高橋健太郎さんによる「2017年夏の20世紀初頭アメリカ音楽史再訪」
濱瀬元彦さんの下方倍音列の考え方を借りると、Cキーの場合だったら、Cのメジャー・スケールとGのマイナー・スケールが共存している状態がないと、ブルーズを感じられない。逆に言うと、その状態があれば、メロディーにブルーノートは要らない、みたいな。
2017-06-25 01:26:03で、話を戻すと、ジャズはビバップやモードといった革新があっても、理論に基づくがゆえに学習可能で、時とともに、黒人音楽的な表現とは考えられなくなっ ていく。が、ブルーズはなぜか、そのイメージが剥がれない。一つには奴隷時代からの苦難と結びついた表現であると浸透しているからだろうが。
2017-06-25 01:34:13が、それだけではないようにも思う。ブルーズは一面ではモードによって否定された機能和声的なコード進行を備えた音楽でもある。なにしろ、サブドミナントに展開するのだから。
2017-06-25 01:39:55リディアン・クロマチック的な考え方からすると、サブドミナントへの展開(CキーだったらC→F)は、最も西洋音楽的なドラマ性を備えたものになる。逆から言うと、民俗音楽にはあまりない。これはCから五度の倍音を辿っていくと(C→G→D→A→E…と進む)、最後に到達するのがFだから。
2017-06-25 01:50:39そういう西洋音楽的なドラマ性を備えたコード進行をするのに、一度を基音とするメジャースケールと五度を基音とするマイナースケールが共存しているという奇妙な状態 が続くのがブルーズ、とりわけ、アメリカン・ブルーズはだね。イギリスとか他の国に行くと、ペンタトニックが支配的になるから。
2017-06-25 02:10:19で、それはアメリカで生まれた本当に奇妙な発明品であって、実はアフリカ音楽ともそれほど深い繋がりはない、というのが僕の考え方だったりする。すごく歴史の浅い音楽。逆にモードなんて、3000年前からあったんじゃないかという気がしたり。
2017-06-25 02:24:14進行しているのに状態は変わらない(つまり機能していない)ということですよね。 twitter.com/TakayukiKomuro…
2017-06-25 02:29:20クラシック音楽サイドからするとブルーズのコード進行こそ、クラシック音楽的な「機能和声」を否定する存在なんですよ。セブンスのコードがドミナント進行で解決することなく並置されるのは、ドビュッシーあたりが機能和声から外れていくときに用いた手法でもあります。 twitter.com/kentarotakahas…
2017-06-25 02:18:42ちなみに、僕のこういうツイートは後々、原稿書く時のためのメモみたいなものですので。結論まで辿り着いてないけど、今日は寝よう。
2017-06-25 02:49:42あ、ひとつ忘れないように書いておくと、ブルーズがサブドミナントに展開するのは、西洋音楽的な最大飛躍感のある展開をなぞったものだろうけれど、それはブルージーな音楽に必須の形式ではない。ドナルド・フェイゲンなら単三度の7thに展開したり、レイ・デイヴィスなら二度の7thに展開したり。
2017-06-25 03:09:012.アメリカン・クラシック強化週間
アメリカン・クラシック強化週間てことで、奥田恵二『「アメリカ音楽」の誕生』を再読中。20世紀初頭までのアメリカ音楽史を押さえて、アイヴズやコープランドを読み解くとなると、日本語ではこれしかないテキストなんだけれど。 amzn.to/2vNZ8GU
2017-08-12 21:44:09読んでいて、やっぱり引っかかるの「黒人音楽」とは何か、「黒人特有」の表現とは何かということで、「エメット作曲の「ディクシー・ランド」にも、とりわけ南部黒人を連想させる要素はない」と書かれていても、その連想させる「南部黒人」像とはいつの時代のもの?と考えてしまう。
2017-08-12 21:49:25連想する主体が現代の私達である場合、連想される「南部黒人」の像はブルーズやR&Bやゴスペルの聴取体験と強く結びつくが、「ディクシー・ランド」が書かれた19世紀半ばには、そんな音楽は存在しない訳だからね。その時代の南部黒人の音楽については、私達はほとんど何も知らない。
2017-08-12 21:53:53「(フォスターは)近在で歌われていた黒人歌謡と触れあうことにより、彼独自の平易な歌曲の世界に通じ〜」「その発想の中心になったのは、スピリチュアルズなどに聞かれる黒人特有の物憂い心の叫びよりも、むしろ彼自身の血筋に忠実なイギリス・アイルランド系の〜」といった記述もむずむずするなあ。
2017-08-12 21:58:53フォスターの聞いた黒人歌謡とはどんなものだったのか? 「スピリチュアルズなどに聞かれる黒人特有の物憂い心の叫び」というのは、現代の私達が認識しているブルーズやゴスペル的な表現をもとにイメージされていないか? 一般読者がさらっと読んだら、まず、そのイメージで捉えるだろう。
2017-08-12 22:02:54でも、フォスターが何から、どのような影響を受けたかを語る時に、現代の私達が認識している「黒人特有の物憂い心の叫び」の表現なんて、無効だよね。19世紀のアメリカの話なんだから。
2017-08-12 22:06:04W・C・ハンディは1903年になるまで、ジェリー・ロール・モートンですら1900年までブルーズを聴いたことがなかった。二十世紀初頭の黒人の音楽家ですらそうだったのだから、私達が考えるような「黒人特有の物憂い心の叫び」に、19世紀前半のフォスターが触れていたはずもない。
2017-08-12 22:56:43シンコペーション、コール&レスポンス、即興性みたいなものは、アフリカからアメリカに持ち込まれた表現として、あったに違いないとは思われるけれどね。が、それとて、アフリカ特有のものではない。
2017-08-12 23:10:123.ジャズもまたラテン音楽の一種、ブルーズはアメリカの発明品
ジャズはラテン音楽の一種です。ブルーズはアメリカの発明品です。 twitter.com/Elis_ragiNa/st…
2017-08-13 20:54:12これとか読んで欲しいけど、もともとジャズにはカリブの音楽の要素もあったり。白(ヨーロッパ)とか黒(アフリカ)とかラテンとか簡単に切り分けられる音楽じゃないんだよなー、みたいな話は昭和では怒られたけど、平成だしもっと共有されて欲しいな billboard-japan.com/special/detail…
2017-08-13 20:52:47ここで「シンコペーション、コール&レスポンス、即興性」と書いたのは、それらはアフロ・ラテン音楽の広く共有されているものだから。アメリカにも奴隷達とともに運ばれたに違いない訳だ。 twitter.com/kentarotakahas…
2017-08-13 20:59:30対して、「黒人特有の物憂い心の叫び」という言葉に僕が引っかかるのは、それがブルーズ的な表現を想起させるものだから。19世紀前半のアメリカの話なのに、20世紀の発明品を想起しつつ、読んでしまう。 twitter.com/kentarotakahas…
2017-08-13 21:06:26なので、19世紀のアメリカの白人の作曲家が、黒人の音楽を聴いて影響を受けたとしたら、それはブルージーな響きよりも「シンコペーション」や「コール&レスポンス」にあったに違いない訳ですよ。
2017-08-13 21:08:59