩兵は二列横隊だ!」マグロたちは顔を見合わせた。「さっさと動け!」「アイエエエ!」19

2017-07-29 21:27:01
劉度 @arther456

老人の迫力は、雑魚の群れのマグロたちを強制的に従わせる凄みがあった。逆らえば、死ぬ。寄せ集めの雑兵を力で従わせる恐怖がそこにある。「何なんだこのジジイ……」「コワイ!」マグロたちは訳がわからないまま隊列を組まされた。マグロヤブが前、マグロ上陸兵がその後ろを固める。20

2017-07-29 21:30:13
劉度 @arther456

そして魚群を率いるのは、刀と銃を携えた老人だ。だが、彼をただの老人と思う魚は1匹もいない。「鬼だ」マグロの1匹が泣きながら呟いた。「ありゃあ、鬼だ……!」鬼の指揮官は天に向かって銃を撃ち、命令を下した。「廃屋まで前進しろッ!退却する者は斬り捨てるッ!」21

2017-07-29 21:33:06
劉度 @arther456

「「「ゴボボーッ!」」」マグロたちは追い立てられるように突撃した。廃屋を囲むロシア兵はすぐに反撃する。少なくない数のマグロが銃弾に倒れるが、マグロの突撃は止まらない。彼らの後ろには、もっと恐ろしいものがいるのだ!「ゴボーッ!」マグロヤブが敵軍に突入し、ドリルを振るう!22

2017-07-29 21:36:06