僕と昼顔しませんか

はち公。 @funkastic_8er

【僕と昼顔しませんか】 1 時刻は0時を回った頃 『そろそろ帰らんと』 バーのカウンターで眠ってた私に 声をかけてくれたのは たまたま気があって 一緒に飲んでいたその人 「はーい！ タクシー呼びマースw」 私はヒラヒラと手を振って それを交わす #僕と昼顔しませんか

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2 『ほんま大丈夫なん？』 その人は 店を出ようとする私を エスコートするみたいに 支えてくれて 「なんか･･･お姫様みたい」 うっかり口走ってしまった。 すると彼は きょとんとした目をして でもすぐ柔らかく笑って 『ええんちゃう？お姫様でw』 #僕と昼顔しませんか

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3 彼はそう言うと 私を見つめたまま 掴んだ手の甲に うやうやしくキスをしてくれて 『さ、お姫様･･･お乗り下さい』 そう言いながら 私をタクシーに乗せた。 ･･･そんな事されたら 言いたくもなるよ 「･･･一緒に、乗らないの？」 って #僕と昼顔しませんか

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4 分かってる。 お互いの 左手の薬指に いかにもな指輪がある事くらい それでも その人私はむしゃくしゃしていたし お酒だけでは それが晴れなかったし （ダメ元。どーせ何も生まれない） そんな 浅はかな誘いだった･･･ #僕と昼顔しませんか

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5 そしたら彼は 楽しそうに笑って 『じゃあ、乗ろうかな』 あっという間に 私の隣に乗り込んだ。 （うそ･･･） 冷静に考えれば ついでに乗って 家に帰ろうとしただけかもなのに 私の低能な頭は その後を期待した。 そして･･･彼もずるかった。 #僕と昼顔しませんか

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6 『10秒だけあげる』 「･･･え？」 『10秒の間に貴方が 行きたい所を言えばいい』 「行きたい所･･･」 『家に帰りたいなら･･･ そこを言えばいい。 俺は適当なとこで降りるからw』 笑いつつ 掴んだ手を握り直す･･･ #僕と昼顔しませんか

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7 「･･･10秒以内に言わなかったら？」 これは･･･駆け引きなのか なんなのか 『言わなかったら･･･ホテル行く』 彼は私の目を見ず 外を見ながらそう答えた。 『じゃあ･･･数えるよ？』 彼のカウントが始まる #僕と昼顔しませんか

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8 『1、2･･･』 どうする私 『3、4･･･』 家に帰る？ 今夜は･･･誰もいないけど それとも 『5･･･』 このまま･･･彼と･･･ 迷った次の瞬間 『運転手さん。 ここから一番近い ホテルまでお願いします。』 彼がそう言った。 #僕と昼顔しませんか

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9 その指示通りに動き出す車 私は戸惑って 「待って･･･まだ10秒じゃなかった」 そう訴えたのだけど 『帰りたいなら ･･･5秒で十分やろ？』 って彼は遮って 『迷うくらいなら･･･ したらええやんか』 私に･･･キスをした。 #僕と昼顔しませんか

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10 そこからは･･･ タガが外れたみたいに 「ん･･･ふ･･･」 降ろされた場所の 目の前のホテルに入って 『ん･･･』 部屋も適当に選んで 「や･･･あっ///」 ドアを閉めた瞬間から 貪るみたいにキスを始めた･･･ #僕と昼顔しませんか

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11 ベッドの上に崩れ落ちて 彼が慣れた手つきで 私を剥いでいく最中･･･ 『俺･･･忠義』 いきなり そう告げた 「え･･･」 『名前知らんのもなぁw』 「あぁ･･･」 『あんたは？』 「花菜･･･」 『かな･･･？』 「うん･･･」 #僕と昼顔しませんか

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12 彼は･･･忠義は 優しく笑って 『可愛い名前やね』 私を安心させるみたいに 頭を撫でながら 『花菜･･･大丈夫 今夜のことは･･･俺が全部悪いから』 私に魔法をかけて 『悪い男に捕まった 憐れな姫になったらええよ』 私を･･･ 貫いた #僕と昼顔しませんか

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13 『花菜･･･花菜っ///』 腰つきに合わせて 彼の綺麗な唇が 私の名前を象る 小学生レベルの漢字で構成された 安っぽい名前が 酷く、綺麗に感じた 「忠義･･･忠義っ///」 そう呼べば 同じ罪を背負っている そんな感覚がした #僕と昼顔しませんか

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14 お互いに 少しずつ 罪悪感を背負って それを上回る 快楽を貪って 『あ･･･いくっ///』 「きて･･･忠義っ･･･」 その夜は 何度も･･･何度も･･･ #僕と昼顔しませんか pic.twitter.com/21VWiZzPRo

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15 翌朝･･･ 体内時計は皮肉なほど正確で 起きなくてもいいのに いつも通り目を覚ます （あ･･･） 眠ってる彼を起こさないように サイドボードに多めの紙幣を置いて （これでいい･･･） 連絡先も何も 痕跡を残さず その部屋を･･･出た #僕と昼顔しませんか

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16 そこからは いつも通り 何食わぬ顔で 家に帰る でも 主人は居なくて いつも通り 朝の家事をこなした頃･･･ 《ただいま･･･》 帰ってきた彼を 出迎えて 《疲れたから寝るわ》 寝室へ 見送った ────そんな日々 #僕と昼顔しませんか

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17 一瞬通り過ぎた 過ちを犯した そんな相手のことは 悲しいかな 忘れていって また 【日常】という 気が遠くなる時間の中に 身を落とす ･･･そうだと 思っていた ────のに #僕と昼顔しませんか

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18 それは あまりにも突然だった ────ピンポーン チャイムが鳴って 外へ出たら 〈初めまして！ 隣に越してきた大倉です！〉 可愛らしい子が ペコッと会釈して その 奥に･･･ 『あ･･･』 「あ･･･」 その人が･･･いた #僕と昼顔しませんか

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19 『初め･･･まして 大倉忠義です･･･』 それは 一瞬 私の上を通り過ぎるはずだった人 『隣に越してきましたので その･･･よろしくお願いします』 こんなことになるなんて 思いもしなかった ･･･たぶん 貴方も そうだったよね？ #僕と昼顔しませんか pic.twitter.com/5Vgr6rmgD4

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20 それから なんとも言えない生活が始まった 《隣、越してきたんやな》 仕事帰りの主人が 私に切り出した時 心臓が大きく鳴った。 「あ、うん･･･ 昼間に挨拶に来てくださったよ」 《そか。俺もさっき 部屋の前であったんよ。》 「そう･･･」 #僕と昼顔しませんか

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21 この人の目に 彼はどう映ったろう 気にしなければいいのに 無駄にそわそわしてしまう 《若いな》 「え･･･そう？」 《あー、奥さんの方な》 「あぁ･･･」 《ご主人は･･･あれや お前と同じくらいかな？》 「･･･どうだろう･･･ね」 #僕と昼顔しませんか

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22 彼は･･･同い年だよ あの夜も やけに話が合うから 『いくつ？』 って聞かれて答えて 『同いやんw』 貴方は笑ったよね ･･･ふと思い出して ぼんやりしていたら 《花菜？》 そう声をかけられて我に返る 「･･･ごめん」 《別に》 #僕と昼顔しませんか

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23 気を取り直して夕飯を用意 「今日は肉豆腐！」 《おう。さんきゅw》 お酒を用意して いざ･･･って時 ────♪♪♪ 「あ･･･信ちゃん」 《･･･ん》 彼は 家にいる時も 仕事用のケータイを切らない 《もしもし》 もちろん、出る #僕と昼顔しませんか

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24 《花菜･･･すまん、急患や》 「･･･うん。大丈夫」 《帰り何時になるかわからへんし 先寝ときや？》 「･･･うん。」 こんなの日常茶飯事 慣れっこだよ 《ほな･･･》 彼を見送って 温めたばかりの料理を タッパに戻して･･･冷やす #僕と昼顔しませんか

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25 彼は仕事を優先する そこには 他人の命がかかってるから それを 否定はできないし 誇らしい仕事なのに･･･ どうしようもなく寂しい夜は クローゼットの奥から あの封筒を取り出す 中身は･･･離婚届 これは･･･結婚してすぐ 彼からもらった #僕と昼顔しませんか