丸山家物語＊第1話

まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

＊丸山家物語＊第1話 〜登場人物〜 パパ…丸山隆平＝職業アイドル。嫁、娘に万年デレ期の呑気な大黒柱。 ママ…しっかり者。言い方変えれば鬼嫁？でも優しい。 ナツ…5歳の息子。かなりしっかり者。父の相談相手。 ハル…3歳の娘。皆んなに愛される天性のアイドル気質。 pic.twitter.com/6iY0x8P2Sr

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1 あるところに、丸山隆平という男がいました。 彼はアイドル。 ですが、ある日、生涯共にしていきたいと思えるような女性と出会い、 彼は言った。 「け、結婚してください！」 彼女の返事は…もちろんYES。 2人は結ばれ、やがて2人の子どもが生まれた。 そして…

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2 --- 『パパー！早く起きてー！』 「ん…」 『仕事遅れるよ！今日ロケなんでしょ！？』 「…え？…えへへ…」 『寝ぼけてないでさっさと起きろ！！！』 「は、はいっ…！」 全くもう…。 パパはいつものほほーんとして、頼りになるのかならないのか。

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3 でも、 いつも私や子どもに笑顔を向けてくれる彼が、愛しくて仕方ないのです。 「…ママ、今日も可愛い♡」 『あ、ありがと…。』 寝癖をつけたままのパパが近づいてくる。 そっと目を閉じた時、 “ハルが見てるけど…いいの？” 新聞を手に持ちながら、ナツが言った。 pic.twitter.com/iYh3c1EGXA

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3 横を見ると、私達を見つめるハルの姿が。 《パパとママちゅーするの？》 『あ、いや…///』 「ええのええの♡パパとママはラブラブやから♡ ねーママ？」 『いや…早くご飯を食べましょう…。』 「えぇ〜（泣）」 こんな賑やかな丸山家です。 皆さん、よろしく。

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5 --- 《あっ、パパ！パパ！》 朝のニュースが、エンタメコーナーに切り替わると、ハルがTVに飛びついた。 そこには、パパの姿が。 「あ、この前のライブの密着かぁ〜！」 “ライブ、良かったんだって？ネットでも好評だったみたい。” 「お前は何歳やねん…」

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6 画面の中では、パパが大きなドームでキラキラの笑顔を振り撒いていた。 『…見に行けたら良かったんだけどねぇ。』 「ええよええよ、仕事忙しいやろし。」 ふと、ハルを見ると、TVに張り付いたまま動かない。 『ハル？どしたの？』 《……。》 “あ、ハルもしかして”

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7 “パパがコンサートしてるとこ見るの初めてじゃない？” …確かにそうだ。 TVのバラエティや、音楽番組は見せていたけど、パパのコンサートの様子をハルが見たのは、これが初めてかもしれない。 「おっ！なんやなんや〜♡ パパがカッコ良すぎて見惚れとるんやろ〜ハル。」

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8 パパがハルの背後に近づく。 ほんとに、ハルLOVEなんだから… 呆れ顔で私はその様子を見ていた。 「ハル〜♡？」 そう呼びかけられて振り向いたハルの顔は… とても膨れっ面で、怒っている。 なんで！？ 『ハル、どしたの？ なんで怒ってるの？』

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9 「えっ？何かした？俺… ハル？」 パパがハルを抱き締めようとした瞬間、 バッ！ 《ハル、ぱぱ…やっ！！！ …あっちいって！！》 その手を振り払ったのだ… 「！！」 どうしたの〜…急に。 “ハル、パパがかわいそうだよ？” 《やっ！！パパ！ やだ！！》

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10 足をドンドンと鳴らしながら、怒っている！ 娘よ…どうしたのですか？ 手を振り払われたパパは、ショックがデカすぎるのかその場から動かない。 『パパ…』 「ハル…パパ…いやって… 嫌われた…ハルに…」 あーあ。魂が抜けたような顔…。 ハル…？ --- つづく

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11 --- 「ハル…ハル…」 ロケに行かなければいけない彼の背中を押して玄関に向かう。 もう完全に、憔悴状態のパパ。 『はいはい。仕事頑張ってきて！ …理由は私が聞いておくからさ。』 「…… もう喋ってくれへんかったら？」 『家族なんだし、そんなのないない！』

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12 「…もう、パパのほっぺにチューしてくれへんのかな…。」 『一時的なものでしょ！』 「毎日恒例の“ハルとパパのいちゃいちゃタイム”は？ お仕事頑張ってのぎゅーは〜？（泣）」 『あーもう！ とりあえず、パパはファンを笑顔にさせる為に仕事頑張っきて！（面倒くさいな…）』

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13 明るい声で、パパの背中を叩いた。 「…いってきます。」 『はい！いってらっしゃい！』 …ガチャン。 はぁ…やっと行った。 TVの中の彼は、明るいキャラクターだけど、 一度何かあると、スーパーネガティヴになってしまうのです…。 『…さてと。』 ---

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14 ハルとナツと手を繋いで保育園へ向かう。 日差しが眩しい。 『今日も暑いねぇ！』 “そうだね。今日の最高気温は34℃らしいよ。” 『…へぇー。（ほんとに5歳児か？お前は） ハル。保育園でプール楽しみだねぇ！』 笑顔で話しかけてみる。 《……。》 だめか。

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15 腕時計を見ると、いつもの登園時間より少し早い。 『ねぇ… ちょっと寄り道しよっか！』 《…？》 --- 私達は近くの公園のベンチに座った。 《…ままぁ。ほいくえんいかないの？》 『行くよ！ ハルとお話してからね。』 “パパ、泣きそうだったね。”

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16 『ねぇ、ハル。 どうしてパパのこと嫌なんて言ったの？』 《……》 口を尖らせて俯くハル。 『お話出来たらでいいから、ママに聞かせてくれないかなぁ？』 しばらく黙った後、ゆっくりハルが口を開いた。 《だって… ぱぱは、ままとらぶらぶなんでしょ？》

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17 《ぱぱ、いろんなおんなのこにういんくとか、ばいばいしてた。 だから…や。》 そう言って、口を膨らませるハル。 『…。』 …なるほど、そういう事か。 “ハルは、初めてパパのコンサート見たから、びっくりしたんだね。” 『そうだねぇ…。』

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18 子どもにとっては、パパがママ以外の人と仲良くしていたら嫌…だよね。 パパのお仕事は、特殊だから、理解するのも難しいよね。 私は、ハルの手を握って言った。 『ハル、それが嫌だったんだね。 でも、思ってること伝えないでパパにあんな事言ったら、パパ泣いちゃうよ？』

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19 『今日帰ったら、パパにお話してみよっか！ ハルの気持ち。』 “僕もそれがいいと思うよ。 ハル、言えるよね？” 《……うん！》 やっと少し笑った。 パパ、今頃頑張ってるのかな。 ファンを笑顔にしてるのかな。 『よしっ！保育園行くよ！』 《いくー！》“うん！”

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20 --- その夜… 「ただいまぁ…」 足取りの重い様子でパパが帰ってきた。 『おかえり！ さぁ、…ハル。』 私の後ろに隠れていたハルが、ちょこちょこ出て言った。 《…ぱぱにおはなしがあります。》 「はいっ。…わかりました。」 部屋着に着替え、ソファに座る。

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21 --- 「ハル、おいで。 …っよいしょ。」 パパは、ハルを自分の膝に乗せた。 「パパにお話ってなに？」 ハルは、自分のパジャマの裾を掴んで、つたない言葉で思いを話し始める。 《ぱぱにききたいことがあります。》 「…ん？」 《ぱぱのすきなひとは、ままだけ？》

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22 「当たり前やんかぁ、そんなん。 でもなんで？」 《じゃあどうして、ほかのおんなのこにういんくしたり、ちゅってしたの？》 「あー…」 パパは、ハルの怒っていた理由を察して眉毛を下げた。 《…ハルはそれがやだった。》 「…そっかぁ。 それが嫌やったかぁ。」

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23 パパはしばらく考え込んだ後、ハルの頭を撫でながら言った。 「…パパの仕事はな、 色んな人を嬉しい気持ちにさせたり、笑わせたりする仕事やねん。 ハルは、 誰かから‘大好き’って言われると嬉しなるやろ？」 《んー…うん！うれしい！》

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24 「パパもな、 パパの事好きでいてくれる皆んなに大好きって言いたいねん。 でも、いっぱいの人がいて直接は言われへんから、 ああやって‘大好き’の気持ちをパパなりに届けてるんやで。 難しいかな…わかる？」 《……。》 「あ、えっと…んー…」