日向市サーファー動画に対する清水晶子先生のコメント。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

これがほのぼの観光動画的に語られてるのを目にしたのだけれど、確かに宮城のアレとは比べ物にならないとは言え、これはかなり微妙では。数年前にUKで炎上した「ビーチ向きボディになってる？」という広告と通じるところがあると思う…。 youtube.com/watch?v=WsMU4O…

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SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

→ 俳優さんに減量と筋トレをしてもらった結果、身体のビジュアル的な変化が前景化してしまうの、とても残念だと思う。外見は全く変わらなくても、本人が楽しそうで、新しい面白いことを見つけて失恋の痛手から回復しましたっていう、観光動画としてはそれだけの方がむしろよかったのに。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

プロのサーファーでプラスサイズモデルでもあるBo Stanleyによる、「サーフィンの似合うカラダ」みたいな発想はやめない？という話。 athleta.net/2017/07/20/7-w…

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

あの動画はインドアかアウトドアかの二者択一は避けているし男性ジェンダーを根拠とする差別もないと思いますが、楽しさなり自己肯定なり達成なりの物語を健康になった身体で表現しただけという主張については、それを特定の体型変化と結びつける必要ある？ましてそこ「健康」関係ある？とは思います。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

→研究者として関心領域の中心の一つが「身体（のイメージ）」なのでここしつこく気になるわけですが、宮崎のPR動画（それ自体はそれなりにリスクヘッジの試みがされてる）の問題のなさを主張しようとするフェミ垢系の議論の一部が健常主義に基づくルッキズムに傾き始めているのはちょっと辛いなと。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

わたし美女と野獣とか蛙の王子様とか女子が美人は前提になっててそれはフェミ的にも批判されてるけど実は男子も最後は魔法が解けて野獣や蛙から見目麗しい王子様に戻る必要があり結構外見規範キツいよねという話を修論の枕にした程度には基本的にハッピーエンドが「外見の向上」を伴う筋立てが苦手で。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

1. 宮崎のサーフィン動画の件、個人的に気になる話なのでしつこくw あの動画のどこにルッキズムの可能性を見るのか（あるいは見ないのか）についてかなり意見が割れるようなのでわたしの見方を書いておきます。ちなみにルッキズムの定義はOEDによれば「外見に基づく偏見や差別」。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

2. 外見の評価基準（どのような外見が「良い」のか）と、「外見の良さ」が要請される様態（誰が、いつ、より強くそれを要求されるか）とに、セクシズムやレイシズム、エイジズム、健常主義、階級主義などが織り込まれがちであることで、ルッキズムは既存の差別構造としばしば密接に関連します。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

3. で、例の動画ですが、あの動画はかなり気を遣って巧みに作られているとはいえ ①動画自体がルッキズムを利用していることは否定し難く ②さらに、動画では明示されずしかし前提とされているルッキズムが動画を擁護する見解の中で表面化している例が見られる、とわたしは思っています。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

4. まず①動画自体のルッキズム利用。「海が似合う／似合わない」の台詞は嫌な感じですが、動画全体のルッキズムは必ずしもそこには由来しません。個別のセリフは動画全体の筋書きや構造の中で意味を持つからで、ここでは「ほっといてください」が一応緩衝材の役割を果たすことを期待されています。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

5. より大きな問題は動画の最後「海が似合うようになった」の下りの構成です。ここまでは、主人公が地元の人々と交流しネット仲間からもからかい混じりの励ましを受けサーフィン習得に励む様子が描かれているのに、ここで突然その筋書きと無関係な外見に焦点があたり、ビフォアアフター画像が入る。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

6. 言い換えれば、動画は、体型改造や痩身を売り込むのに典型的に使われるイメージを利用しつつ、それまでのお話のまとめに入るわけで、したがってこれが最も中心的な視覚的メッセージになる。仲間もできたかもしれないし楽しいこともあったかもしれない。でも最大ポイントは見た目の変化！という。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

7.「動画のポイントは海を楽しむようになったこと／新しい挑戦を成し遂げたことなどの成長の描写にあって、外見の変化はそれに付随した結果に過ぎない」という読解もあるようですが、問題は、なぜこの動画はこれらの「成長」を「体型変化」という視覚的記号で表現することを選択したのか、です。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

8. 日向海岸に来てサーフィンをするのは良い／楽しい経験だよ！というのが動画の主張です。これはもちろん問題ありません。問題は、その「良さ」を特定の身体獲得として視覚化し、それを「成長」と名付けたことで、そこにルッキズムの利用がない、と主張するのは難しい気がします。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

9. ここまでは ①動画自体の構成に明示的にあらわれているルッキズム利用ですが、もう一つ、②動画では明示はされずしかしおそらく微妙に前提とされているルッキズムがあり、これが動画を擁護する議論の中で表面化している例があるように思います。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

10.動画が主人公の体型変化に注意を促すのは、「心身ともに元気になった／安定した／自己肯定ができた／健康になった etc.」ことの表現だという議論が、それです。ここでは二つの問題が起きています。一つは、特定の身体を「心身の安定／健康（あるいはその欠如）」に結びつける点。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

11.もう一つは、サーフィンという経験のもたらす「成長」を「健康になること」に結びつけてしまう点です。この二点を合わせると、この動画では、サーフィンを通して心身ともに健康になる（「成長」する）ことが、特定の身体の獲得として表現されている、ということになる。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

12.「外見が良くなってモテたりすることが重要ではないから」これはルッキズムとはいえない、という見解も見かけましたが、それは違います。むしろ「健康さ」と結びつけられる特定の身体こそを望ましいとみなすのは、モテ云々とは無関係に、エイブリズムに裏付けられたかなり有害なルッキズムです。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

13. 繰り返しますが、動画はこの点は明示的に描いているわけではない。けれども、このようなルッキズムをオーディエンスが共有していることはある程度期待されているはずです。動画を擁護する議論が、このようなルッキズムを意図せずして正当化してしまうとしたら、それは困ったことだと感じます。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

衝撃のビフォーアフター！宮崎県日向市の海で内気なネットサーファーが“リアルサーファー”に大変身！？PR動画『Net surfer becomes Real surfer』を本日より公開！｜宮崎県日向市のプレスリリース prtimes.jp/main/html/rd/p…

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

動画製作者の意図、あるいは動画の構成その他の情報から読み取りうるメッセージとは別の、「勝手な妄想」的読解はそれはそれで非常にパワフルな文化実践であり、全く構わないのですが。ただとりあえず、動画制作側の「市」や制作した「電通」の理解はこんな感じですよ、と。 twitter.com/akishmz/status…

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

→ 「宮崎のサーファー文化に都会人のルッキズムを投影するな」と言った見解も拝読しましたが、「衝撃のビフォアーアフター」「さえない青年」「イケメンサーファー」「日焼けして男らしい「リアルサーファー」に」などのプレスリリース文を読む限り、投影があるとしたらそれは見る側ではなく制作側。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

→ あと、これは私誤解していたような気がしますが、これおそらく観光PR動画というわけではないですよね？むしろ移住を念頭に置いた地元PR動画なのかな、と。サーフィンできるようになるまで滞在って贅沢な休暇だなとちょっと気になっていたのですが、移住ということならそこは意味が通る。

SHIMIZU Akiko（清水晶子） @akishmz

→ それと、なんかもう当たり前すぎて確認するのもあれなんですが、一連のツイートで私は「サーフィンというスポーツ（あるいはサーファーのコミュニティ）」について判断を下しているわけではなく（そこは私には知識がないので）、日向市が電通に委託して制作した特定の動画について話しています。