深海棲艦に育てられた神通さん

コロネハイカラのあとでなんで軽巡棲姫ちゃんが出てこないのかなー、なんて考えてるうちに気がついたら、一筆したためていた
7
深海さかな @dzurablk_kai

今しがた『深海棲艦に育てられた艦娘(神通』という素敵電波が降ってきた ふと思ったんだけど軽巡棲姫の仮面 あれって傷跡とか瞳とか『なにかを隠すためのもの』ではなく、『何もないこと(=自分が深海棲艦ではないこと)を隠すためのもの』なのでは ・・・これってトリビアになりませんか!?

2017-08-17 17:22:13
深海さかな @dzurablk_kai

私には家族というものが理解できない 物心つくと父と母は喧嘩ばかりしていて、家の中を茶碗や拳骨の飛び交わない日は無かったのだから 幼稚園の運動会やお遊戯会も、一人でご飯を食べるのは私だけだった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 17:53:11
深海さかな @dzurablk_kai

両親の喧嘩の原因は、少ないパートの収入で生計を支えている母の稼ぎの少なさや、対照的に定職に就くことなくふらふらとパチンコに明け暮れる父の悪酔いが発端となることも少なくはなかったが、その他の大半を占めていたのは私の存在だった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 17:55:43
深海さかな @dzurablk_kai

幼稚園に入って間もなく、私には特別な軍人さんになれる適正があることがわかった 両親や幼稚園の先生はそのことに大層喜び、特に母などは毎日のようにご近所さんから羨ましがられることを夕食の場で言って聞かせてくれたほどである #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 17:59:28
深海さかな @dzurablk_kai

だがそれから間もなくして、父が変わり始めた 私の国家公務員としてのキャリアと栄光が約束されているかのように仕事を辞めた彼は、昼間から酒を浴びるように飲み、ギャンブルに溺れた そんな彼がギャンブルで負けた時の怒りの矛先が、決まって私だった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 18:01:52
深海さかな @dzurablk_kai

なぜ早くお勤めに出ないのか、なぜお国に奉公しようとしないのか そんなことを罵詈雑言とともに浴びせられる場こそが私にとっての家庭であり、そんな場で育つ私に幼稚園の友達や先生が事あるごとに口に出す家族の愛や優しさ等というものが理解できないのも当然であった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 18:05:39
深海さかな @dzurablk_kai

そんな父と母は、私が小学校に上がる直前に死んだ 詳しくはわからないがどうやら、私が幼稚園に行っている間に街が爆撃に巻き込まれたのが原因らしい 斯く言う私も飛び込んできた爆弾の爆風に吹き飛ばされ、友達というべき人間はほとんどいなくなった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 18:11:19
深海さかな @dzurablk_kai

そんな私を助け、思春期を終えるまで育ててくれたのは、人類が敵として戦っていた深海棲艦と呼ばれる人たちであった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 18:23:41
深海さかな @dzurablk_kai

「なあ、どうするんだよ? こんなん拾ってきて」 顔に真っ白な仮面をつけた彼女は私を見るなりそう言った 「仕方ないでしょ、あのまま手当てしてなかったら死んじゃってたかもしれないのに」 それに答えたのは、大きな大砲を持った黒いロングヘアーの女性 #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 18:41:16
深海さかな @dzurablk_kai

「そんなこと言ったって、ウミウシみたいなペットとは訳が違うのよ?」 そんな凛とした声音は、同じく大きな大砲を持った銀髪の女性からのものだった もう一人、大きな帽子を被って杖を持った銀髪の人もいたが、こちらはほとんど口を開かなかった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 18:45:27
深海さかな @dzurablk_kai

「ああもう!! 手当てだけして捨ててくればよかったのに、なんでこんな本拠地まで連れて来たんだか・・・!! めんどくせえ、いっそ処分してやろうか」 何か金属が鳴る硬い音と共に仮面の彼女に向けられたその筒が、主砲の砲口だと気付いたのは少し経ってからだった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 18:47:27
深海さかな @dzurablk_kai

「やめなさい!」 きょとんとしたままの私の頭上で聞こえたのは、黒髪の彼女の声 「私が責任持って面倒見るし、訓練だってしてみせるから!! ねえタ級、それならいいでしょ!?」 タ級と呼ばれた銀髪ロングの女性はどうやらここでの家長のようらしかった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 18:49:25
深海さかな @dzurablk_kai

そのタ級も考え込む中、沈黙を破ったのは今まで一度も言葉を発しなかったもう一人の銀髪 「・・・いいんじゃない」 「ヲ級がそう言うなら、私も止めはしないわ チ級?」 何か含むところのある視線を仮面の彼女に向けるタ級 #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 18:52:52
深海さかな @dzurablk_kai

「わかった、わかったよ!! もし何か変なことしやがったら、すぐさま海に叩き込むからな!!」 結局チ級も折れることになり、私はこのささやかな家庭の一因となった 私が五歳のときのことであった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 18:54:36
深海さかな @dzurablk_kai

四人との暮らしの場は、南国の小さな島であった さんご礁が隆起して生じた平坦な、密林と椰子と砂浜しかないその小島はかつて軍事拠点として使われていたらしく、そこかしこにコンクリートの大きな箱や小屋の残骸があった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 19:00:55
深海さかな @dzurablk_kai

そこでの生活は、たまに流れ着くコンテナなどを除けばほとんどが自給自足であった 椰子の葉でスコールを集めて飲み水を溜め、ナツメヤシの実を主食に海辺で取った魚を食べる 何もかもが街にいては得る機会の無い新鮮な体験であった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 19:02:57
深海さかな @dzurablk_kai

海に素潜りして魚を獲らなければならない都合上、生活の場はほとんどが夜である そんな一日の始まり、夕暮れの浜辺で取る食事は、決まって五人が一緒だった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 19:05:03
深海さかな @dzurablk_kai

五人で焚き火を囲んで、一日の予定やカンタイコウドウのエンシュウ(この辺の難しい話は当時の私にはよくわからなかった)を話し合いながら、前の日に獲った魚を焼いて食べるのだ 私の先生であるル級が皆の前で私の頭を撫でて惚気るのも決まってこの場 #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 19:09:15
深海さかな @dzurablk_kai

私がルーお姉ちゃんと呼んでいたル級は、私に限らず小さな生き物を拾ってきては可愛い可愛いと自慢する奇妙な癖があるようで、毎日私はル級に教えてもらった「タンショウトウ」や「ゼンエイカンタイ」などの難しい単語や動き(テバタとか言うらしかった)を #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 19:11:26
深海さかな @dzurablk_kai

皆の前で披露する羽目になったわけであるが、その度にルーおねえちゃんは(チ級やタ級が呆れる様など歯牙にもかけずに)私を誉めそやし、頭を撫でてくれた そんな五人の食卓は笑顔と談笑にいつも彩られていて、今まで味わったことの無いほど温もりにあふれたものだった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 19:14:23
深海さかな @dzurablk_kai

見た目に反してまるで同い年の女の子のようにはしゃぐルーお姉ちゃんとは対照的に、ター姉(ねえ)はいつもクールそのものだ 趣味は浜辺に流れ着いた本を読むこと、大抵の訓練計画もター姉が立てる いわば頭脳役である ヲ級のヲっちゃんは相変わらずほとんど喋らない #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 19:57:14
深海さかな @dzurablk_kai

そんななかで私が一番怖かったのが、雷巡のチーさんだった いつも笑わず膨れっ面、それでいて事あるごとに私を怒鳴る男のような声音と言葉遣いの彼女のことは、私も長いことさん付けでしか呼ぶことができなかった #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 19:58:59
深海さかな @dzurablk_kai

そんな四者四様な深海棲艦との、小島での共同生活は狩や勉強、チーさんからの説教といやな事もあったが、とても楽しく充実した日々だった 本土に暮らしていた頃に耳にした深海棲艦は人を食べるだの、調教して下僕にするだのといった根も葉もない噂に反して、 #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 20:01:42
深海さかな @dzurablk_kai

一緒に暮らす四人は程度の差こそあれ、私の実の両親よりも優しく親身であり(チ級もなんだかんだ言って、私が溺れかけたときに助けてくれたこともあった)、それは私が初めて味わえた『本物の家族の暖かさ』でもあったのだ #深海棲艦に育てられた艦娘

2017-08-17 20:03:15
1 ・・ 6 次へ