#20 「妖の大砲撃②」<フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 >

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まとめを更新しました。「#19 「妖の大砲撃」<フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 >」 togetter.com/li/1142305

2017-08-23 01:02:39
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(前回のあらすじ:深夜二時。北の空から飛来した巨大な物体は、一軒家ほどの大きさがある巨大な岩だった。北の櫓で警備に当たっていた僚勇会最強の狙撃手、笹田の活躍によりこれは粉砕出来たものの、破片により櫓がダメージを受けてしまう。更にそこへ再び巨岩が飛来した!)

2017-08-24 23:53:05
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フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 #20 「妖の大砲撃②」

2017-08-24 23:56:38
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笹田が受け取った対物ライフルは魔力を込めにくい為、妖怪の中でも実態の薄いものには効きにくい。翼が持っていたのは彼の魔力量が少なく、その制御も苦手だったからだ。一方でこの武器は戦車をも砕く破壊力がある。今ほど活きる時はない。あの岩自体は、多少の魔力は感じるもののただの岩だ。 1

2017-08-25 00:00:15
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笹田が手摺上の銃座に載せてライフルを撃つ。床を踏みしめ反動に耐える。衝撃で見張り櫓が激しく揺れるが、先程のように近距離で砕けば衝撃はこの比ではない。ましてや直撃すればどうなるか。揺れに構わず即座に次弾を撃つ。不安定な足場からの狙撃とは思えないほど正確に初撃の着弾跡に命中する。 2

2017-08-25 00:14:57
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たったの二撃で、そして先程より遠くで岩が割れた。破片も櫓まで届くのは細かいものが殆どのようだ。 「やった!」 白瀬は快哉するが、笹田は厳しい表情で首を振る。 「俺たちも散開だ。いつまでも守り切れない」 北の空を睨み付ける。三撃目はまだ来ないが、これで終わりの筈はない。 3

2017-08-25 00:22:30
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「敵の正体と狙いは何でしょうね…」 周防翼は皆が抱いていた疑問を声に出す。 「さっきのは俺も迎撃がやっとだったから分からないが、少なくとも二発目はここ狙いじゃあなさそうだ。もっと南に飛ぶ筈だったと思う」 あれ程の巨大物の軌道となると、笹田にも予想は難しい。 4

2017-08-25 00:26:30
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「じゃあ砦ですかね?」 「どうだろうな…俺たちには重要でも妖怪にとっては…来るぞ!」 白瀬と周防が身構え、笹田の視線を追う。 「……あっ!」 二人は笹田より二秒ほど遅れて、三つ目の岩を発見した。雲の向こうの月から振ってきたかのように、黒い影が大きくなっていく。 5

2017-08-25 00:30:29
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今度の軌道と予測進路ははっきりと分かった。間違いなくこの櫓付近に落下する。 「散れ!」 「はい!」 「笹田さんは!?」 「撃ったら行く!」 二人が東西に飛び降りるのと同時、笹田は対物ライフルを発射した。岩の破片でダメージを受けた櫓のあちこちが射撃の反動で、嫌な軋み音を上げた。 6

2017-08-25 00:35:23
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三十秒前。休憩室。 「うぎゃはぁっ!?」 卯野義子は直前まで座布団の上で足を崩して船を漕いでいたが、初弾の岩が砕けた衝撃で真正面につんのめった。 「痛っ!」 「いだぁっ!?」 運悪く爆音に飛び起きた鮎川時雨と義子の額が正面衝突した。時雨は横に、義子は後ろへとひっくり返る。 7

2017-08-25 00:42:43
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更に折悪しく義子の方に倒れかけていた衝立に後頭部がぶつかる。 「うぐへ!?」 大した痛みでは無かった筈だが、妙な呻きを上げると衝立を下敷きに後へ倒れる。 「何だ何だおい大丈夫か!?」 重徳は揺れる床に戸惑いながらも、喧しく悶える後輩の元へと半ば飛び跳ねながら駆け寄る。 8

2017-08-25 00:52:58
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その時、頭上から声が響いた。上の見張り台から繋がる伝声管だ。 『三人共大丈夫!?北から岩が飛んできたんだ!岩!車か家くらいの!笹田さんが撃ち落とした!』 早口で告げる白瀬の呼吸は荒い。 「マジかよ」 重徳は未だ揺れる天井を見上げた。 9

2017-08-25 01:04:15
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『……また来る!先に逃げて!』 伝声管が閉じる音がした。閉じなければ、轟音で休憩室内での会話は出来なくなる。 「聞いたな!?お前ら、武器忘れんなよ!」 重徳は自身の武器と荷物を持つと二人を鼓舞する。 「了解」 頷いた時雨は一見平静なようだが、額には一筋の汗が流れている。 10

2017-08-25 01:12:13
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休憩室の左右、すなわち東西には非常口がある。降下用の救助袋も一応あるが、戦闘員の彼らにとっては、ワイヤーガンで近くの木へと飛び移ったほうが早い。。 「はぁい!」 義子は南側へと駆け出す。そちらには梯子しか無い。 「馬鹿!こっちだ!」 重徳は東の口へ義子を促す。 「はい!」 11

2017-08-25 01:14:06
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「荷物!」 「はい!」 義子は部屋の西側に置いたままの荷物を取りに走ると、東の非常口へと取って引き返した。 「……」 西の非常口を開けて待機していた時雨が止める間もなかった。 「そこまで行ったらそっちから出ろよ!」 「すみません!先輩を一人にしちゃいけないと思って!」 12

2017-08-25 01:17:05
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重徳が溜息をつくと同時、二つ目の岩の破片が北の壁を雨のように叩く。時雨はドアを一旦閉めた。 「これが止まったら出ましょう」 「だな。おい義子、頭と足元気ぃつけろよ」 「はい!!」 音が途切れるのを待って、三人は櫓を脱出した。直後、笹田が三つ目の岩の迎撃を始めた。 13

2017-08-25 01:24:56
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「オトロシだって?やっぱりそうか」 前線司令室となった南の山小屋では、現場司令官の永友雷牙が本部の報告に眉を上げた。 「だろうとは思ったけどよ、確か、前に出たのは俺がガキの時に親父達が倒したんじゃなかったか?」 『だな。ありゃあ手強かった』 雷牙の父、雷蔵が述懐する。 14

2017-08-27 23:12:57
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『いえ、正確にはちょうど成人した年ですね。23年前よ』 本部オペレーターの相田紹子が補足する。 「そんなのほぼガキじゃねぇか」 オトロシは永友家のような討ち手の家系でも一生に一度出くわすかどうかという珍しいSランク妖怪である。 15

2017-08-27 23:26:01
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戦闘能力は極めて高く、今のように数キロ先から巨大な岩を投げて攻撃し、動くものがいなくなってから押し潰された死体を食らうという豪快かつ危険な戦法を取る。希少な為、出現を警戒されていないことも危険性を増す要因である。例えるなら、毎年来る台風と数十年に一度の大地震の違いだ。 16

2017-08-27 23:38:15
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『あいにく出現頻度が少ないので霊波パターンの記録がなく、同定は難しいのですが…』 「森の奥にいるせいで、どっち道霊波自体が観測出来ませんね」 オペレーター勢の中で唯一森に入っていた駆が、本部の舞園麻衣の言葉に続けた。彼は耐魔力が高く、戦闘も多少こなせる。 17

2017-08-27 23:44:09
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「ま、オトロシで間違いねぇだろうよ。あんな真似が出来る妖怪はそういねぇよ」 オトロシは体長数メートル程度の中型妖怪だが、彼ら以外で大岩を投げられそうなのは、十メートル前後の大型~数十メートル級の超大型妖怪くらいだ。多少距離があろうと、その気配や姿は隠しきれるものではない。 18

2017-08-27 23:49:32
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「それで、どうなんだあんちゃん」 雷牙は駆の肩に手を掛け、ノートパソコンを覗き込む。 彼は本部のバックアップを受けつつ、投げられた岩の軌道から、敵の位置の逆算を試みていたのだが…。 「ダメですね…瘴気の濃い北の空中で破壊したせいもあって軌道の記録自体が殆ど取れていません」 19

2017-08-27 23:55:51
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駆は今しがた撃たれた四発目までの大まかな弾道を地図上に表示させる。推定される射撃地点は森の奥の半径ニキロ圏内に絞り込まれていた。勿論、これではまだ広過ぎる。 「もっと絞り込めねぇのか?」 「敵が殆ど一箇所に止まっている前提でも、あと五・六発は迎撃しないと難しいです」 20

2017-08-28 00:01:31
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「そんなに撃たれてたまるかよ!」 「いや、それ以前に今から倒しに行って間に合うのかよ?」 雷牙と同年代の隊員が疑問を呈する。敵の居場所は一番近く見積もってもニキロは先だ。しかも道は除雪されていない。討伐隊が到着するまでの時間を二十分程としても、その間に砦が破壊されてしまう。 21

2017-08-28 00:17:59