対馬にてカワウソの生息が確認された際、日本人が喜び、反面それが朝鮮半島或いは他地域由来である可能性を恐れた理由

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生命情報保存研究所 @rodan670

長崎県対馬にて、野生のカワウソと思われる生物の映像が撮影され話題を呼んでいる。発見した研究者の見解によると、この生物には①絶滅したと見られていたニホンカワウソ②海峡を泳いで渡ってきた朝鮮半島由来のカワウソ

2017-08-21 21:58:31
生命情報保存研究所 @rodan670

③人間活動の影響を受けどこか他所から紛れ込んだニホンカワウソ以外のカワウソ、という3つの可能性が考えられるというが、この映像を受けて調査を開始した環境省の動向や、メディアの報道具合から見ても、最も関心と期待の寄せられる焦点は、それがニホンカワウソであるか否かにあることは明白である

2017-08-21 22:05:25
生命情報保存研究所 @rodan670

なぜ日本人は、日本に未だにニホンカワウソが生存していたという可能性をこいねがうのか。逆に、もしそれが朝鮮半島あるいはどこか他所に由来する個体であった場合は失望するのか。

2017-08-21 22:09:45
生命情報保存研究所 @rodan670

もし対馬で発見されたカワウソが、朝鮮半島由来の個体であっても、それが一切人間からの影響を受けず、独力で泳ぎ渡ってきたものであるのならば、自然界の営みのなかで誕生した、列記とした日本のカワウソということとなる。しかし、その結末に日本人が納得いかないのは、

2017-08-23 05:50:18
生命情報保存研究所 @rodan670

大陸産のカワウソ(ユーラシアカワウソ)とニホンカワウソとが別種とされている(ニホンカワウソはユーラシアカワウソの亜種)ためである。同じく、日本で野生個体が一度絶滅したトキの場合は、残りの個体数では繁殖の継続が困難であると判断されるや中国からつがい候補をもらい受け、

2017-08-23 05:56:25
生命情報保存研究所 @rodan670

その努力むなしく日本由来個体が完全に消滅してしまうと、今度は中国由来の個体を放鳥することで、日本の国土にトキがいる風景の復元するための努力が続けられているが、この営為に価値があるとみなされるのは、日本産のトキも中国産のトキも同種(Nipponia nippon)だからである。

2017-08-23 06:04:18
生命情報保存研究所 @rodan670

自然界の営為で日本に定住し、長い歴史を紡いできた日本産の個体群が消失してしまった事実に変わりはないが、他の地域からつれてきた同種を無理やりにでも日本に定住させなおすことができさえすれば、それが同種である以上、この事実を有耶無耶にできる余地があると人は認識する。

2017-08-23 06:20:58
生命情報保存研究所 @rodan670

これに対し、独立した種は何万年単位の時間の中で進化の果てに成立する一度失われれば復元不可能な存在であるため、最低限のごまかしも機能しない。仮に自然の営為で日本にカワウソの存在する風景が甦ろうと、それが別種であるなら、人はもといた種をなくした喪失感を埋めることができない。

2017-08-23 06:38:45
生命情報保存研究所 @rodan670

対馬にてカワウソの映像が撮影された事で日本人が示した喜びと、それが朝鮮半島あるいはその他地域由来のものである可能性に対する警戒は、この喪失感及び、自らの手で独立種という財産を消滅させてしまったという罪悪感に由来するものである。

2017-08-23 06:44:52
生命情報保存研究所 @rodan670

ニホンカワウソは2102年に環境省から絶滅指定を受けた、日本ではもっとも新しい絶滅種であり、1979年ごろ撮影された生きた個体の映像も現存している。100年以上前に絶滅し、剥製しか残っておらず、半ば伝説上の存在と化してしまったニホンオオカミと比べると、あくまでつい近年まで

2017-08-25 07:55:51
生命情報保存研究所 @rodan670

同じ時間をともに歩んできたはずの、記憶にも鮮明な「同輩」であり、その同輩がいつの間にか我々の乗っかる時間軸上から零れ落ちてしまっていたことに対し、リアルタイムで生じた種の絶滅という現象を生々しく思い知らされる。

2017-08-25 08:05:29
生命情報保存研究所 @rodan670

ニホンカワウソは絶滅してしまえば、その時点を境に以後自分たちの身を収めることのできる時間軸を喪失するが、我々は我々で自分達が乗っかる時間軸からこれまで存在していたはずのニホンカワウソというパーツを喪失する。この意味で我々の時間軸はわずかにではあるが確実に色あせる。

2017-08-25 08:08:13
生命情報保存研究所 @rodan670

環境省が2012年にニホンカワウソを絶滅種に指定した後も、愛媛県は同種を絶滅危惧種に据え置いたまま絶滅を認めていないこと、時折報告される証拠不十分な目撃例、及びニホンカワウソの生存が最後に確認されたとされる高知県須崎市が

2017-08-25 08:16:54
生命情報保存研究所 @rodan670

「ニホンカワウソの友達を捜すために、日本全国の旅をしている」という設定のゆるキャラ、「しんじょうくん」を生み出したことなどの背景には、我々が我々の乗る時間軸からニホンカワウソという一要素を喪失したという事実を認めたくないとする心理作用が少なからず関与している。

2017-08-25 08:20:15
生命情報保存研究所 @rodan670

しかしここへきて、もし対馬にて本当にニホンカワウソが生息しているとなれば、日本人がここ2,30年ほど抱え続けてきた心のしこりは一気に氷解する。ニホンカワウソという独立種が絶滅してしまったという認定は我々の早とちりにすぎず、ニホンカワウソという同輩は一度も我々の乗る時間軸から

2017-08-25 08:28:52
生命情報保存研究所 @rodan670

零れ落ちることなく絶えず傍らに在り続け、その意味で我々は何も失ってはおらず、我々の記憶にあるここ数十年の歴史は、即座にニホンカワウソという「色」を取り戻す。もちろん、仮に対馬で確認された個体がニホンカワウソであったとしても、列島本土の各地に生存していたはずの個体群の系譜と

2017-08-25 08:33:19
生命情報保存研究所 @rodan670

その個体群が一構成員を務めてきた生態系とが失われてしまった事実に変わりはないが、それでもトキの例で見られた人工繁殖を通じた最低限の「あがき」にていつしか原状回復につながるかもとの希望は生まれる。その過程で日本人は、自らのエゴのためにともに歩んだ同輩を滅ぼしかけたという罪悪感からも

2017-08-25 08:40:06
生命情報保存研究所 @rodan670

解き放たれることができる。対馬にて野生のカワウソが生息していることが確認された際、日本人が狂喜し、反面それが朝鮮半島及び他地域由来の個体である可能性に怯えたのは、その発見が単なる生物学上の出来事にとどまらず、数十年来に及ぶ日本人の心の利害に直結しているためである。

2017-08-25 08:46:11