#18 「深夜の衝撃」<フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 >

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「#17 「秘密の通信」<フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 >」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1138641

2017-08-10 01:24:48
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(俺は片桐、妖怪と戦う高校生だ。今日は森の中に探索と先頭の拠点となる砦を作りに来た。基礎工事は土曜の内に完了し、明日一気に組み立てる予定だ。耐魔力の高い俺達は明日の朝までテントでこれを護衛するのが仕事だ)

2017-08-17 22:29:06
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「ラッタ、替わるぜ」 「頼む」 俺は前を行くラッタから手押し除雪機の持ち手を受け取った。時間は日曜の深夜二時。空は薄く曇っている。俺らが山小屋で寝ている間に少し雪が降ったらしいが、幸い積もるほどじゃあ無かった。今除雪をしてんのは見回りのついでだ。 1

2017-08-17 22:40:37
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俺達が守る砦は頑丈な岩で出来た丘の上にあり、そこから半径数十メートルは雪原で、更にその周りは林だ。砦を中心に東西南北に幅十メートル前後づつ除雪された通路が設けられ、砦付近は作業のために特に広くなっている。「十」の字の真ん中を菱形に切り取った感じって言えば伝わるか? 2

2017-08-17 22:50:18
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この十字路の先は山小屋と櫓に続いている。山小屋は一番近い南のまでが百メートルで、東と西はその倍は離れている。見張り台兼狙撃台である櫓は砦から五十メートルの距離に四つある。砦は勿論、互いの足元近くまでを有効射程内に入れてフォローし合える配置だ。 3

2017-08-17 23:02:02
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俺らはブルーシートで覆われた砦基部の周りの…さっき言った「菱形」の辺りをぐるっと一周しながら雪壁を外へ広げている。これは壁の近くに置かれた砦の資材に雪が被らねぇようにするだけの気休め程度だ。夜中にあんまりデカい除雪車を使うとうるせぇしな。 4

2017-08-17 23:07:03
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資材ももっと真ん中に置けば良さそうだが、これは妖怪との戦いに備えてのことだ。壊されそうになったら壁を爆破なりして雪に埋めちまう。俺達が今除雪してんのと矛盾するようだが、何もねぇならわざわざ雪に埋めたくはねぇ。この資材は全国の神社なんかの木材を再利用してて割と貴重なんだ。 5

2017-08-17 23:13:27
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俺達寝泊まり組の巡回は、二人づつで一周一時間掛けて行い、今は四分の三辺りだ。俺とラッタは二回目の巡回だ。一回目は俺は恵里、ラッタは藤宮先輩と組んだ。何故か恵里にとりとめもない話をめっちゃ振られて辟易しちまったが、今回は静かなもんだ。ラッタの表情から見るに気疲れしてんだろうか? 6

2017-08-17 23:20:55
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「大丈夫か?」 俺は横目でラッタを見たつもりだったが、ラッタは俺の思った場所より数歩後ろにいた。コートを着直そうとしてどっかで引っかかったらしく、歩きながら悪戦苦闘してやがった。いつ転んでもおかしくねぇ。 「危ねぇな。止まれ止まれ」 俺は除雪機を一旦止めた。 7

2017-08-17 23:26:01
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「平気平気!先行っててもいいぜ?」 「いや良くねぇよ。そもそも除雪機持ってねぇほうが護衛役だろうが。俺も危ねぇんだよ」 藻掻いていたラッタの動きが止まった。 「……ごめん」 ラッタは丸まった状態のコートを勢いよくすっと脱ぐと、形を整えてから改めて着込んだ。 8

2017-08-17 23:40:44
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「いいけどよ。疲れてんのか?」 「いや……大丈夫!平気だから!」 ラッタがブンブンと首を左右に振った。 「……そうかよ」 俺は溜息を噛み殺した。ラッタの「大丈夫」は全く信用ならねねぇが、それを言っても平行線になるからやめだ。 9

2017-08-17 23:46:41
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ラッタは例によって昼間も人一倍作業に打ち込んでいた。比喩でなく人の二倍三倍は動いていた。疲れて当然なんだが、止めても聞きゃあしねぇ。昔は俺も同じように動いて負担を減らそうとしたこともあったが、それだと肝心な時に俺までバテちまってダメだった。 10

2017-08-17 23:50:17
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今ではまず好きにやらせて、疲れて動けなくなった辺りで適当フォローしてやるようにしている。 「行くぞ」 「おう」 俺は再び除雪機を動かす。とっとと戻って休ませるしかねぇ。なるべくコイツの次の巡回は後に回してもらおう。 11

2017-08-17 23:53:52
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テントの真北の位置に来た。もう五分で戻る。砦の基礎を挟んで東側のテントに俺とラッタ、久浦、藤宮先輩、幸川の兄ちゃんの男五人。西には恵里と朝来、桐葉さんの女三人だ。常に三人はテントにいて、そのうちの一人づつを寝かせる。女子が巡回に出るときは男側からテントに護衛を回す算段だ。 12

2017-08-18 22:23:16
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ペダルを踏んで舵を切り、除雪機を南へ向ける。この瞬間が転びやすくて危ねぇが、無事に終わった。俺は一息つくと後ろを振り返った。 「ラッタ生きてるか?」 「勝手に殺すなよ…」 ラッタは呆れた顔を見せる。少しは気力が戻ったように見える。 「あんまり喋らねぇからよ」 13

2017-08-18 22:30:03
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「酷いなぁ、もう」 ラッタが苦笑する。その様子を見た俺は、今ならいいかと思った。足を止める。 「なあラッタ」 「……なんだ?」 「お前、今日の作戦のこと何か聞いてねぇか?」 「何かって?」 ラッタは俺を真っ直ぐに見つめ返してきた。 14

2017-08-18 22:50:03
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これは何か答えにくい時の反応だ。割と分かりやすい奴だから、いざって時は逆に気を張ってこうなる。 「……何か別の目的があるんじゃ無ぇかってこったよ」 「別の?」 さも意外そうな顔を見せる。大した役者だが俺には通用しねぇ。 「瑠梨と関係あんのか?」 15

2017-08-18 22:56:03
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「そりゃあ、僚勇会の作戦は全部瑠梨に関係あるっちゃあるだろ」 ラッタは首の後ろ手で手を組んで前に両肘を突き出した。 「そう言う誤魔化しはいい」 瑠梨は僚勇会の所属じゃねぇが、鳥姫神社と僚勇会が深い繋がりなのは本当だ。でも俺が聞きたいのは当然そんな話じゃねぇ。 16

2017-08-18 23:01:59
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最近続いた異変に、会長たち隊長クラスの雰囲気、極め付けに瑠梨の位置が分からねぇ…いや隠されてるときてる。何か裏がある筈だ。少なくとも平隊員には言えねぇ程度のな。 「詳しく答えてくれるとは思ってねぇよ。俺はただ…」 「ハル。鳥姫の巫女を守るのも俺達僚勇会の仕事の内、だろ?」 17

2017-08-18 23:15:11
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「そう…だな」 俺は両頬を張って体を伸ばす。どうかしていた。僚勇会が巫女を危険に晒すわけがねぇんだ。不安の余りに、いつの間にか仲間に疑いに近い気持ちを持っちまってたのかも知れねぇな。今回の作戦の裏に何があろうが、今の言葉だけ聞けりゃあ充分だ。 18

2017-08-18 23:21:05
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俺はテントのある南側に向き直り除雪機の持ち手を握り直した。 「ほら、行こうぜ」 ラッタが俺の肩を叩く。 「ハルも疲れてんじゃないか?」 「かもな」 俺はロックを外し除雪機を再び動かし始めた。 19

2017-08-18 23:28:57
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---除雪機が前に倒れた。 「うぐっ!?」 「うわっ!」 俺もその上に倒れ込む。遅れて鈍い痛みがやってきた。ラッタも俺のすぐ後ろに倒れたみてぇだ。 20

2017-08-18 23:39:18
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突然凄まじい風、いや空気に殴られた様に感じた。一体何だってんだ!?俺は起き上がるとラッタに手を貸しながら起き上がる。 「大丈夫か?…って、え?」 「ああ。…!?」 後ろを振り向いた俺達は二人揃って息を呑んだ。 21

2017-08-18 23:44:59