ゴールデンカモイ #14(完結)

春イベのSSを投稿し終わったら、4日後には夏イベが控えていたんじゃが……。 13:https://togetter.com/li/1137199
0
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-08-06 21:03:10
劉度 @arther456

【ゴールデンカモイ】#14

2017-08-06 21:03:16
劉度 @arther456

「……戻ったぞ」幌筵泊地からどうにか撤退したロングテイルは、港湾水姫と合流していた。「いや、良かった、無事で」お互いボロボロである。艦娘たちが突然攻撃を止めなければ、生きて戻ることは難しかっただろう。「魔女はどうした」「ポリコヲに追われてるって」ロングテイルは溜め息を吐いた。1

2017-08-06 21:03:27
劉度 @arther456

「姫さんは?」「消えた」「……そうかい」港湾水姫は静かに天を仰いだ。「持って帰る途中で、崩れて砂になった」「……ああ?」港湾水姫は耳を疑った。彼女たちは死んだら黒い水になる。そんな死に方は、見たことも聞いたこともない。「仲間ではあったが、深海棲艦ではなかったのかもしれん」2

2017-08-06 21:06:11
劉度 @arther456

「んなバカな……」口ではそういうものの、港湾水姫も心の中では否定しきれなかった。そもそも彼女は、人間たちも知らなかった『アメリアの柩』について、どうやって知ったのだろうか。「ゴボッ」「オツカレサマデス!」知性マグロの声が、港湾水姫の考えを遮った。3

2017-08-06 21:09:08
劉度 @arther456

「おう、ご苦労」ロングテイルの知性マグロ軍団だ。「……お前たち、そう言えばあの人間の老人はなんだったんだ?」ロングテイルが指摘すると、マグロたちは困ったように顔を見合わせた。「いや……私らも何が何だか」「つい、勢いで」「はあ……?」気迫だけでマグロたちは指揮されていたようだ。4

2017-08-06 21:12:04
劉度 @arther456

「まあいい、そいつはどこだ?」「それが」「島を出る頃にはどっか行ってて」「そうか……」人間ながら見事なワザマエだった。イクサを挑みたかったが、いないのなら仕方ない。「あの提督共々、次に会うまで、楽しみにしておくか」5

2017-08-06 21:15:04
劉度 @arther456

「か、帰ってこれた……」ネオホッカイドウ共和国、クシロ警備基地。責任者の阿東少佐は、フラフラになりながら基地の門を潜った。「し、司令!お疲れ様っしゅ!」「生きて帰ってこれるなんて……!」「大丈夫?変なことされてない?」艦娘たちや兵士たちが、心配そうに寄ってくる。7

2017-08-06 21:18:04
劉度 @arther456

「基地はどうなるんですか!?」「家族は無事なんですか!?」「っていうか私ら、生きて帰れるの!」「待てェー!落ち着けェー!気持ちはわかるが話が大きくなりすぎてる!」ざわめく群衆に向かって、阿東は高らかに宣言した。「お咎めなしだ!」「……えっ!?」「マジで!?」8

2017-08-06 21:21:09
劉度 @arther456

「ああ!今日はお咎めなしだ!それどころがマグロ退治に頑張ったから、昇給だ!」現実逃避のマグロ狩りが逆に功を奏した。日本にもロシアにも肩入れせず、本来の任務に忠実だった沿岸警備隊は、その奮闘を日露双方から讃えられることとなった。9

2017-08-06 21:24:06
劉度 @arther456

「マジっすか!?毎日のお昼ごはんを焼き鳥弁当にしてもいいんすか!?」「ああ!予算もグレードアップだ!対鮪爆雷も、最新型の奴を持ってこれるぞ!」「うおおおお!」沸き返るクシロ警備基地。もっとも、今回の事件を素直に喜べたのは、彼らだけであるのだが。10

2017-08-06 21:27:09
劉度 @arther456

被害報告。アメリアの柩の残骸の回収結果。本国からの叱責。極東軍からの損害補填要求。日本からの召喚状。机には書類が山積みになっていた。それらに目を通しながら、ガングートはパイプを燻らせる。柩の破壊はひとまず成ったものの、全体としてみれば敗北である。12

2017-08-06 21:30:13
劉度 @arther456

阿頼度島での日本陸軍との交戦は、到底隠せるものではなく、幌筵泊地と日本の海軍省はそれぞれに対して遺憾の意を表し、責任追及を求めている。ロシアは当然、これを日本陸軍のせいだと言い張るつもりだが、政治的なアドバンテージを失うことは免れないだろう。13

2017-08-06 21:34:08
劉度 @arther456

軍事的な損失はそれ以上だ。マグロの攻撃により補給艦2隻が大破、1隻が中破。戦車は5輌全て喪失。人的損害は無残の一言に尽きる。ガングート自身も左腕が折れ、艤装も大破まで追い込まれた。ザスローン部隊の損害も大きく、しばらく作戦行動は取れないだろう。14

2017-08-06 21:37:06
劉度 @arther456

「大失態だな」ガングートは既に何らかの処分を覚悟している。それでも彼女は淡々と書類を処理していく。失ったものは多いが、得たものもあった。特に注目すべき点は2つ。1つは、深海棲艦に通じ、ロシア軍でも一部の人間しか知らない格闘術を使う艦娘、不知火。15

2017-08-06 21:39:03
劉度 @arther456

不知火が所属する横須賀鎮守府第33地区は、叩けばホコリの出てくる鎮守府だ。このカードは上手く使える。そしてもう1つは日本陸軍とたびたび共闘していた、ナチスドイツの軍服を着た人狼たちだ。こちらは何度か、ヨーロッパでの作戦中に出会ったことがある。16

2017-08-06 21:42:03
劉度 @arther456

報告書をどうまとめるか考えていると、部屋がノックされ部下が入ってきた。「隊長。日本陸軍の榛中尉が見つかりました。アッケシで拳銃自殺したそうです」「そうか」絵に描いたような口封じだ。彼の遺書は、今回の作戦が独断であり、上司は関与していないことを保証するだろう。17

2017-08-06 21:45:04
劉度 @arther456

「予定通り、陸軍の捕虜10人はオタルに送れ。大使館の交渉のいい材料になる」「はっ」部下が出ていくと、ガングートは再び書類と向き合った。負けた上に失態も犯してしまったが、彼女はただで起き上がる気は全く無かった。18

2017-08-06 21:48:07
劉度 @arther456

「提督。幌筵泊地の修繕費の見積もりと、蔵王の引き上げと修理費用の見積もり、蔵王を攻撃した艦娘たちを弁護する城島大将の陳述書、あと、ほっぽちゃんの絵日記です」「めええ……」ガングートとは違う方向性で、横須賀の提督も書類の山に埋もれていた。主に後始末が中心だ。20

2017-08-06 21:51:05
劉度 @arther456

ロシア軍と陸軍の戦闘に関しては責任は無い。深海棲艦の襲撃も、幌筵泊地を守りきったのでむしろ褒められるぐらいだ。おまけに、戦艦ル級を1隻、生きたまま鹵獲するという快挙もあった。しかし今回の輸送作戦の責任者だったので、事件のまとめもすべて押し付けられる羽目になった。21

2017-08-06 21:54:05
劉度 @arther456

優先すべきは泊地の修繕、次いで本国への諸々の報告だ。蔵王の修理は、どの道この泊地から暫く動けないので後回しでいい。「そういえば、指輪はどうするって?」「あきつ丸さんと武蔵さんにも分析してもらって、どうしようもないようであれば、火山に投げ捨てるつもりです」22

2017-08-06 21:57:05