アユミまとめ

アユミ=サンの記述を抜き出してみた
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まとめ トーメント・イーブン・アフター・デス #2 ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867 38372 pv 1
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「サイコパスめ。ずっと見ていやがったのか。サイコパスめ」「まずは足の指から行くか、タキ=サン」「待ってくれよ、少し……」ドクン……ドクン……ぐるぐると回る二者の会話は徐々に遠ざかり、心音がニューロンに木霊する。停止に向かう弱々しい心音が。焼け焦げた身体を包む焼け焦げた装束。闇。

2016-10-06 00:40:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(治れ)ニンジャスレイヤーは唸った。毒づこうとした。(治れ。クソッ。治れ……何故……)痛みすら感じなかった。死だ。死が巨大な骨の爪となって彼を捉える。(まだ戦う……)(((ウカツ……)))(まだだ……!)(((なんたるウカツ……)))(戦わせろ!おれを……おれはニンジャを……!)

2016-10-06 00:43:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは……マスラダ・カイは、抗うように片手をかざした。「嘘だ」マスラダがかざした手を、アユミが掴む事はなかった。彼の目の前でアユミが血の海に崩れてゆく。マスラダは己を見下ろす。なぜ生きている。胸に穴があいている。「嘘だ。何故」マスラダは震える。「何故、俺なんだ」

2016-10-06 00:50:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アユミ。血の海。散らばるオリガミ。マスラダのオリガミだ。血で赤く染まる。マスラダは血の涙を流す。「何故、俺が生きてる」何度も問い直す。「なぜ俺だ、なぜ俺が生きて」何度も問い直す。「なぜアユミが死んでいる」何度も問い直す。マスラダを貫いたスリケンが、アユミの胸に墓標めいて。

2016-10-06 00:54:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

両膝をつく。視界がぐらつく、そして、踵を返す瞬間のあの男の眼差しが焼きつく、「サツガイ」……忘れるな。容赦なく消えてゆく記憶の断片をかろうじて掴み取る。忘れるな。サツガイ。サツガイ。サツガイ。サツガイの眼差し虚無、いや、侮蔑だ、いや、悦んでいる……(((殺すべし)))遠い声。

2016-10-06 00:58:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なぜ生きている」(((殺すべし)))「サツガイを」(((殺すのだ)))「殺す……!」(((ニンジャを殺す!)))「ニンジャを!」マスラダは叫んだ。眼前に不定形の炎が熾った。その者はじろりとマスラダを見た。そしてアイサツした。(((ドーモ。はじめまして。ナラク・ニンジャです)))

2016-10-06 01:02:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何故生きている」(((ニンジャを殺す為だ)))ナラクが答えた。「何故アユミが死んだ。何故おれが生きている」マスラダは責めた。「おれが死ぬべきだったのに!」(((名乗れ。アイサツせよ)))怒気がマスラダを打ち据えた。マスラダはアイサツを返した。「……ドーモ……マスラダ・カイです」

2016-10-06 01:08:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴウ。ニューロンが風を切り、映像記憶が散り散りになった。マスラダとナラクはいまだ対峙していたが、その後ろに見えるのは、椅子に縛られたタキと、彼をさいなむストリングベンドだった。そして、ブザマに倒れ伏した己自身の姿だった。映像はおぼろで、時間はほとんど静止して見えた。

2016-10-06 01:10:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダは目の前のナラクを見た。やや遅れて気づいた。はじめてナラクが現れた瞬間の記憶がフィードバックしていたことを。ドクン。心臓が打ち、視界一杯に、血の中のアユミが、スリケンが閃いた。「ヤメロ!」(((忘れるな、マスラダ。思い出せ。何度でも。火をくべよ。何度でもだ)))

2016-10-06 01:12:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「苦しい」マスラダは呻いた。(((然り。ニンジャだ。ニンジャがオヌシをこのジゴクの責め苦に落とした。忘れるな。儂が何度でも思い出させてやる)))「サツガイ……サツガイが、アユミを。何故おれが生きて。何故アユミが」(((サツガイというニンジャを殺したいのだろう。させてやる)))

2016-10-06 01:17:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「死ねない」(((然り。ニンジャを殺すのだ)))「傷が……」(((火をくべるのだ、マスラダ。思い出せ。執着がオヌシに立ち上がる力を与える。忘れるな)))「なぜ、おれが死ななかった!」(((ニンジャ、殺すべし!)))不浄の炎が焼け焦げた肉体を駆け巡る。血流が蘇る。筋肉が蘇る。

2016-10-06 01:20:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

装束が蘇る。ブレーサー(手甲)が蘇る。メンポが蘇る。火と血が混じりあい、すべてを復元する。「忍」「殺」の文字が燃える。(((あれはコウボウ・ジツ。熱と光を捻じり込み、敵を焼くジツだ。グググ……この程度で死んでおればこのさき千度死んでもサツガイには至らぬぞ。執着せよマスラダ!)))

2016-10-06 01:24:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何故おれが」マスラダは血の涙を流した。(((ニンジャ、殺すべし!執着し、力を無限に引き出せ!)))ナラクの哄笑がニューロンを激しく揺らした。マスラダは右腕を掲げた。赤黒い炎が蛇めいて巻き付いた。炎の縄の先端には禍々しい鉤爪が備わっている。鉤爪が手首を噛み、マスラダは拳を握った。

2016-10-06 01:28:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(何故おれが……)ナラクは答えない。(何故おれを死なせなかった、ナラク!ナラクは答えない!マスラダのまわりで現世の時間が流れ始めた。ストリングベンドは驚愕の眼差しで見返し、身構えた。マスラダは燃える目で睨み返した。そして先手を打ってオジギした。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」

2016-10-06 01:31:00
まとめ マーセナリイ・マージナル #1 ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867 25079 pv 10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダがマッチを擦って火を灯し、それをオリガミに移していくのを見て、アユミは驚きに目を見張った。「ちょっと、何をしてるの!」「なにが」マスラダも逆に怪訝そうにアユミを見返した。金属の盆の上で、アブストラクトな水晶枝めいたオリガミ作品は燃え萎びてゆく。「もったいない!」「何?」

2016-10-13 22:20:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だって……作品が」「作品?」マスラダは灰溜まりと化したオリガミを見た。そして合点がいった。「ああ。そういう事か。成る程」「でしょ」アユミは持ち上げかけた木箱を下ろした。マスラダは頷いた。「作品として出さないオリガミはその場で灰にする。万一これが市場に出れば俺の作品が値崩れする」

2016-10-13 22:25:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そういうものなの」「そういうものだ」マスラダは肩をすくめた。「他の分野は知らないが、少なくとも、おれはそうする。周りの連中も。特に注意深く扱うんだ」彼は薄く透ける正方形の紙をつまんで見せた。「凄い技術で作られたワ・シだ。だけど、これは単なる素材だから、二束三文」「うん」

2016-10-13 22:31:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダは長い指を紙の表面に滑らせた。すると、一秒後、彼の手のひらの上にあったのは、歩きながら振り返った姿勢で凍り付いた鳩だった。アユミが息を呑んだ。「……ただの紙を、おれがこの形にした。これで価値が生まれた。おれという人間と、おれの技術と、注意深い取り扱い。意味と価値になった」

2016-10-13 22:38:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「凄い」アユミがおそるおそる鳩に触れた。マスラダは言った。「別におれはカネモチになりたいわけじゃない。カネ、好きだけどな」微かに笑い、「意味と価値を壊すのは容易いんだ。だけど、おれはおれの作品にしかるべき敬意を求める。カネのやり取りは一番公正な敬意の尺度だ。だからそれを守りたい」

2016-10-13 22:45:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダは鳩を金属の盆に乗せ、やはり火を灯して灰に変えた。アユミを見て、問いかけるように首を傾げて見せた。アユミは苦笑した。「どうしても勿体ないと思っちゃうけど、わかった」「誠実に話したつもりだよ」マスラダは真顔で言った。アユミは頷いた。「本当に立派だ、カイは。私なんか平凡で」

2016-10-13 22:48:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「平凡かどうかは知らないけど、アユミは凄いだろ」マスラダはチャに手をつけた。アユミが淹れてくれてからだいぶ経っており、ぬるくなっている。「それに、おれは立派じゃない。少なくとも、まだ立派じゃない」ようやくオリガミ・アート市場で買い手がつくようになった。ほんの最近のことだ。

2016-10-13 22:53:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

今度の個展にはセバタキ・ケンロが来る。セバタキの方から、わざわざ声をかけてきたのだ。お前のオリガミに幾つか、油断ならないアトモスフィアを持つ作品があった。次は展示を直接見に来る。セバタキはマスラダにそう言った。個展は黒字と赤字を行ったり来たりだ。ブレイクスルーできるかもしれない。

2016-10-13 22:58:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私は凄くないよ」アユミは木箱を持ち上げた。「これ、外の配管の脇でいいね」少し日に焼けたしなやかな身体に正しいエネルギーを感じる。マスラダは伸びをして、凝りをほぐした。「義父さん、きっとカイのこと喜んでる」「思うのは自由だな」マスラダは次のワ・シに触れ、割れたボンボリを折る。

2016-10-13 23:05:30
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