密猟の取締と動物保護で苦しめられる人々『ぼくの村がゾウに襲われるわけ。: 野生動物と共存するってどんなこと?』レビュー

本当に保護が必要なのは何なのか (しかし、アフリカの獣害はスケールがでかい)
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波島想太 @ele_cat_namy

【本棚登録】『ぼくの村がゾウに襲われるわけ。: 野生動物と共存するってどんなこと?』岩井 雪乃 booklog.jp/item/1/4772613… #booklog

2017-08-23 16:25:01
波島想太 @ele_cat_namy

(人間社会に疲れたので動物ものでほのぼのしようと思ったけど不穏な予感しかしない)

2017-08-23 16:25:53
波島想太 @ele_cat_namy

中学生の頃に「貧しく知識のないアフリカの人たちは、貴重な動物を密猟して食べてしまう。これをやめさせるにはどうしたらいいだろう?」と漠然と考えていた著者が、大学院生になり研究者としてアフリカに渡って見たものは何か、考えたものは何か。一緒に見ていこう。

2017-08-23 16:31:44
波島想太 @ele_cat_namy

野生ゾウの襲撃で犠牲者15人、射殺も視野に インド環境当局 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News afpbb.com/articles/-/313… そういやつい最近こんなことがあったばかりですね。

2017-08-23 16:36:18
波島想太 @ele_cat_namy

この本の舞台はタンザニアだ。国立公園や猟獣保護区に程近い村を大量のゾウが襲う。警察が車で追い払おうとしたが逆に車に襲いかかる始末。どうにか一頭を銃殺して追い払った。 メシャキ君の家と学校の間のため池にゾウが現れたため、学校に行けなくなった。勇敢に吠えかかる犬は鼻で叩き殺された。

2017-08-23 16:44:01
波島想太 @ele_cat_namy

ゾウは夜に村の畑へやって来るため、大人たちは毎晩寝ないで見張り番をする。火や大きな音で追い払おうとしてもゾウは恐れない。逃げても追いかけてきて、鼻で叩きのめされるか、踏み殺されるかである。

2017-08-23 16:48:27
波島想太 @ele_cat_namy

もともとこれらの村では自由に森に入って動物を狩っていたが、ある日政府の役人がやって来て動物保護区になったこと、そこで動物を狩ってはいけないことを告げられた。 だがそこのゾウに畑を荒らされても、殺されてもなんの補償もない。

2017-08-23 16:49:50
波島想太 @ele_cat_namy

中には村全体が保護区の中に入ってしまい、移住を強制された人たちもいた。警察と軍隊がやって来て、トラックで家畜を運びだし、家には火をつけ燃やしてしまった。ここでも補償はなかった。

2017-08-23 16:53:26
波島想太 @ele_cat_namy

これはタンザニア北部のセレンゲティ国立公園の話で、1951年にイギリス植民地政府によって設定された(またイギリスか!)。ユネスコの世界遺産にも登録されている。アフリカの他の保護区も植民地支配の歴史と深く関わっている。目的のひとつが観光である。

2017-08-23 16:59:48
波島想太 @ele_cat_namy

今でこそ動物観察が主流であるが、かつてはハンティングも呼び物のひとつだった。セレンゲティ国立公園ももとは猟獣保護区であり、一頭いくらという形でハンティングできた。ゾウやライオンのような食物連鎖の頂点にいる動物は、保護するだけでは増えすぎてしまうのでこれも収入源にしているのだ。

2017-08-23 17:03:55
波島想太 @ele_cat_namy

国立公園に格上げされたセレンゲティではもう狩猟はできないが、他の場所では猟獣保護区が残っていて、外国の富裕層が利用するのだという。 この事はまたあとで触れるとして、先に「密猟者の村」の話をする。

2017-08-23 17:06:29
波島想太 @ele_cat_namy

さてタンザニアのセレンゲティ国立公園に接するイコマ族のロバンダ村は、国立公園の職員からは「密猟者の村」と呼ばれている。まあ大体想像できるが、要するにこの村の人々は国立公園に指定される前からこの地に住み、草原を駆け回り、動物を狩って暮らしていた。

2017-08-24 11:14:27
波島想太 @ele_cat_namy

イコマ族の他にマサイ族、スクマ族がいて、争ったり助け合ったりしながら、「人間の大地」セレンゲティ平原に生きていた。それが「野生の王国」セレンゲティ国立公園にとって変わられたわけである。白人支配者の都合で。

2017-08-24 11:18:34
波島想太 @ele_cat_namy

サバンナで降雨は不安定とはいえ畑も貴重な収穫で、ソルガムやトウモロコシなどを育てている。ソルガムに実がなる五月頃になると、それを狙って鳥がやって来る。これらの鳥を追い払うのは子供の仕事である(最近は学校を優先させる家庭も多い)。日本も江戸時代の絵に鳥を追い払うの子供の姿があった。

2017-08-24 11:23:57
波島想太 @ele_cat_namy

ウシやヤギ、ヒツジを牧草地に連れていくのも子供の仕事だったが、これも近年は学校を優先で、手伝うのは休日になる。彼らにとって家畜は食料であり財産である。日本では銀行に「貯金」するが、貨幣の信用が弱いタンザニアでは、周辺の紛争でもすぐにお金の価値が落ちてしまう。

2017-08-24 11:28:07
波島想太 @ele_cat_namy

それに比べれば家畜の価値は安定しているし、うまく飼育すれば増えてくれる。水と草があればよいから、労働以外の元手はほとんどかからない。病気や進学などまとまったお金が必要なときには売ることもできる。結婚するときには男性が女性の家へ牛を贈らなければならないという風習もある。

2017-08-24 11:32:02
波島想太 @ele_cat_namy

牧畜や畑作では不足する食料を、人々は狩猟で補った。特に干ばつの年は村の近くにやって来るヌーなどを狙う。狩りはイコマの男の仕事であり、誇りであった。子供の頃から弓矢で遊び、成人式には実践用の弓矢が与えられる。

2017-08-24 11:37:43
波島想太 @ele_cat_namy

1951年にセレンゲティ国立公園ができて草原での狩猟が禁止されても、イコマの人々は生きるために狩りを続けてきた。しかし1989年にアフリカ象保護政策が国際的に強化され、取り締まりが厳しくなって狩りをする人は減っていった。男の子が狩り遊びをすることもなくなった。

2017-08-24 11:40:02
波島想太 @ele_cat_namy

タンザニアのセレンゲティ国立公園周辺で狩りをしなくなって、10年ほど前(2007年頃?)からゾウが村の畑を荒らすことが多くなった。回数も面積も年々増加している。人間が狩りをしなくなって、野性動物が人間を恐れなくなったのが理由のひとつと考えられている。

2017-08-25 10:48:51
波島想太 @ele_cat_namy

厳しい自然の中で畑を耕し、種をまき、雑草を抜き、日照りが続けば神に祈る。ようやく実って収穫というときに、朝畑に行くとすべて食べ尽くされ、踏み荒らされた残骸がそこにある。そんな状態で「象なんて大嫌い!」という気持ちを抱くのは当然である。

2017-08-25 10:52:25
波島想太 @ele_cat_namy

この辺りの人々はほとんど畑作で自給自足の暮らしをしており、保護区に接している地域ではほぼすべての世帯がゾウの被害を受けている。最初は数頭だったのが、今では200頭もの大群で押し寄せてくるのである。2015年、イコマの村では6人がゾウに殺された。ゾウは怒ると凶暴化するのである。

2017-08-25 10:55:49
波島想太 @ele_cat_namy

人間がゾウを殺すと警察がやって来て大騒ぎになるが、ゾウが人間を殺しても政府はなにもしない。猟獣保護区ではお金を払えばゾウを狩猟できるところもあるが、セレンゲティの保護区ではアメリカのホテルが許可証を買い占めて保護しているので現地の人は手が出せない。

2017-08-25 10:58:29
波島想太 @ele_cat_namy

ゾウを追い払うのに銃が使えないので、村人は光と音で応戦する。懐中電灯の光をいやがるので、なるべく強力なものを入手した。サッカーW杯で有名になったブブゼラもゾウを脅かすための武器だ。しかし音については慣れてしまって効果が薄れてきているという。光も少し離れるだけで、すぐ戻ってくる。

2017-08-25 11:03:09
波島想太 @ele_cat_namy

なぜタンザニアで「人命軽視の動物保護」になってしまったのか。タンザニアには国立公園と猟獣保護区という二つの保護区がある。「ンゴロンゴロ保全地域」というしりとりで活躍しそうなものもあるがこれは特殊なのでひとまず割愛する。

2017-08-25 11:15:15
波島想太 @ele_cat_namy

国立公園はタンザニア国立公園公社が、猟獣保護区は野性動物局が管轄する。 国立公園は世界中からの観光客の入園料や動物、自然保護団体からの寄付で豊富な資金力を持ち、密猟防止のパトロールを厳しく行っている。 野性動物局は政府組織の一つで、保護区を民間の狩猟会社に貸し出して利用料を取る。

2017-08-25 11:19:56