ゴールデンカモイ #13

グラーフ・ツェッペリン(CV:早見沙織) メルトリリス(CV:早見沙織) 12:https://togetter.com/li/1136905 14:https://togetter.com/li/1137610
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-08-05 20:31:14
劉度 @arther456

【ゴールデンカモイ】#13

2017-08-05 20:32:14
劉度 @arther456

『アメリアの柩』を解呪しながら、グラーフはパンドラの箱の話を思い出していた。開けてはいけないパンドラの箱の中には、無数の厄災が詰まっていた。この柩の中には、目に見える危険こそ無いものの、負けず劣らぬ混沌を紡ぎ上げている。「神様の箱には、ロクな物がないな」1

2017-08-05 20:33:06
劉度 @arther456

グラーフの脳裏に東洋の魔術イメージが思い浮かぶ。「またオンミョウか。隼鷹」「あいよ」隼鷹が干渉、その機能を掌握する。その間にグラーフは、操作系統を更に解析していく。1930年代、魔法が科学に否定され、人々に忘れられていた時代に作られたとは思えぬ、緻密なアーティファクトだ。2

2017-08-05 20:36:07
劉度 @arther456

だが、一度断絶した技術を復古させることは、一から作り出すよりも難しい。神秘の塊である魔法を使っているのなら尚更だ。この柩にも断絶の影響は現れている。それも、最悪の形で。「……アドミラール。操作系統を掌握した」「ありがとう!すぐに止めて!」「無い」「え?」「停止命令が無い!」3

2017-08-05 20:39:02
劉度 @arther456

神代の指輪は不和と争いの呪いを絶えず振りまき続けている。この柩は、その呪いを変質させ、懐柔し、辛うじて有益にした上で発信する濾過装置でしかなかった。例えるならダムと堤防だ。川の流れを変え、水量を調節することはできるが、水そのものを枯らすことはできない。4

2017-08-05 20:42:02
劉度 @arther456

「まさか、旧日本軍がこれを阿頼度島に置いてったのって」「止められないから捨てたんだろう。最悪だ!」「くそっ!術式の上書きは?」「それは難しいねえ」新たな術具を取り出しながら、隼鷹が言った。「百年以上も放っておいたから、完全に根付いちまってる。すぐってわけにはいかないよ」5

2017-08-05 20:45:01
劉度 @arther456

「……しょうがない、壊そう」「いいのかい?」「元々拾い物だし。ほっぽちゃん?」「ぽ?」北方棲姫が寄ってきた。「ちょっとこれ、開けてちょうだい」「ぽっ」北方棲姫は柩の蓋に手をかけ、力を込めた。が、開かない。護衛棲姫も一緒に手をかけるが、開かない。深海棲艦の力でもびくともしない!6

2017-08-05 20:48:00
劉度 @arther456

「なんで防御魔法だけ超一流なのさ!?」「しゃーない、できるだけ早く、上書きしてみるか!」隼鷹が術への干渉に取り掛かった。その時、甲高い音が砂浜に響き渡った。ネオヒグマの爪を受け流し続けていた老人のサーベルが、遂に折れたのだ。「うおうっ……!」7

2017-08-05 20:51:02
劉度 @arther456

よろめいた老人に、トドメと言わんばかりに爪が振り下ろされる!「イヤーッ!」だが、横から叩きつけられた水がネオヒグマの体を揺らした。立ち上がったロングテイルの、渾身のテッポウ・ミズだ!爪は老人の袴の袖を切り裂くに留まった。老人は折れたサーベルを振り上げた。8

2017-08-05 20:54:11
劉度 @arther456

空気をも震わす咆哮。毛皮と筋肉は戦艦砲にも耐えるが、眼球はそうはいかない。折れたサーベルで片目を潰されたネオヒグマは、両腕をメチャクチャに振り回した。狙いも何もない腕を掻い潜り、ガングートがその喉に拳を叩き込む。ネオヒクマの口から、潰れたような呻き声が漏れた。9

2017-08-05 20:57:05
劉度 @arther456

突然、グラーフたちを頭痛が襲った。「ぐうっ……!?」魔術に精通したグラーフは、それが強力な魔法の余波だとすぐに気付く。柩から放たれた命令は、ネオヒグマに更なる魔力を送り込み、再び魔獣を戦わせようとする。そこに、ボロボロの鉄の塊が突撃した。10

2017-08-05 21:01:11
劉度 @arther456

占守島の奥から現れたチハ戦車隊、その最後の1両だった。ワイシャツを着て、頭に鉢巻をした骸骨が、ハッチから身を乗り出していた。戦車砲が火を吹き、爆炎と砂塵が吹き上がった。ガングートがその中から、吹き飛ばされるように飛び出してきた。11

2017-08-05 21:03:08
劉度 @arther456

破砕音が煙の中から聞こえた。煙が潮風に吹き飛ばされると、そこには叩き潰された戦車と、下顎を吹き飛ばされたネオヒグマがいた。魔獣は斃れない。普通ならとうに戦意を喪失しているが、徹底抗戦の命令が魔獣を見えない鎖で繋ぎ止めている。12

2017-08-05 21:06:09
劉度 @arther456

《提督!》突然の通信。蔵王からだ。「ど、どうした!」《北方水姫がこっちに向かってきます!》「何でこんな時に!?あと何分で着く!」《……15秒》「へ?」《12秒!南方から、音速で飛行してきます!》思わず提督は、ネオヒグマの後方の空へ目を向けた。13

2017-08-05 21:10:06
劉度 @arther456

何かが飛んでいる。それがみるみる近づいてくる。北方水姫だ。妙な艤装を足に生やしたほぼ全裸の戦艦が、一直線にこちらへ向かって飛んでくる!「変態だあああっ!?」「ごやああえええ!?」護衛棲姫が二度と口に出せないような、ものすごい悲鳴を上げた。14

2017-08-05 21:12:03
劉度 @arther456

【FGO】深海電脳楽土 SE.RA.PH[終幕]イベントBGMⅡ【Fate/EXTRA CCCxFate/Grand Order スペシャルイベント】 youtu.be/UEdFi_NztWM @YouTubeさんから

2017-08-05 21:12:03
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劉度 @arther456

ネオヒグマが北方水姫に気付き、迎撃しようと腕を振り上げた。北方水姫もそれに応じ、魔力を全身から迸らせる。目に見えるほどのオーラは、さながら水の奔流であった。「サラスヴァティー……!」東洋の河と音楽の女神の名前を、グラーフは無意識のうちに呟いていた。15

2017-08-05 21:15:03
劉度 @arther456

魔獣の腕と音速の水流がぶつかり合った。北方水姫の体が一瞬止まったが、大河の氾濫は一生物に止められるものではない。競り負け、宙に舞ったのは、魔獣の左腕だった。北方水姫はその勢いのまま砂浜に着地、否、着弾した。提督たちのど真ん中に。16

2017-08-05 21:18:03
劉度 @arther456

「ギャーッ!?」「ほぽぁーっ!?」クレーターができるほどの衝撃に、提督たちは当然吹き飛ばされる。煙を吹き上げながらも、北方水姫は立ち上がり、高らかに言った。「迎えに来たよ、ごーちゃ――」言い終わる前に、北方水姫はネオヒグマの突進によって宙を舞った。17

2017-08-05 21:21:08
劉度 @arther456

顎と片腕を失った激痛は、ネオヒグマを狂乱へと落とし込んでいた。目に見えるものすべてを破壊し尽くすまで、この獣の暴虐は止まらない。だが。「抜刀」ネオヒグマの背に、銃弾の雨が降り注ぐ。「突撃!」止まらない男は、もう1人いた。18

2017-08-05 21:24:05
劉度 @arther456

「ゴボボーッ!」マグロたちがサイバネ機銃やカノン砲でネオヒグマを攻撃!その支援射撃を受け駆け出すのは、老人である!「ううおおぉぉおあああぁっ!」折れたサーベルではなく、灯台を出たときから腰に差していた刀を抜き、ネオヒグマへ躍りかかる!19

2017-08-05 21:27:02
劉度 @arther456

ネオヒグマは右腕でこれを迎え撃とうとする。だが、失った左腕の傷口に銃弾が突き刺さり、身を強張らせた。人狼の拳銃だった。決定的な隙を、戦場の鬼は見逃さない。「これがぁ!」渾身の一刀は、熊の胴体を袈裟懸けに切り裂いた。更にもう一歩、鬼は踏み込む。20

2017-08-05 21:30:11
劉度 @arther456

「新!」返す刀は横薙ぎに。「鮮!」更に逆袈裟に振るう!そして、腰に提げていたライフルを抜き、吹き飛んだ下顎に突きつけた。「組だあああっ!」毛皮は無い。大口径弾が、頭蓋骨に直接叩き込まれた。ネオヒグマの右腕がピクリと動いた。致命傷を受け、なおも反撃の予兆!21

2017-08-05 21:33:07