【この夢をこの時代に】福間健二 #k2fact174
問いかける人。私たちがまだ答えていないのに旅立ち、今日はじまる都会に椅子が運び込まれていく。濡らしたくない。その意志よりも歓楽のうしろに隠れている戦争の影がふとい。月曜日に電話する。そう約束して、なんの温度を調節する週末だったのだろう。(この夢をこの時代に1)#k2fact174
2017-07-24 16:35:24疑わない素足にさえ踏まれないほどに、ひとりでいた。ひとりでいるの、よくないと言われる。性格、気候、そのほかの理由を思い、告白できる内容がきのうはセットであった。いまはそれをよく思い出せない。だれが立ち直るのも助けられない東京の、次の階。(この夢をこの時代に2)#k2fact174
2017-07-25 10:53:39何頁目でも遅い気がする。似ている問題でも、それぞれ危険な海への向かい方がちがう。膝を出して移動し、新しい波をかわしたからといって、したいと思ってること、自分のためじゃないことに心を集中できるのは稀だ。用意された箱と台を否定するかぎりは。(この夢をこの時代に3)#k2fact174
2017-07-26 10:36:39まるい目から香りを放ち、基線をまたぎ、だれの手足にもならない。廃屋の裏とかで偶然に会ったように会うならいい。たがいにそう言いながら出会うことのなかった二人の死者と蝶のすることを見ている。いい天気の、この野。来ると思っていた知らせが届く。(この夢をこの時代に4)#k2fact174
2017-07-27 10:08:00わかっていた。空の役割。地上の生きものに生きることの限界を教えるだけじゃないはずだ。第二、第三の旅人の疲れきった顔におどろき、黙り込みはするが、私たちは道をふさがない。そう言う。明日はすてると決めたこの動物、どうしてこんなに健気なのか。(この夢をこの時代に5)#k2fact174
2017-07-28 09:53:43かれらは自分を知っている。星座のようにあらわれ、捕まりそうで捕まらず、いつのまにか消える。火のないところ。投げる石の届く範囲にも見てはいけないものがある。捜索する目は瞬きするのも忘れて、小さな部屋に入り、そこで作れるものを作るだけだ。(この夢をこの時代に6)#k2fact174
2017-07-29 14:08:40絵葉書はない。単純な願いの糸がこんがらがり、遠い煙にもハッとする。努力する人を好きになって進化はしても、種類としては元のまま。死にたくならないように目を閉じて、その人が働くのを感じていた。郵便局でもある山の交流館。鹿肉サンド、五〇〇円。(この夢をこの時代に7)#k2fact174
2017-07-30 10:20:10この月、三人目の親しい人の死の知らせ。いまでなくてもいいのに、飛ぶ虫は暗記していた詩の断片。正確に思い出す方法を思い出そうとして、それだけ部屋が不規則に呼吸する。手に持っているものとテーブルの上にあるもの全部を動員して、何度も反転する。(この夢をこの時代に8)#k2fact174
2017-07-31 13:43:18人類の愚かさ。雨の音を聞きながら戦争から順番にいくつも思った。思い出せない言葉のかわりに。ぶらさがるシャツと靴下から、助ける手の角度に、古典的な、何日分かの疲労が落ちてくる。なんの証拠になるだろう。夜が明け、雨もあがって、おいしいお茶。(この夢をこの時代に9)#k2fact174
2017-08-01 16:04:34トラックの音に死者との会話をじゃまされて、よく晴れてきた。蜜のある場所を教えてくれる人間以外の新しい友よ、何が発見される前に戻るのだろう。いくら怠けても意地悪になっても、倒産させる会社、もうない。Aコープに山田農場の野菜を買いに行く。(この夢をこの時代に10)#k2fact174
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